最高8Pole、48dB/octを備えた即戦力アナログ・フィルター

AKAI PROFESSIONALMFC42

20世紀最後の10年、1990年代は編集の時代であったとともに、なんとツマミの時代でもありましたね。パネルの深ーい階層に潜り込んでエディットしていく作業の反動かのように、よりダイレクトによりエキサイティングにと、ツマミを演奏するという行為がクローズアップされました。そしてその多くが握っていたツマミこそがフリケンシーとレゾナンス。そう、フィルターの2大要素だったのは言うまでもありません。

そして新世紀をまたいで今、ついに日本初とも言える本格的なフィルター機が登場しました。しかもフィルターとは切り離しては考えられない機器、サンプラーの老舗AKAI PROFESSIONALからです。これは見過ごせないでしょうと、早速チェックしてみました。さて新世紀のフィルターとはいかなるものに。

4基の2Poleフィルターによる
切れの良いアナログ・サウンド


本機は2Uのラック・マウントも可能なサイズで、背面にモノとステレオの独立したフォーン・インプットとダイレクトにターンテーブルも入力可能(アース付)なRCAピンのライン/フォノの切り替えインプット、ステレオ・ペアのフォーンとRCAピンのアウトプットを備え、MIDIのIN/OUT/THRU端子も装備しています。ラック・マウントすると垂直に、単体で置くと斜めに座ってくれ、スタジオからDJブースまでを見据えたデザインです。前面でまず目を引くのが、いかにも回してくれと言わんばかりのカットオフ・ツマミ。なかなかの握り心地になってました。


しかし本機の最大の特徴は、その超怒級の最高8Pole(4基の2Poleフィルターの組み合わせにより実現)まで可能なフィルターの、切れの良い(48dB/oct)アナログ・サウンドでした。アナログもどきではなくしっかりとしたアナログ(現存するあらゆるものを試聴し、ANALOG DEVICES社のものを選択とのこと)ならではの心地よい切れ味で瞬時に、並大抵のモニターの可聴範囲を超えた切れ味を見せます(聴こえなくなっちゃうってことね)。ローパス/ハイパス、またバンドパスやノッチを2つのレバー・スイッチで瞬時に切り替えられ、レゾナンスはこれまた、慌ててモニターのレベルを下げなくてはいけないほどの強烈な発振をしてくれます。素晴らしいのがそのサウンドで、例えハイパス時の発振すれすれであっても、イタくないのですよ。実に音楽的というか、これ、フィルターが今どういった用途で使われてるかを分かった人が作ったなというのが実感できます。


さらにウマイっと思ったのが、その後段にあるエフェクターの存在です。スピード/デプス・ツマミ付きのフェイザー、デプス付きディストーション、センター・クリック付きのハイ/ローのEQ。今までのフィルター機器に何で無かったかと思ったほど便利です。前述のようなハイパス時でEQのハイをややカット、ディストーションを1時ぐらいに回してカットオフ/レゾナンスをグリグリやると、もうソースなんて何でも構いません。見事に音楽的なツボを押さえた音響系的ノイズがうごめき出します!


リズムに合わせてフィルタリング可能な
Groove Modulator機能


えーと、興奮ばかりしていても読者が引いていくばかりとも思い直し、さらに説明を続けることにします。


本機は、ステレオ入力とモノラル入力を独立して装備しており、それぞれを別々にコントロールすることができます。例えばステレオに入力したパッドに緩やかなフィルターを施し、モノに入力したビーツにはバキバキのフィルター・プレイを施すなどといった従来の2台分の働きもしてくれます。


それぞれに独立したインプット・レベルに加え、モノにはパン、トータルのアウトプットや独立したレベル付きのヘッドフォン端子も装備されています。


さらに特徴として、さまざまな手法で周期的にフィルターを変化させ続けるGroove Modulatorという機能があります。その変化のスピードをただレート・ツマミで決めるだけでなく、タップや前述のMIDI INから受けるMIDIクロックにシンクすることができるのです。タップも前面のボタンを2回テンポに合わせて押せばOKで、微調節も+/−ボタンで行えます。うれしいのがそのBPMの16分/8分/4分やその3連符等のサイクルも簡単に選択できるところです。こうして設定したスピードで、4種類のウェーブから選択したLFOやADSRが設定できるエンベロープで、カットオフ/レゾナンスまたはその両方をデプス・ツマミで設定した値だけ変化させ続けられます。デプスは+方向だけでなく−方向にもありますのでグヮングヮンもヮングヮング(?)もいけます。


その他にもトリガー・ボタンを押したタイミングでエンベロープをトリガー/コントロールするManual Trigger機能、左右のLFOをずらすL-R Phase機能、モノ/ステレオ・チャンネルのLink機能、それぞれのカットオフを反転させるInvert機能と盛りだくさんです。またツマミ演奏すべてをMIDIデータとしてシーケンスに記録できるので再現/編集も可能ですし、センド・シーン機能では個別の設定もMIDI出力できます。


これだけのすべての階層を前面に出し、リアルタイムにいじり倒してくださいと言わんばかりの本機。ちょっと興奮しました、ホント。


あ、しまった、同社のMPC2000(XL)に直接マウントもできるそうです。



AKAI PROFESSIONAL
MFC42
54,800円

SPECIFICATIONS

■フィルター/ローパス、ハイパス、バンドパス、ノッチ
■エフェクター/フェイズ・シフター、ディストーション
■ディスプレイ/7セグメントLED×3
■入力端子/フォーン×1(モノラル)、フォーン×2(ステレオ)、ライン/フォノ(RCAピン×2)
■出力端子/フォーン×2、ライン(RCAピン×2)
■MIDI端子/IN、OUT、THRU
■外形寸法/482.6(W)×136.2(D)×88.1(H)mm
■重量/2.8kg