24ビットDSPを搭載した2chマルチエフェクト・プロセッサー

BEHRINGERDSP1024P

DSP1024Pは、空間系マルチエフェクターDSP1000からAD/DAコンバーターを24ビットに変更し、より高音質を狙ったモデルとなります。リバーブやディレイ、コーラスなどの空間系に加え、ピッチ・シフトやボコーダー、ボーカル用のディストーションなど、上質な32のエフェクト・アルゴリズムを搭載した多彩さなのに、驚くような価格。ご存じの通りBEHRINGER製品は操作性と耐久性が良く、長く使っていてもスイッチ類がしっかりとしていて、安いのに長持ちします。そのおかげか、今となっては使用経験者も多く、スタンダードなブランドになりました。ちなみに最新のWEB情報では同社は何とモーター・フェーダー付き32chデジタル・コンソールまで発売するようです! モデリング・ギター・アンプも作ったりと最新技術の研究にも余念の無い、勢いのある同社のこれからを予測する製品として、本機をチェックしていきたいと思います。

アナログ機器のような
自然な印象のサウンド

基本的な仕様として、本機はリバーブをモノ・イン/ステレオ・アウトで使用する場合は、DSPエンジンをぜいたくに2つ使えます。あるいは、2種類のエフェクトが同時に欲しければ、2つのエンジンをセパレートして、モノラルで別々のエフェクトをかけることもできます。そのほかにも、ステレオのままシリアル接続でフランジャーの後ろにリバーブがかかるようなアルゴリズムも用意されているため、いろいろ楽しめそうです。また、無料のWindows用エディターがwww.behringer.comからダウンロードできるのもうれしいところ。

音を聴いた最初の印象ですが、低音域はすっきりとして、ソフトで歪み感の少ない定番の“BEHRINGERサウンド”でした。しかしこのDSP1024Pは、それに加えて温かな印象があります。AD/DAコンバーターの特性でしょうか? デジタル・プロセッサー・シリーズとしては意外にも、アナログ機材のような自然な印象さえ受けました。

では、各エフェクトのチェックをしていきます。純粋なリバーブは、教会、プレート、小ホールなど11種類のアルゴリズムがあります。何だか他の機材では聴いたことの無い、なかなかウォームで滑らかなリバーブです。“ウェーブ・アダプティブVIRTUAL ROOM”というアルゴリズムを使っているそうで、同社独自の方式のようです。実際に使ってみると、とても自然にトラックになじみます。YAMAHAのSPX900のような横方向への広がり感はあまりありませんが、ふんわり感は圧倒的にBEHRINGERの勝ちですね。こうなると、モジュレーション系にも期待が高まります。

フランジャーといえば筆者はEVENTIDEのDSP4000が大好きなのですが、本機のフランジャーも負けずに個性的で、気持ち良いです。ジェット系の音は得意ではないかもしれませんが、とても良い自然な効果を出してくれました。

ほかにも、ディレイやコーラス、ロータリー・スピーカー・シミュレーター、ピッチ・チェンジ、ボーカル・ディストーション、ボコーダーなども用意されていて、なかなか多彩ですね。

操作性の良さは
信じられないくらい

さて、オーディオI/Oについても見てみましょう。イン/アウト両方にXLR端子とTRSフォーン端子が装備され、さらに+4dBuと−10dBVの切り替えスイッチであらゆる機材のレベルに対応できるため、困ることは無いでしょう。ミックス・モードも2種類あり、楽器から直接つないでドライ音を混ぜて使うミックス・インターナル・モードと、ミキサーのセンド・ループにつなぐミックス・エクスターナル・モードがあり、いろんな場面で使えそうです。

しかし、この製品、操作の簡単なことと言ったら信じられないくらいです。すべての設定は、ボタンを押してページをめくって設定を変えるのですが、説明書を見ないで前記の項目を変えられました。基本的なことなのに、つい見逃されがちな操作性ですが、さすがドイツの一流企業、素晴らしい。

エフェクトのパラメーターも同様で、フロント・パネルのVARIATIONボタンを押せば、リバーブ・タイムやディレイの大まかなプリセット・タイムを設定するページに入り、EDIT Aボタンを押せばプリディレイやディレイの細かいタイムの設定、EDIT Bボタンを押せば初期反射やフィードバックなどの各種設定、EQボタンを押せばHi& LowのEQと、本当にうまく分類されていて分かりやすくなっています。

非常に低い価格設定でも品質を下げずに、良い音に挑戦するBEHRINGERにはかたくなな職人魂を感じます。“安いから仕方ありません”なんて言ってるようじゃ、歴史になど残ることはもちろん、話題にさえも上がらないわけです。こんな確信を持って機材を開発するBEHRINGERの最新製品、ぜひ一度お店で試してください。

▲リア部。左からOUT、THRU、INのMIDI I/Oと、XLR/フォーンの両端子が備えられたオーディオI/Oが2系統並ぶ。また、オーディオI/O部には+4dB/−10dBの切り替えスイッチも用意されている


BEHRINGER
DSP1024P
18,900円

SPECIFICATIONS

■周波数特性/20Hz〜20kHz(+/−3dB)
■SN比/>94dB、unweighted(20Hz〜20kHz)
■全高調波歪率/0.0075%typ.@+4dBu、1kHz、ゲイン1
■クロストーク/<−76dB
■AD部/24ビット64倍オーバー・サンプリング
■DA部/24ビット128倍オーバー・サンプリング
■サンプリング周波数/46.875kHz
■入力インピーダンス/60kΩ(バランス)、30kΩ(アンバランス)
■基準入力レベル/−10dBV〜+4dBu(調整可能)
■最大入力レベル/+16dBu(基準レベル+4dBu)、+2dBv(基準レベル−10dBv)
■出力インピーダンス/60Ω(バランス)、30Ω(アンバランス)
■最大出力レベル/+16dBu(基準レベル+4dBu)、+2dBv(基準レベル−10dBv)
■外形寸法/482.6(W)×44.5(H)×190.5(D)mm
■重量/約2kg