多彩な波形編集機能を搭載したグルーブ・サンプラーの最新モデル

BOSSSP-505

いやもう最近の楽器売り場は大変なことになっちゃってます。音楽用コンピューター・ソフトとはまた違った"単体ハードならではの特異な進化っぷり"と申しますか。シーケンサーに音源やエフェクターが搭載されてワークステーション化したマシン。サンプラーにシーケンスや他の機能が搭載されてワークステーション化したマシン。HDレコーダーにサンプリング・パッドやシーケンス機能が搭載されて(以下同文)......とまあ、方々の裾野から登ってきたら頂上は1つだったとでも言うような"ワークステーション山"の盛り上がりっぷり。今回は、言わば"サンプリング・ルート"からこの山にガッツリ登ってきた最新鋭をご紹介いたしましょう。

簡単なレコーディング作業
波形編集機能は格段にアップ


"またまた大げさにアオっちゃって"とお疑いのアナタのために、取りあえずは本機を使った音楽制作作業をシミュレートしてみましょう。


まずはCDプレーヤーでも接続してサンプリングCDから素材を録音しましょう。SAMPLINGボタンを押せば16個のパッドが点滅し、アサインしたいパッドを選んで、再びSAMPLINGボタンを押すと録音が始まり、もう1度押すと終わり。たったこれだけです。オペレーション中に問題があれば、いつでもEXITボタンを押して作業は中断できます。ちなみに、発音中のパッドや使用中のボタンが点灯する設計はSP-202以来の伝統設計。完全暗転のステージやDJブースで使うときなど、これって実に重宝します。


え?"サンプルの最初と最後に無音の部分ができちゃった"? ハイハイ、そんなときはWAVE EDITモードに入ってください。波形が見られるんです。大型ディスプレイ画面で表示を拡大したりスクロールしたりして、音のスタート/エンド・ポイントを決めましょう。低価格サンプラーにありがちな、数値や耳で確かめながらのエディットに比べ、トライ&エラーのストレスは皆無。


え?"録ったフレーズのテンポが合わない"? そんなときはBPM SYNCボタン1発。自動的にタイム・ストレッチをかけて、全サンプルの長さを瞬時にそろえてくれます。もうテンポ合わせの手間は要りません。気に入った音があったら、取りあえず録り込んでからシンクさせちゃえばいいのです。また、テンポはBPM ADJUST機能で数値指定もできます。MIDIシーケンサーを使い、音源として本機を鳴らす場合も、あらかじめこの数値をシーケンスのBPMに合わせておけばピッチ合わせは不要というわけです。


下ごしらえの後はPATTERN RECORDINGモードに突入しましょう。テープ・レコーダーに録音する要領で、メトロノームを聴きながらパッドをたたいてパターン(シーケンスは4トラックまでレコーディング可能)を作り、それを組み合わせればソングが1曲完成。クオンタイズやマイクロ・スコ−プ・エディット画面での数値編集など、後からの編集メニューも豊富です。


全自動カット・アップ機能や
DJ系のエフェクターを内蔵


しかし本機最大の売りは、何と言ってもCHOP機能。PROPELLERHEAD ReCycle!などのソフトをお持ちの方ならおなじみ、あの全自動カット・アップがボタン一発で可能なんです。サンプルの中から分割ポイントを検出し、例えばドラムのフレーズならキック、ハット、スネアと解体して、別々のパッドに自動的にアサインしてくれます。ブレイクビーツの作成にはもちろん、録ったフレーズから欲しい単音を抜き出すときも、ポイントを波形でネチネチ探してると発狂しそうになる飽き性のアナタに最適。人声や環境音のようにさまざまな音源を"CHOP"してみても意外なネタが作れるかも。


これ以外にも、パーカッション系サンプルとパターンがプリセットされているので簡易リズム・マシンとして使えるとか、録ったサンプルを編集すればベース・ラインも作れちゃうとか、バックアップ用スマート・メディアを利用してWAVE/AIFFファイルの取り込みも可能とか......とにかく細かい機能がいっぱい。


さらにエフェクター部の操作系にも、小粋な趣向が。BOSSのコンパクト・エフェクターをお持ちの方は、3つのツマミが横に並んだルックスを思い浮かべてください。本機もまさにあの感じ。ロータリー・ポッドが3個並んでいて、エフェクト画面を確認しながら、それぞれのパラメーター量をリアルタイムに増減できます。ディレイ(BPMに自動シンク可能)やコーラスなどのエフェクト以外にもISOLATORやCENTER CANCELERなどDJ系のサウンドを狙ったものが盛りだくさんで、エグいぐらいの効きの良さが魅力。何ならDJミキサーに常時接続しておき、サンプルを加工するデジタル工作機械&マルチエフェクターに特化してしまうのもアリでしょう。いかがです? 高価なパソコンやサンプラーを眠らせておくぐらいなら、それらを売り払って本機を数台購入するのも案外、賢い選択かもしれません。



BOSS
SP-505
59,800円

SPECIFICATIONS

■最大同時発音数/8音
■インターナル・メモリー/サンプル250(16バンク)、STANDARD=約2分、LONG=約5分、LO-FI=約17分
■メモリー・カード(スマート・メディア32MBの場合)/サンプル256(16バンク)STANDARD=約16分、LONG=約32分、LO-FI=約98分
■入力端子/ライン(RCAピン×2)、デジタル(オプティカル/コアキシャル)、マイク(フォーン)、フット・スイッチ
■出力端子/ライン(RCAピン×2)、ヘッドフォン
■外形寸法/298(W)×254(D)×64(H)mm
■質量/1.4kg