COSMマイク・モデリングにプリアンプ・モデリングも搭載した2chマイクプリ

ROLANDMMP-2

ROLANDから、VSシリーズで好評のCOSMテクノロジーによるマイク・モデリングを搭載した2chマイク・プリアンプ、MMP-2が新たに発表されました。本機は単体型ということで、VSユーザーでなくともDAW環境などに手軽に使えるのが利点ですが、最大の特徴はプロ・スタジオ用の高級マイク・プリアンプの特性をモデリングした9種類のプラグインによる音作りの多彩さでしょう。その辺りを中心にチェックしてみます。

VS-2480譲りの高性能ヘッド・アンプに
多彩なエフェクトを搭載


基本的なシステム構成は、XLR/フォーン兼用のマイク・インプットからプリアンプ・モデリング、EQ、コンプレッサーなどを経て出力するというもの。2chのイン/アウトそれぞれでアナログ/デジタルのどちらかを選べます。出力はアナログ、デジタル(AES/EBU、S/P DIF)のすべてのアウトプットから同じ信号が出力されます。デジタル・セクションはAD変換が24ビット、サンプリング・レートは44.1/48/88.2/96kHzに対応。専用のエディター・ソフトが付属され、USBケーブルでパソコン(Windows/Macintoshに対応)に接続することによって、さまざまなパラメーターをパソコン側からグラフィカルにエディットすることも可能です。マイク・インプット部はVS-2480で好評のヘッド・アンプ部の基本設計が移植され、+4dBu〜−64dBuまでの幅広い入力感度に対応。それぞれファンタム電源、フェイズ・スイッチを持ち個別に設定可能です。またローカットも20Hz〜2kHzまで可変。次にマイク・モデリング部ですが、同社のDR-20やAKG C3000Bをはじめとした6種類のマイクを入力のリファレンスに、出力はダイナミック・マイクからビンテージ・マイクまで7種類のキャラクターから選ぶことができます。またオンマイク時の距離によって起こる近接効果のコントロール(PROXIMITY EFFECT)、TIMEコントロールも含めて、セッティング時の距離感/位相等の微調整も行えます。EQセクションは4バンドのパラメトリックで、9種類のフィルター・タイプを持ち4バンドそれぞれで設定可能。ゲインは−15dB〜+15dB、Qは0.36〜16で自由な音作りをサポートします。コンプレッサー部はソリッド/真空管など4種類の特性から選択。スレッショルド、レシオ、アタック、リリースなどを細かくコントロールでき、さらにエキスパンダーやエンハンサー、ディエッサーも搭載するなど、かなり緻密な音作りが可能です。そして肝心のプラグインが9種類のプリアンプ・モデリング(表①)で、ここではウォーム、ブライト、ハーモニックといったさらなるエディットも行えます。

▲表① 9種類のプリアンプ・モデリング 

ビンテージのにおいを感じさせる
プリアンプ・モデリング部の音質


肝心の音質ですが、まずVS-2480譲りのマイクプリ部は、モデリング等をスルーした状態で聴いても価格を考えれば十分な実力を持っています。そして本機最大の売りであろうプリアンプ・モデリング部ですが、今回は手持ちのNEVE 1073と、それをモデリングしたと思われるN1073のプログラムを聴き比べてみました。マイクはTELEFUNKEN U47 TubeとSHURE SM57で、女性のトーク、ボーカル、ギター(ナイロン/スティール)、Pro Toolsに録音していた音源(ドラム、ピアノ、ストリングス等)を本機にデジタル接続してチェック。さすがにビンテージ機器は個体差もあり音の感じは完璧に同じではありませんでしたが、ビンテージ特有の“いい感じのにおい”がしました。“これがNEVEサウンドだ!”というよりは、ビンテージ・マイクプリのシミュレートとして結構使えるプログラムかなという印象です。電源投入時から安定した音質を維持できる点(真空管機材はウォームアップに時間がかかる)、楽器や歌い手ごとにセッティングをセーブできるなど、本機ならではの利点も多いと思います。他のプログラムはモデリング精度のチェックこそできませんでしたが、それぞれキャラクターが違うので、プログラム・チェンジだけで多彩なマイク/マイクプリ・サウンドを幾つも簡単に試せます。実際スタジオで歌い手/ミュージシャンを待たせてアナログ機器をつなぎ直すのは大変なものです。本機の場合は、選んだプリセットからエディットして状況に合った音作りを手軽に創造できる点が大切なポイントだと思います。ただし、残念なのはプリアンプ・モデリング使用時にEQが使えなくなってしまう点と、外部のクロックの入出力が無いので、複雑なデジタル接続時のセッティングには対応が難しい点ですかね。今回は96kHzでのチェックができませんでしたが(我が家のシステムでは24ビット/48kHzが最高スペック)、オリジナリティある多彩な音作りを考えると、かなり面白い機材だと思います。安直に高価なビンテージ機器/マイク・プリアンプの代わりではなく、より積極的なアプローチのアイテムとして考えてほしい機材です。
ROLAND
MMP-2
オープン・プライス
MMP-2AKG(MMP-2とAKG C3000Bのパッケージ)も同時発売(オープン・プライス)

SPECIFICATIONS

■周波数特性/96/88.2kHz:20Hz〜40kHz(+0.1/−3dB)、48/44.1kHz:20Hz〜20kHz(+0.1/−0.5dB)
■入力端子/【アナログ】XLR(バランス)/TRSフォーン(バランス)、【デジタル】S/P DIF(コアキシャル)
■出力端子/【アナログ】XLR(バランス)、【デジタル】AES/EBU、S/P DIF(コアキシャル)
■AD/24ビット、64倍オーバー・サンプリング
■DA/24ビット、128倍オーバー・サンプリング
■サンプリング・レート/96/88.2/48/44.1kHz
■パッチ/プリセット:43、ユーザー:64
■消費電力/9W
■外形寸法/250(W)×165(D)×76(H)mm
■質量/1.8kg