16のアンプ/15のキャビネットをシミュレートしたモデリング・アンプ

BEHRINGERV-Amp

ギタリストの宅録に欠かせなくなってきているアイテムの1つが、ギター・アンプ・シミュレーターだ。LINE6のPodを筆頭に、さまざまなモデルが登場している。最近では価格もさることながら、エフェクト等を含めた高機能と、アンプならではの臨場感もさらに進化。ビギナーズ・アイテムとしても、大変身近になって来ているのだ。

オート・ワウやトレモロ
リバーブなどのエフェクトも装備


今回紹介するBEHRINGERのV-Ampは、ギターのボディ・シェイプにも似たポップなデザインを持ち、16のアンプ・シミュレーションと15のキャビネット(スピーカー)の組み合わせが可能だ。


では、シミュレーションされている代表的なアンプを紹介していく。"Tweed Combo"とプリセット名が冠されているのはFENDER製Tweed Deluxeのもの。スプリング・リバーブを除けば、音色はかなり近い感じだ。"Classic Clean"はROLAND JCシリーズで、ハイエンドがしっかりしていて、恐らくスタンダードなJC-120のシミュレーションだろう。欲を言えば、JCのあのコーラスの感じも再現してくれれば、と思った。"Modern Class A"はMATCHLESS Chieftain。中域に癖がある独特のサウンドだ。"Brit Class A"は、イギリス製の銘機VOX AC30。これはかなり良い印象を受けた。中域にエッジが立つ感じで、モニターされるサウンドはスピーカーから出る音をマイクで録っていると言うよりも、直にアンプの音を聴いている感じである。"Brit Blues""Classic""Hi Gain"の3種類はロックの神髄MARSHALLアンプのシミュレーション。中でも"Hi Gain"は、ギタリストであればだれもが知っているJCM800をシミュレーションしたもので、本体の"GAIN"コントロールで心地よく歪み、キャビもよくシミュレートされている。"Rectifield Hi Gain"は、サンタナ・サウンドで思い描くことができるMESA BOOGIE。中低域がよく歪むツルっとした音色だ。そして"Modern Hi Gain"と銘されているのは、私が長きにわたり愛用しているSOLDANO SLOのシミュレート。シミュレートされることの少ないこのプログラムは、個人的には大変興味のあるところ。強力に歪ませてもバランス良く全弦の響きが聴こえる感じや野太いローの印象は大変良い。


"Fuzz Box"はARVITER FuzzFace Pedalのシミュレーション。"ミーミー"鳴っている昔懐かしいELECTRO-HARMONIX Big Muff的なオールド・ファズ・サウンドで、"GAIN"ツマミを可変すると鋭く歪みながらトーンのピーク・ポイントも変わっていくところなどは大変良くできている。また、唯一のベース・アンプのシミュレーションの"American Blues"は、FENDERのベース・アンプのBassmanをモデリング。オールド・サウンドではあるがハイ、ローのコシがあって印象は良い。


なお、エフェクト部にはオート・ワウ(MIDIペダル・コントローラーの使用でワウ・ペダルにもなる)やトレモロ、コーラス、フランジャー、フェイザー、ディレイ(タップ・ボタンによりディレイ・タイムが変更可能)、コンプレッサーのほか、複合エフェクト6種類を任意に選択できる。さらにルーム、スプリング、アンビエンス等9種類の中から選択可能なリバーブも別に用意されている。


プリセットの呼び出しも簡単で
操作性の良さを実感


実際の使用感だが、操作性は非常に良く、このレビューを読めば取り扱い説明書無しで扱えるだろう。まず、好みのアンプの種類を中央左の"AMPS"ツマミで選択し、ギター・アンプ同様"GAIN""TREBLE""MID""BASS""VOLUME"で好みの音色に調整する。必要なら中央右のエフェクト選択ツマミでエフェクトを選択し、"EFFECTS MIX"ツマミでレベルを調整。リバーブの選択も同様だ。気に入った音色ができたらメモリーにストアするのだが、本機の場合は、25まであるバンクに対してA〜Eの5つのプリセットが本体から瞬時に呼び出せる。プリセットの呼び出しは大抵の場合"INC/DEC"ダイヤル等で順々に呼び出していくものだが、本機だと1曲に対して必要なプリセットを立ち上げておけて大変便利だ。また、付属のフット・スイッチにより5個のプリセットの"UP/DOWN"の切り替えができるのも便利。ストアの仕方は、立ち上がっている5個の任意のスイッチを2秒間押すだけだ。さらに、各プログラムを呼び出したときにツマミがどこに位置しているかを、ツマミの周りにリング状に配置されたLEDが示してくれる("MASTER"ツマミ以外)。これは、エディット時には非常に扱いやすい。


なお"TUNER"ボタンを押すと、本体からの音はミュートされチューナーが立ち上がる。5セグメントのLEDで微妙なチューニングも可能だ。このチューナーも、付属のフット・スイッチの"DOWN"を2秒間押し続けることで起動可能だ。


ユニークな入力端子としては、AUX入力が装備されている。これは"LINE OUT"にそのままスルーする入力端子だ。練習の際にDATやMDをつないだり、AUX LEVELも装備されているので録音時のモニター用途に使うなど、便利そうだ。


本機は値段的にも安価で、宅録的なサウンドとしては申し分の無い製品だ。"アンプ・シミュレーターは高価だから......"と躊躇している人や、これから購入を考えているビギナーにお薦めだ。


BEHRINGER
V-Amp
33,500円

SPECIFICATIONS

■入力端子/INPUT(フォーン)、AUX IN(フォーン)、PHONES(ステレオ・フォーン)、FOOTSWTCH、MIDI IN
■出力端子/LINE OUT(フォーン×2)、MIDI OUT
■入力インピーダンス/約1MΩ(INPUT)、約50kΩ(AUX IN)
■出力インピーダンス/約2kΩ
■AD/DA部/24ビット、シグマ・デルタ方式(64/128倍オーバー・サンプリング)
■サンプル・レート/31.250kHz
■ディレイ・タイム/最大193msec
■外形寸法236/(W)×63(H)×180(D)mm
■重量/約1.2kg