標準でフルオプション装備のE4 Ultraシリーズ最上位機種

E-MUE4 Platinum

サンプラーなど、デジタル系の音楽機材で、ここ数年の流行と言えばソフトウェア・ベースのものだ。レコーダー、ミキサー、エフェクター、シンセサイザーときて、最近はソフトウェア・サンプラーも"使える"レベルになっている。この先、ハードウェア・メーカーはどうなっちゃうの?と日ごろから思っていた矢先、サンプラーのしにせであるE-MUから新機種がリリースされた。それが今回レポートするE4 Platinumである。基本性能やユーザー・インターフェースは従来のE4 Ultraシリーズを引き継ぎ、RFX-32という新開発のボードを搭載し、EOS(E4 UltraシリーズのOS)のバージョンも4.5になっている。その辺りを中心にチェックしてみよう。

最新のDSPボードを搭載し
内部32ビット処理が可能に


E4 Platinumには、大きな特徴が2つある。1つはRFX-32という32ビット処理のDSPプロセッサー・ボードの搭載だ。このRFX-32は、従来の内蔵エフェクトとはけた違いにパワフルなもので、32ビットのステレオ・マルチエフェクトが16台分(!)も内蔵されている。その上、内部バス・アウトが14もある。内部のサンプルにはもちろん、インプットからの信号に対して、サンプルしなくても直接エフェクトをかけることが可能だ。さらに、このエフェクトもプラグイン形式を採用しており、今後リリースされる多様なエフェクト・アルゴリズムを簡単に追加することができるようになっている。


そしてメーカーの言葉を借りれば、E4 Platinumは"すべてを最初から"備えている。E4 Ultraではオプション扱いとなっていた64MBのRAM、20GBのHDD、RFX-32と一緒に新登場した8イン/16アウトの24ビットADATカード、24ビット/8バランス出力カード、24ビット/4バランス入力カードなど、ほとんどすべてのオプションが搭載済みだ。あとはROMスロットにお好みの音色ROMを取り付けるくらいだろう。新開発のRFX-32とこれらの充実したI/Oによって、E4 Platinumはサンプラーとしてだけでなく、ミキサー、エフェクターとして使うことも可能になったと言える。


最新バージョンのEOSで
供給される追加機能


もう1つの変化は、E4 PlatinumのリリースとともにEOSが4.5になったことだ。マルチセットアップの保存/リコール、新しいサンプル・エディット・ツールなどの追加機能や、他社サンプラーとのデータ互換性もさらに向上している。また、この原稿を書いている最中に、EOS 4.6が登場した。締め切り間際のアップグレードだったので、あまり細かくチェックできなかったが、以下のような機能が追加される。
・ENSONIQ ASR-10、ASR-X、EPSのサンプル/プリセットをHDD、CD-ROM、フロッピーからロード可能
・RFX-32のマルチモード・スクリーンで、直接FXバスとミキサー・ルーティングのエディットが可能・FXパラメーターに対してのMIDIコントロール
・BPMベースのFXでのPatchchordモジュレーション
・RFX-32用の新しい"Dance Production Set"プラグインの搭載
[内容]Ultra Phaser、Ring Modulator、MuX ster(BPMスライサー)、Quad MuXster(4バ ンドBPMスライサー)、Vocoder ・オーディオ信号でサンプルをトリガーするTRIGGERモードの採用


本機の特徴を簡単に紹介したところで、E4 Ultraシリーズの良さとE-MUの意向を考えてみたい。コンピューター、ソフトウェア・サンプラーが安価で手軽に使えるようになった昨今、E4 Platinumの価格は、正直言って安くはない。だが僕の周りだけ見てもE4 Ultraシリーズを愛用している人は本当に多い。それはなぜかと問えば、答えは"出音がE-MUの音だから"の一言に尽きる。操作性、スペックうんぬんを語り出すとE-MUをはじめハードウェア・サンプラーには不利な点が多くなってくるかもしれないが、ここに"音の好み"が加味されれば、そんな悩みは吹っ飛んでしまう。未だにMOOGのシンセの音は本物でなければ出せないという事実と同様に、E-MUのサンプラーもそれでしか出せないキャラクターを持っている。E4 Platinumも例に漏れず、"この音が欲しいから使うんだ"的な気持ちも加わって、最高のサンプラーとなるだろう。


E-MUも自社のハードウェアに誇りを持っているからこそ、E4 Platinumを世に送り出してきたのだと思う。この操作性、そして出音にこだわったAD/DA、アナログ回路を前にして"音がイマイチ"なんて泣き言は許されない。使うべき人が使えば間違いなく素晴らしい音が出てくる。E4 Platinumはまさにプロフェッショナルのためのサンプラーであると言えよう。



E-MU
E4 Platinum
680,000円

SPECIFICATIONS

■AD/DAコンバーター/20ビット、24ビット
■データ・エンコーディング/インプット:16ビット、24ビット、アウトプット/20ビット、24ビット
■オーディオ入力端子/アナログ×6、デジタル:ADAT×1(8ch)、AES/EBU×1
■オーディオ出力端子/アナログ×16、デジタル:ADAT×2(16ch)、AES/EBU×1
■MIDI端子/MIDI IN×2、OUT×2、THRU×2
■その他の接続端子/ワード・クロックBNC IN/OUT、SCSI×2、ASCIIキーボード
■周波数特性/20Hz〜20kHz±1dB
■最大同時発音数/128
■マルチティンバー数/32
■内蔵シーケンサー/48トラック
■外形寸法/435(W)×133(H)×336(D)mm
■重量/8kg(本体)