プライベート・スタジオのリファレンス・モニターに最適なMSPシリーズの最小型モデル

YAMAHAは世界的にもリファレンスとして認知されているNS-10M Studioをはじめとして、精力的にスモール・モニターを開発し続けている。ここ最近ではMSPシリーズとして、MSP5/10/10Mなどのパワード・モニターのラインアップを充実させている。このシリーズの最新製品の中から最も小型なMSP3をレポートしてみよう。

ウェーブ・ガイド・ホーン方式の採用など
リスニング・ポイントの変化に柔軟に対応


 外観を見て最初に感じるのはそのコンパクトさで、ワンルームの狭い部屋でもスペースを必要としない小さなサイズだ。重量も4.4kgとパワード・モニターとしては非常に軽い方だと言えよう。


 スピーカーは10cmのウーファーと2.2cmのツイーターで構成されている。基本的には他のMSPシリーズで採用されているスピーカーと同等な仕様のもので、サイズだけをMSP3用に小さくしたものだという。ツィーターにはウェーブ・ガイド・ホーンという独特の形状をしたものが採用されていて、これによってリスニング・ポイントが多少変わっても一定のサウンドを維持できるようになっている。ユニット自体も最先端の磁気回路技術を使用して歪みの発生を極力抑えている。このような工夫で、総合的に現代のハイビット/ハイサンプリングのサウンドにも対応できるサウンドに仕上げたという。


 エンクロージャーはバスレフ・タイプだ。防磁設計になっており、パソコンのCRTなどのそばにも置けたり設置場所を選ばない。オプションで天井吊りやマイク・スタンドへの設置も可能になる。


 パワー・アンプにはスピーカーの特性に合わせてチューニングされた20Wの出力のものが搭載されている。上位機種はバイアンプ方式を採用しているが、MSP3ではパッシブ・ネットワーク方式を採用。モニター・スピーカーとしてはバイアンプ方式が理想だが、このクラスのスピーカーではコストやサイズ、重量などを考えるとむしろパッシブ・ネットワークの方が正しい選択だろう。


 入力はラインが2系統で、LINE1はRCAのアンバランスで入力レベルが−10dBとなっている。LINE2はバランス対応のXLRおよびフォーンが使用でき、入力レベルも+4dBなのでさまざまなソースをそのまま接続することができる。それぞれの入力には独立したレベル調整ボリュームがあってミックスすることも可能。さらに、補正用のイコライザーが付属し、ロー、ハイともにシェルビングで±3dB調整できる。リスニング・オーディオ用とは違って微調整用に設計されているので、設置場所によって生じるクセの補正などに便利そうな機能だ。コントロール類がすべてフロントに設置されているのもプライベート・スタジオ向きであると言えよう。


ナチュラルでフラットな
周波数特性


 次に、実際にMSP3の音質についてなるべく客観的に感想を述べてみることにしよう。リファレンスとしては同じくYAMAHAのNS-10M Studioをモニター用のパワー・アンプでドライブしたものを使用した。ソースもCDやDTM音源、DAWからの出力など、プライベート・スタジオでよくある環境を選択した。


 概して言えるのはNS-10Mと比較して非常に似た傾向のサウンドであるということ。これは同じメーカーの同じモニター用というジャンルのスピーカーだから当然と言えば当然だろう。非常にナチュラルで周波数特性もフラットだという印象のサウンドだ。リファレンスとしては十分実用になるサウンドだろう。ただ、設置条件にもよるところが大きいのだろうが、中低音部に幾分膨らみがあるように感じられた。これは付属のイコライザーである程度調整することができた。±3dBのEQというのはこういうときになかなか便利だ。


 高域はなかなかスピード感のあるサウンドで、エイジングしていない状態なので何とも言えないが結構前に出てくる感じである。ウェーブ・ガイド・ホーンのおかげか確かに安定したサウンドでモニターすることができた。分解能も高いと言えるだろう。20Wのアンプとスピーカー・ユニットから出せる音圧は最大で98dB(1m)となっていてちょっと心細い感じもするが、実際に使ってみた感じ、かなりの音量でも歪みは少なく、よほど大音量でモニターするのが好みの人でなければ十分実用的な音量が出せると言えよう。


 CDでポップスを聴いた感じでは、重低音までのモニターはさすがに難しいが口径の割には低音も量感が感じられる。ボーカルは結構前に出てくるように感じられることがあった。DTM音源のデモも特に問題なくモニターすることができる。DTM音源はサンプリング周波数があまり高くないのでハイは余裕でカバーできている感じだ。


 総合的に見てプライベート・スタジオではモニターとして十分使用できるだろう。特に設置スペースに悩んでいる場合には良いソリューションだと言える。サイズ的にはちょうどミニコンポ用のものに近いので、最も聴かれる機会が多いであろうラジカセやミニコンポに最適化されたサウンド作りが可能だと言える。コスト・パフォーマンス的には申し分無いだろう。


YAMAHA
MSP3
18,000円(1本)

SPECIFICATIONS

■最大出力レベル/+98dB(地上1m)
■定格最大出力/20W@1kHz
■クロスオーバー周波数/4kHz
■S/N/≧95dB
■周波数特性/65Hz〜22kHz
■外形寸法/144(W)×167(D)×236(H)mm
■重量/4.4kg