往年のビンテージ・エフェクターをモデリングした1Uラック・エコー・マシン

LINE6Echo Pro

ギタリストにはとっても便利でもう既に手放せないと言った感のあるLINE6 Podだが、われわれエンジニアが最も重宝していたのがLINE6 DL4 (緑色のにくいヤツ)だった。こいつのおかげで今まで何台ものテープ・エコー・マシンを運んでいた手間が省けるほどその内容は素晴らしくて、現在も頻繁に使用しているのだ。本家PodにゾクゾクとProバージョンが出ている中、ついにこの緑君もラック版のProバージョンが登場。早速つないでチェックしてみよう!

視認性/操作性に優れた
インターフェースの魅力

箱から出してみた第一印象は“何かあまりパッとしないなぁ!”だったのだが、電源を入れると突然派手!になってワクワクする。で、結線してみると、リア・パネルのレイアウトは至ってシンプル。インプット/アウトプット共にバランス/アンバランスを備えているのだが、アンバランスのLチャンネル側のみステレオ・フォーン・プラグが対応しておりPod Pro等のエフェクト・センドの間に挟むことも可能になっている。それ以外にはMIDIのIN/OUTとペダル用のジャックがあるだけだ。ケーブルもつないだし電源も入れたし、説明書は床に投げ捨てて早速音を出してみよう。

海外の製品に共通していることだが、Echo Proも操作が簡単。左側のインプットつまみを上げソースの入力レベルを適当に決めてやる。それからアウトプットのボリュームはもちろんフル! その右側にあるSELECTつまみをいじれば当然プログラムが変わるんだろうなぁと分かる。いじると期待通りに変わる(笑)。やっぱりある程度プリセットされている方が楽だよね。その右側にはMODEL SELECTノブがある。このノブの周りにはこのマシンでシミュレートされている幾つものモデル・タイプ名とLEDが並んでいて、プログラムにより現在どのモデリングで音が鳴っているかが一目で分かるようになっている。これは便利だよね。もちろんこのノブを回すだけでモデル変更が可能なのだ。とにかくプログラムをどんどん変えていくと、右側の方でもLEDの点く場所が変わっている。DL4にもあったTWEAKとTWEEZつまみだ。この2つのつまみで簡単なエディットができる。そしてDL4同様、モデリングが変わるとそのつまみの持つ意味が変わるのだ。あるときにはEQに、あるときにはモジュレーションの深さと速さを調整するものになったり……などなどDL4ではそれが一目で分からなかったところが難点だったのだが、Echo Proではそれぞれのつまみの横にその機能が書いてあってそこにLEDが点灯するようになっている。これはとにかく便利!

感覚的にディレイ・タイムが
得られる3種類のボタン

真ん中にデン!と構えるのが、ディレイなら当たり前のタイム表示用のLEDだ。その下には何やら怪しい3つのボタン! 一番左にあるSECONDSボタンは、それを押せば表示が秒数に変化する。一般的なデジタル・ディレイの表示だよね。で、右側のBPMと書いてあるボタンを押すとBPM表示になるわけだ。そして横にある大きなTIMEと書かれたつまみを回せばその数値が変わる。そりゃそうだよねー、と、そこでそのつまみの右側にあるTAPというボタンが目に入る。はぁはーん! そういうことですか、ってことでソースに合わせてテンポ良くボタンをたたくと瞬時にその曲のBPMが表示されるのだ! DJ機器からのフィードバックがこんなところにも生かされている。ということは真ん中のNOTEボタンの意味もおのずと分かるというもの。案の定そのボタンを押せばタイム表示下の音符が順番に変わっていく。BPMを決めてNOTEを決めれば瞬時に求めているディレイ・タイムが得られるのだ。それも感覚的にね。

Echo Proは何がすごいのか? まだ、LINE6のDL4を知らない君のためにそれを語らなければならないよね。その昔デジタル・ディレイができる前、ディレイはエコーと呼ばれ、アナログ・テープを使ったマシンによって作られる効果だった。MAESTROやROLAND、BINSON、ELECTRO-HARMONIXといった各国のメーカーが有名なところ。今でもそのような機材はプロがスタジオで使用していたりするのだが、やはりコンディションが良くなかったりして本来の効果の100%を発揮できる物は少なくなっているのが現状である。おまけに中古市場でそれらを手に入れようとするとそこそこ驚く金額になってしまっている。そんなときに出てきたのがDL4で、上記の名機たちがものの見事に再現されているのだ。テープ・エコー特有の曇ったようなざらざらしたような、何とも表現しにくいのだが、そういった質感が再現されている。特にテープ・エコー独特のフィードバック・ループのサウンドは、マシンの蓋をこじ開けて中でテープが回っているのでは?と確かめたくなるほど(笑)。それをそのまま継承し、さらに使いやすく改良されたのがLINE6 Echo Proなのだ! ラックにマウントされたことで、こいつはスタジオ・ユースを前提に考えられていることがよく分かる。プリセットの数も多過ぎることなく、そしてそのエディットの操作性や幅広さがさらに進化! これ以上何も求めるものは無いよね!

とにかくこの内容で、この機能が手に入るのだからお得としか言いようがないでしょう? LINE6と言うとどうしてもギタリストやベーシスト向けというイメージが強いと思うけど、こんなに面白くて性能の良い物を使わない手は無いですよね。一度音を聴いてみたら虜になるに違いありません。

最後に忘れてならないのは、このマシンは当然のことながらハイクオリティなデジタル・ディレイであるということ。MIDIを通してほとんどのパラメーターを瞬時にコントロールすることも可能なのです。つまり、往年の名器を忠実に再現しながら、細かい調整をすればお気に入りのサウンドを作り出すことができる。なおかつ、ノイズが乗るとか動かなくなったなどという面倒な心配事からも解放してくれるのです。ここまで読めば賢明な読者の皆さんはもうお分かりでしょう? テープ・エコーの効果が欲しいなら、高いお金を出して中古のテープ・エコーを買うよりもこのEcho Proを買うべきですね。それだけの効果が期待できる製品です! あえて多機能にこだわることよりも操作性を充実させたことが称賛に値しますね。

▲リア部。左からMIDI IN、OUT、インプット(XLR、フォーン)、アウトプット(XLR、フォーン)などの端子が並ぶ


LINE6
Echo Pro
99,800円

SPECIFICATIONS

■AD/DA変換/24ビット
■サンプリング周波数/46.8kHz
■外形寸法/482(W)×153(D)×43(H)mm
■重量/1.92kg