シーケンサ−/音源を搭載し機動性に優れたコマンド・ステーション

E-MUXL-7/MP-7

名機Orbitなどをはじめ、ダンス・トラックの制作において信頼の厚いE-MUが、満を持して16トラック・グルーブ・シーケンサー内蔵の単体機種2つを発表した。音楽制作におけるあらゆる操作を統合するコマンド・ステーションと銘打たれたこのXL-7/MP-7に、どのような可能性が秘められているのか探ってみよう。

リアルタイムのミキシングを可能にする
操作性に優れたインターフェース


まずはインターフェースについて。パネル左側には、16個のリアルタイム・コントローラー・ノブがついている。これは上部スイッチの切り替えで瞬時に機能が変わり、フィルター、アンプ、LFO、モジュレーション、アルペジエイターなどの制御、MIDIコントロール・アサインのほか、シーケンス・トラックのボリューム、パンまでもがコントロールでき、16トラック分のミキシングが視覚的に、リアルタイムにできるのは非常に使いやすい。


パネル右側に同じく16個用意されているボタンも、コントローラー・ノブと同様、機能を切り替えることができるようになっている。トリガー・モードでは、16個のボタンにベロシティ、MIDIチャンネル、ノートをアサインし、キーボードのように使うことが可能。エディット・モードのときにはショートカット・キーとして機能する。


さらに便利なのがトラックEnable/Muteモード。ボタンのLEDが点灯していればEnable、消灯ならMute、というシンプルな機能なのだが、この機能を使いやすくするためか、プリセットのシーケンス・パターンは、1がKick1、2がSnare1、9がMainBass、10がMainLead、16がFill-Inなどのような16トラックの割り当てルールに従って作られており、トラック抜き差しのダンス系の曲作りの楽しみが簡単に味わえる。隣接したトラックをまとめて一気にミュートしたいときなどは、指を置いて横にぱぱぱーっとスライド押しをしてもバッチリ反応する。総体的にボタンの作りは非常に秀逸だ。また、曲作りにもライブのときにも重宝しそうなのがパネル中央のLED。これもまた機能の切り替えがツボを押さえている。テンポ、パターン番号、小節/拍、トラック/チャンネルの表示と、編集モードへの移行がここに集約されていて、非常に明快だ。


シーケンサーは最大32小節のパターンを組み合わせて、ソング・モードで主に構成を作る方式。パターンのプリセットは512個、ユーザー定義512個、ソングは512まで登録でき、シーケンス/ソング・データをコンピューター(Macintosh/Windows)にバックアップ/リストアする"E-Loaderソフトウェア"も付属している。


パターンのレコーディングには、リアルタイム、グリッド、ステップ入力と3種類の方法が用意されている。インプット・クオンタイズももちろん装備。フレーズに関しては、アルペジエイターで作ってしまう、という手もある。アルペジオ・パターンを作って登録し、瞬時に別の音にアサインすることにより、迅速でフレキシブルな曲作りができるだろう。また、パターンは常に設定した小節数でループするようになっていて、レコーディング中にも演奏を一切ストップすることなく、今録音したトラックを聴きながらすぐに別のトラック/プリセットを選択して、そのままレコーディングを進めることもできる。こうして1個1個のパターンのグルーブを詰めて、ソング・モードではリアルタイム・コントローラー・ノブで味付け、変化を付けていくというのが王道の使い方かと思う。


3基の拡張スロットを装備し
カスタムROMの増設が可能


次に内蔵音源を見てみよう。XL-7/MP-7にはProteus2000から引き継がれたE-MUお得意のシンセシス・エンジンが搭載され、型番からも分かるようにXL-7はXtreme Lead-1、MP-7はMo'Phattの32MBの音源を搭載している。詳しい内容に関してはここでの解説は省くが、音の感触はE-MU以外の何者でもない存在感を放つ極太サウンドだ。またProteusシリーズと同様にサウンドを増設するための拡張スロットが3基あり、オプションのサウンドROM、E4 Ultraサンプラー・シリーズで作成したカスタムROMを増設することが可能となっているので、自分のお気に入りの音色をさらに加えることも可能だ。


以上、駆け足でXL-7/MP-7の機能について紹介したところで、個人的な感想を書いておこう。前述のようにシーケンサー部分は速攻性が高いが、ソフトウェア・シーケンサーほどの細かいエディットができるわけではない(今後のバージョン・アップに期待)。また音源部分も非常に良いけど、既にXtreme Lead-1やMo'Phattという単体機で発売されているので目新しさという点では今ひとつだ。


そんな中で、僕がXL-7/MP-7で最も気に入った点はボディのごっつい感じと、冒頭に書いたコントローラー群の豊富さだ。XL-7/MP-7は僕の中では"シーケンサーと音源が搭載されたLaunch Pad"という感じだ。本体背面パネルにはMIDI OUT端子が2つ付いていたりして、E-MUがこの機種をコントロール・センターとして使ってね、と思っているのがよく分かる。例えば一方にサンプラー、もう一方に気に入った楽器をつなげば、シンプルながらも、コンピューターを中心とした音楽制作システムにとらわれることなく、機動性に優れた音楽制作環境が完成してしまう。


E-MUのノウハウの詰まったこの独特の音源を直感的にいじれるのだけでも十分面白いのだが、16のコントローラー・ノブと、コマンド・ファンクションの16キーを使って外部音源を機敏に快適に制御できるという状況も、相当に使えそうだ。


E-MU
XL-7/MP-7
各210,000円

SPECIFICATIONS

XL-7/MP-7共通仕様
■MIDIチャンネル数/16(内部)/32(外部)
■最大ソング数/パターン数/128/256
■接続端子/アナログ・アウト×6(L、R)、デジタル・アウト(S/P DIF、コアキシャル)、MIDI IN×2、MIDI OUT×2、MIDI THRU
■最大同時発音数/128
■重量/4.8kg
■外形寸法/133(H)×266(D)×510(W)mm