温かみのある音質とフラットな特性が持ち味のステージ・モニタ−

RCFEvent 3000SM

イタリアに本社を置くRCF社から同社のEvent 3000シリーズのステージ・モニター・タイプが発売された。資料によると定番であったELECTRO-VOICE社のFM-1502(生産終了)のポスト位置の任をまかなうのに最適の製品との説明があるので、それを意識しながらレポートすることにした。

ケーブルのコネクター処理は
雨にも強く安心な構造


●サイズ
本機の方が幅が5㎝ほど狭いだけで、高さ、奥行きはほぼFM-1502と同じ。ステージ・モニターとして一番重要な仰角度は35度と、これまた同一だ。ただしこれは、ウーファー部を下(手前)に、ツィーター部が上に来るように置いたとき、すなわち標準的な、プレイヤーの足下に置くセッティングを行った場合の角度だ。やや離れたところから当てる場合に行われる、仰角を急な角度にするセッティングにしたとき(この場合、ウーファー部が上、ツィーター部が下側になってしまう)の仰角度は、FM-1502が45度なのに対し、本機は53度くらいであり、スピーカーから3〜4m離れたところに焦点が合うという感じだ。


●外装・仕上げ
半ツヤ消しの黒塗装仕上げ、エンクロージャーのコーナー・プロテクターは、エンジニアリング・プラスチック製。スピーカー部の保護ネットはパンチング・メタル製だが、木ネジで止めてあるだけなせいか、手でたたくとカンカンという音が鳴ってしまう。ビビリやすいとも言え、取り付け方にもう少し工夫が欲しい。入力コネクターはスピコン型が採用され、エンクロージャーのサイドに斜め下向きに取り付けられ、スピーカー・ケーブル側のコネクターがエンクロージャーの外側にはみ出さないように工夫されている。FM-1502はフォーン・ジャックが採用されていて、ケーブルのコネクターが外にムキ出しで全く保護されていなかったことを考えれば、本機の構造は大正解でしょう。雨も入り込みにくい。


振動板のカーボン・ファイバーが
滑らかな高音域を実現


●内部構造・音質
まず、スピーカー・ユニット構成が、プロ用標準形とも言える38㎝ウーファー、1インチ・ドライバーによる2ウェイ。本機のスピーカー・ユニットの特徴は、高音用ドライバー・ユニットの振動板に、カーボン・ファイバーが採用されていることだろう。先ほどから比較対象にしているELECTRO-VOICE社製等を含め、他社の多くの製品がアルミやチタン等の金属系を使用しているのに対し、ヨーロピアン・サウンド(メーカーからのコメントにもある)とも言える、滑らかな高音域を得ることに成功している。この布系の振動板は、古くから存在していた(JBLの名機2482は、フェノール樹脂を含ませた布製の振動だった)のだが、恐らく本機の場合、カーボンにより硬度を高くすることができたのだろうか、高域のレンジは広いのに、うるさくない音質を持っている。ウーファー部とのつながりも良く、とてもフラットな特性を持っているようだ。すなわちハウリングを起こしにくいということ。パワー・リニアリティも良く、大音量でもピーキーな音にはならない。まあ、これは、ネットワーク部に高音域用に豆電球を使ったプロテクターが入っていて、これが効いているのかもしれない。


さて、ウーファー部であるが、音圧レベルはスペック上は101dB/mとFM-1502と同じなのだが、60Hz近辺のレスポンスは力強く出ていて、キック・ドラム等は聴き取りやすい。では、ステージ・モニターとして一番重要なボーカル帯域はどうだろうか。これが、とても良かった。前述したように、ウーファー部とツィーター部のつながりは良いので、とても扱いやすいミッドレンジに仕上がっている。今までの経験で、2ウェイや3ウェイを感じさせないスピーカー・システム(すなわち良いシステム)はハウリング・ポイントを見つけやすいことが多かったのだが、本機の場合も、使用する環境によって変化するハウリング・ポイントを見つけてその帯域を少し抑えてやればそれでOK!というタイプ。以上、音に関してはこのクラスの製品として合格。近距離用のステージ・モニターとしてミキサーが制御しやすいスピーカーと言える。


ただ、改善してほしい点も挙げておこう。エンクロージャーの形状が六角形になっており、底部の面積が小さく、頭頂部に登ったりしようものなら回転するように倒れてしまうこと。もちろんそんなことをする方が悪いに決まっているのだが、昨今では出演者のみならず、客席から登ってきてはステージ・モニターに登ってしまうバカ者も多い。本機の場合プラスチックのゴム板が付いているのだが、その取り付け位置を変えて、少しでも倒れにくくするべきだと思う。それと、本体と保護ネット面が同一平面上にあり、移動する際に手がかりが少ないこと。デザイン上はスッキリして見えるポイントではあるし、重量は比較機より7kgも軽いのだが、実際の取り回しは少し扱いにくかった。


細かいところではあるが、使う側にしてみれば日常のことになるのでちと辛口御免。


RCF
Event 3000SM
168,000円

SPECIFICATIONS

■定格入力/600W
■音圧レベル/101dB
■周波数特性/60Hz〜20kHz(±3dB)
■入力インピーダンス/8Ω
■外形寸法/500(W)×700(D)453(H)mm
■重量/27kg