SPMテクノロジー搭載の次世代型PA用パワー・アンプ

ECLERPAM4100

久々にパワー・アンプらしいPA用パワー・アンプが登場しました。ECLER社(スペイン)から、SPMテクノロジーを搭載したシリーズです。SPMテクノロジーとは、卓越したオーディオ性能と抜群のアンプ保護機能を両立した次世代のパワー・アンプ技術です。ECLER社は35年の歴史の中で、プロとしてのパワー・アンプ技術を研究してきました。そして、"ALL THE POWER ALL THE TIME"(いかなる時にも最大のパワーを)という、業務用音響機器に要求されるタフさ、信頼性、そして高品位、高性能を実現しています。

スイッチングMOSFETの採用で
きめ細やかな音の再生に成功


ECLERのパワー・アンプの概念は、
①フル&トゥルー・プロテクション:DC電圧、オーバーヒート、クリッピング、信号ショートなど、アンプ動作上で予想されるさまざまな危険から完璧に保護するアンプであること。
②信頼性:電源のドロップ・アウトなど、アンプの動作を妨げる要因が発生してもその動作を止めることがないこと。
③卓越したサウンド・クオリティ:フルパワー・オペレーションにおけるサウンドに重点を置いた設計であること。クリップ時においても聴感上歪みを最小限に抑えたソフト・クリップやスイッチングMOSFETが誇る繊細なサウンドを従来では難しかった大容量パワー・アンプで実現させる。
となっています。こうした概念に基づいて、このパワー・アンプが生まれたわけです。


そこでまず、SPMテクノロジーで採用されている"スイッチングMOSFET"とは何かを説明しましょう。スイッチングMOSFETは従来のバイポラー型増幅回路(二極式トランジスター)に比べて7倍ものゲインや周波数特性を持ち合わせます。ECLERではこのスイッチングMOSFETが持つオーディオ用途での高い分解能と信頼性を長年の研究の末、実機に搭載することに初めて成功しました。


では、どんな点が従来の二極式トランジスターより優れているのでしょうか? スイッチングMOSFETの内部抵抗は、二極式トランジスターより低いため、アンプのオペレーションはより低温かつ強固で、低音域も損なわれません。二極式トランジスターは、両極に可変式内部抵抗を持つため、結果として動作温度は、スイッチングMOSFETの方が10℃〜15℃低くなります。この事実が熱暴走によるパフォーマンスの低下を防ぎ、さらにはアンプの長寿命にもつながるのです。アンプの性能には出力とダンピング・ファクターのほかにもう1つ重要な要素として"スルーレート"があります。これは、100万分の1秒間に電圧をどこまでかけても大丈夫かという指標で、車に例えるなら"スピード"です。一般にこの値が大きいほどアンプが再生できる分解能が優れていることになります。二極式トランジスターが40〜60V/に対してスイッチングMOSFETは90〜135V/という驚異的な値を指し、これが、きめ細やかな音の再生に貢献します。また、再生できる変調周波数帯(アンプの高音質を決める数値)は二極式トランジスターが、2MHzに対して、スイッチングMOSFETは15MHzと二極式トランジスターの7倍以上です。理論上では耳に聴こえなくてもハーモニクスに多大な影響を及ぼします。また、出力の周波数帯域も7Hz〜55kHzと驚異的な数字です。


中・高域が非常に粒立ちの良い
プロ・オーディオ・サウンド


ECLERのPAMシリーズは、PAM1100、PAM2100、PAM4100、PAM6100の4種類のラインナップで、サイズ、出力の違いで使用環境に応じて選択します。今回のチェックではPAM4100を使用しました。仕様は、8Ωステレオでは650W+650Wの出力、2Ωステレオでは、1,580W+1,580Wという驚異のパワーを実現しました。フロント・パネルは必要最小限のスイッチ類(自照式パワー・スイッチ、ゲイン・コントロール、各種インジケーター)をシンプルにレイアウトし、このアンプの特徴の1つでもあるクーリング・システムの排出口が、フロント下部を占めています。このため効果的に内部を冷却していることが視覚的にも確認でき、実際にものすごい量の風が排出されています。リア・パネルには、クーリング・システムの大型ファンが左右に取り付けられて、フロントに風を送り出しています。ファンの音も意外と静かです。出力端子は、NEUTRIK社のスピコンを採用しており、ブリッジ・アウト用も取り付けられています。


肝心のサウンドですが、幾つかの製品と聴き比べをしたところ、外観は業務用パワー・アンプという顔立ちですが、実際のサウンドを聴いてみると、他のアンプと比べパワフル感はもちろん保ち、中・高音域が非常に粒立ちが良く、ハイパワー時でも歪みのないプロ・オーディオ・サウンドを感じました。


最後にこのPAM4100と最上位機種のPAM6100に搭載されているA2SP(Analogue Autogain Signal Processor)システムについて紹介します。これは、VCA回路で自動ゲイン保護回路が働き、急な音声信号の流入などスレッショルドの変化にもクリップしないように自動的に保護するというもので、極端にロード・インピーダンスが低く入力ゲインが高い状況にはとても重要なシステムです。さらに各トランス内に温度センサーが組み込まれ限界温度に達した際にA2SPが作動します。まさに冒頭で紹介した"ALL THE POWER ALL THE TIME"ですね。



ECLER
PAM4100
330,000円

SPECIFICATIONS

■周波数特性/6Hz〜80kHz
■接続端子/XLR(インプット)、スピコン×2(アウトプット)、スピコン×1(BRIDGE-OUT)
■外形寸法/440(W)×523(D)×132.5(H)mm
■重量/26kg