定位感や音量バランスに優れた小型/軽量のパワード・モニター

KRKV4

最近はたくさんの小型スピーカーが発売されており、どれを買ったら良いか悩んでいる人も多いと思います。筆者も、自宅で音量の制限がありながらも迫力は欲しいし……そしてミックスなどを行っていてあまり嘘をつかないスピーカーが欲しい……などと思いながら小型スピーカーを探していたところに、KRKからかわいい小型スピーカーが発売されました。さて、その実力は? 早速チェックしましょう。

小さいながらもバイアンプを内蔵
KRKらしい外観デザインも踏襲

まず、高さ20cm強というその小ささに驚きました。しかも、このサイズでLF/HFセパレートのバイアンプ内蔵とのこと。パッシブ・タイプのKRKスピーカーはアンプとの相性が時折問題になりますが、本機はアンプ内蔵なのでその点は心配ありません。アンプ部の出力はLFで30W、HFで15Wと数字では小さく感じるかもしれませんが、意外と十分な出力です。スピーカーはそれぞれ防磁型を採用しており、ブラウン管タイプのディスプレイの横に置いても安心な設計になっています。入力端子は3ピンXLRと1/4 TRSフォーン・ジャックの両方が使用可能なコンボ・タイプのコネクターを採用しているので、それぞれの環境に柔軟に対応できるでしょう。

しかし何と言ってもうれしいのはそのデザインです。KRKと言えばケブラーを使用した黄色系のスピーカー・ユニットが特徴ですが、それはこのV4にも採用されており、上位モデルをそのまま小さくしたようなかわいい作りで見た目も安っぽくありません。

小さいボディからは想像できない
スケール感のあるサウンド

その他の細かいスペック等は別項を参照していただくとして、実際の音をチェックしてみましょう。まずレコーディング・スタジオにてCDを聴いてみましたが、とてもこの大きさのスピーカーとは思えないほどのスケール感のあるサウンドが出てきました。サイズの割には中低域が良く出ていると思います。また、この手のサイズのスピーカーにありがちな、ちょっとEQ臭い作ったような音の感じも特に無かったのが印象的でした。左右の定位感も良く、逆相系のエフェクト効果を使ったミックスを聴いてみても、広がりや動きがちゃんと分かります。音量に関しても、小音量から大音量までバランスが崩れるようなことはほとんどありませんでした。YAMAHA NS-10Mと比べてみても、環境にも左右されると思いますが、ローの感じはV4の方が分かりやすかったのは意外でした。

まあ、スタジオは部屋自体が音響的に良くできているので、普通の部屋で聴けば評価も違ってくるのでは?と思っている人も多いでしょう。そこで、今度は普通のマンションの部屋で鳴らしてみました。印象としてはスタジオで聴いていたときと同じ、良い鳴りっぷりです。ただ、部屋によっては中低域の持ち上がりを多少感じました。気になる人は、V4の前面下部のバスレフ・ポートに、低域に有効な吸音材をちょっと挟むことによって解決できると思います。どのスピーカーでもそうですが、自宅にスピーカーを設置する場合、置き場所や部屋の鳴りによって多少のチューニングは当たり前と考えておくといいでしょう。

小音量でもバランスの良い音は
自宅でのミックスに有効

今回はCDのミックスと本機のチェックの時期が重なったので、何曲かミックスにも挑戦してみました。いずれもスタジオではなく、普通のマンションでのミックスです。大きいスピーカーだと、ある程度音量を上げないと本来の音は出ないのですが、本機は小音量でもバランスが良いので、設置場所にさえ気を配れば何のストレスもありませんでした。しかし、さすがにこのサイズなので、ハイエンドとローエンドはヘッドフォンを併用してミックスを行った方が良いかもしれません。

このときミックスしたものはそのままCDに収録されることになりましたので、このスピーカーの実力は分かっていただけると思います。同社のスピーカーは多少クセがあるので、NS-10Mなどが好きな人は中域の具合など最初は慣れないかもしれませんが、どのスピーカーにもクセはあるので、それに対する好き嫌いで選ぶのも良いでしょう。どの機材でもそうですが、機材のクセを見抜くのが使いこなしのコツだと思います。

何か褒めてばかりで読者の方は疑うかもしれませんが(笑)、スピーカーは好みによる差がはっきり分かれる機材の1つなので、とにかく店頭で音を聴いてみてください。そのとき必ずいつも自分が聴いているCDを持ち込むことをお忘れなく!! 慣れない音源で聴いてもチェックになりませんからね。筆者も今回いろいろな用途&場所で使用してみましたが、どの環境でも比較的使いやすい印象で、早速注文してしまいました(笑)。筆者以外にチェックに同席していた人も見積もりを出してもらっていましたので、それだけ気になるスピーカーであるというのは間違い無いみたいです。価格やサイズの割にはスケール感のある音を聴かせてくれる本機は、これからちょっと注目したいスピーカーですね。


KRK
V4
99,000円/ペア

SPECIFICATIONS

■形式/2ウェイ・バスレフ・パワード・モニター・システム
■スピーカー構成/4インチ防磁型ケブラー(LF)、1インチ防磁型チタニウム(HF)
■周波数特性:65Hz〜20kHz(±2dB)
■クロスオーバー周波数/1.8kHz
■外形寸法/152(W)×197(D)×235(H)mm
■重量/5kg