電池駆動可能でモバイル性に富む高音質コンパクト・ミキサー

BEHRINGEREurorack MXB1002

意欲的な新製品を次々に発表しているBEHRINGERから、また新たなアナログ・ミキサーEurorack MXB1002が登場した。本機は小型で、9Vの乾電池3個で駆動できるのが最大の特徴だ。このほかにもさまざまな工夫が凝らされた、なかなか面白い製品になっている。早速その詳細をレポートしてみよう。

考え抜かれた省スペース設計により
フェーダーやツマミの操作性も十分

B5サイズで高さ7㎝、重量2.5kgとかなりコンパクト(電源アダプター別)で、9Vのアルカリ電池3個で約4時間の連続運転ができる。これまでにも、電池駆動のミキサーはあったが、音質・機能の点で見劣りするものがほとんどだったので、Eurorack MXB1002(以下1002と略)には期待が高まるところだ。

まず、フロント・パネルを見ると、上部にイン/アウトの端子がまとまり、下部にツマミやフェーダー類がまとめられている。

マイク入力はXLRタイプで5つ用意され、レベル・メーターの横のスイッチでまとめてファンタム電源がかけられる(コンデンサー・マイク用)。ch1/2はモノラル仕様で、ライン入力端子(フォーン)も用意されている。この2つの入力は意外なことに併用できる。ただし、両方入力した場合、マイク入力の信号レベルは変わらないが、ライン入力の方はレベルが半分くらいになる。ゲイン・コントロールは共用なので、注意が必要だ。また、ステレオ・フォーンのインサート端子もあり、各チャンネルに外部エフェクターなどを接続できる。

ch3/4、5/6、7/8はステレオ仕様で、フォーンのL/Rの入力ができる。モノラルで使いたい場合はLに入力する。また、これらのチャンネルにもch1、2と同様にXLRのマイク入力(モノラル)がある。ゲイン・コントロールはラインとマイクで別々に用意され、互いに影響することは無い。ただし、パンとフェーダーは共用だ。

ch9/10はステレオで、フォーンとRCAピンの端子があり、どちらかを使うことが推奨されているが、試してみるとこれも共用できた(ただし、ゲインは共用でレベルは互いに影響する)。

ということで、1002は公称10INながら、各端子を併用すれば17INにすることも可能だ。

出力は、フォーンのメイン・アウト(L/R)とRCAピンのテープ・アウト(L/R)が同系統で、ヘッドフォン出力には専用の音量ツマミがある。このほかに、モノラルでモニターとFXのセンドがある。この2つは独立しているので、ステレオ1系統のセンドとすることも可能だ。

各チャンネルを見ると、フェーダーとツマミが隣り合って配置されているのが新鮮だ。省スペース設計だが、高さに差があり、幅の余裕もあるのでフェーダーやツマミの操作はやりやすい。

EQは、HIが10kHz、MIDが700Hz、LOWが50Hz固定である。インジケーターは各chにクリップ(電池駆動時は点灯しない)と、メイン出力用が5段階のレベル・メーターとなっている。

Eurorackシリーズが誇る
超ローノイズ・プリアンプ

では、実際に1002を使ってみる。まず、ダイナミック・マイクをch1に接続した。ノイズを確認するためにかなりゲインを上げてみたのだが、全く静かなのに驚く。ヘッドフォン出力で確認すると、逆に環境ノイズが目立つばかりだ。“ウルトラ・ローノイズのマイク・プリアンプ”とうたわれているだけあって、1002のマイク・プリアンプはとても優秀だ。ch3/4以降のマイクプリも、カタログ・データ上は少し数字が劣るのだが、実際に使ってみると全く問題無かった。また、ヘッドフォン出力のノイズが目立たないのも、低価格のミキサーでは手を抜きがちな部分だけに好感が持てるところだ。

さて、注意が必要なのは、コンデンサー・マイクを使う際、1002のファンタム電源の電圧が+18V(電池駆動時。電源アダプター使用時は+23V)だということ。通常、ミキサーから供給するファンタムは+48Vのことが多い。RODEのNT3などは+18Vでも問題無く作動するが、マイクによって仕様が違うので、1002の購入を考える人は、手持ちのコンデンサー・マイクのマニュアルで確認するといいだろう。

なお、1002を3個の電池で駆動する場合、2つがミキサー用で、1つがファンタム電源用だ。ファンタム電源を使わない場合は、電池2つで駆動できる。

ALPS社製のフェーダーは60mmのストロークがあり、操作は快適だ。ツマミ類はステレオとモノで若干重さに差があるが、いずれもセンター・クリックがあって使いやすい。

EQは周波数、Qが固定されたシンプルなものだが±15dBでよく効く。各チャンネル、さまざまなアウトの音質も安定した太めの音色で、1世代前の同社の製品からかなりの進歩が見られる。

出力は系統数で言えばメイン(L/R)+モニター+FXの4系統。チャンネルごとのミュート/ソロなどのスイッチは無いが、コンパクト・ミキサーとしては十分な機能を持っている。

1002は機能とサイズがマッチしており、音質も確かだ。価格も大変手ごろなので、いろいろな場面で重宝するコンパクト・ミキサーと言える。特にマイクプリの部分が優秀なので、それ専用にしてもお買い得だろう。


BEHRINGER
Eurorack MXB1002
17,900円

SPECIFICATIONS

■周波数帯域/10Hz〜200kHz(マイク入力)、10Hz〜130kHz(ライン入力)、10Hz〜70kHz(ステレオ)
■ファンタム・パワー/+18V(バッテリー)/+23V(AC)
■EQ/HI:10kHz(±15dB)、MID:700Hz(±15dB)、LOW:50Hz(±15dB)
■電源/ACアダプター、9V乾電池×2(ファンタム電源使用時は×3)
■外形寸法/298(W)×216(D)×40/73(H)mm
■重量/2.5kg(電源アダプター除く)