高音質/耐久性を誇るハンド・タイプのコンデンサー・マイクロフォン

SENNHEISERE865

SENNHEISERのEvolutionシリーズからコンデンサー・マイクロフォンが登場しました。同社はダイナミック・マイクで有名なメーカーですが、どんなコンデンサー・マイクを出してきたのか楽しみです。何と言っても老舗のメーカーからの新製品ですので、期待大です。早速レポートをしてみましょう。

ライブ使用も可能で
驚異の耐高音圧レベルを持つ


大きさやデザインは、同社から出ているEvolutionシリーズのほかのダイナミック・マイクとほぼ一緒です。見た目もダイナミック・マイクというスタイルで、いかにも耐久性がありそうな感じがします。これなら多少ラフに扱っても大丈夫そうです。重量も311gと軽く、付属の布製のケースに入れてダイナミック・マイク感覚で持ち歩けるのが魅力です(そうは言っても、コンデンサー・マイクなのでファンタム電源が必要。アマチュアの方は気を付けてください)。


このマイクの特徴は、最大入力レベルの大きさにあります。SPLが150dBという驚異の耐高音圧レベルを誇っています。コンデンサー・マイクでは恐らく最高レベルの値ではないでしょうか。これなら、ドラムやギター・アンプといった音圧の高い楽器にも安心して立てられます。そして何より便利なのは、ハンド・マイクとして使えること。ライブ・パフォーマンスにもボーカル・マイクとして使用できます。スティングも愛用していて、日本公演ではボーカル・マイクとして使っていたそうです。


パーカッションの録音では
胴の鳴りまで完璧に再現


では、実際にそのサウンドをチェックしてみましょう。出力レベルはコンデンサー・マイクの中では小さい方でしょうか。NEUMANN U87とSENNHEISER MD421の中間くらいです。全体的なサウンドの印象は、一般的なコンデンサー・マイクにローカット・フィルターを入れた感じで、バックグラウンド・ノイズがほど良く抑えられたサウンドになっています。通常のコンデンサー・マイクは非常に小さな音まで拾えて良いのですが、録音環境のあまり良くないアマチュア......録音ブースの無い部屋でのボーカルやアコースティック・ギターなどの録音には、こうした特性の方がかえって良いのではないでしょうか。


まずボーカルで使用した感じですが、指向性がスーパー・カーディオイドということもあって、ダイナミック・マイクを使っている感覚で録音ができます。もちろん、サウンドは周波数特性、ダイナミック・レンジの広いコンデンサー・マイクそのものなのですが、ダイナミックとコンデンサーがミックスされたような不思議な感覚です。低価格帯のマイクにありがちな、妙に高域が持ち上がったジャキジャキしたサウンドの感じもなく、非常にナチュラルなサウンドです。近接効果もそれほど強くないので、ロックのライブなどでかなりマイクに近付いて歌っても少し低域をカットすれば問題なく対応できると思います。また、いわゆる吹かれにも強いので、今までライブ・パフォーマンスでのボーカル・マイクにダイナミック・マイクを使っていて自分の声に満足できなかった方は、1度試してみてはいかがでしょうか? ダイナミック・マイクとはかなり違ったサウンドが得られます。このマイクをボーカルで使用するなら、ライブでの使用か宅録がお薦めです。


次は、アコースティック・ギターに使ってみました。アルペジオから激しいカッティングまで、詰まることなくクリアに拾ってくれます。スーパー・カーディオイドの指向性がここでも発揮されて、弾き手の鼻息をあまり拾わずにギター・サウンドを録ることができました。弾き語りの一発録音でも、このマイクならボーカルのかぶりもあまり無いのでギターとボーカルのバランスも取りやすいでしょう。本格的にアコースティック・ギターをいわゆるハイファイに録るなら、U87やU67といったダイアフラムの大きなモデルに軍配が上がりますが、リズムの中で鳴っているギターやロック的な音を求めるなら何の問題もなく使用できますし、むしろこのマイクの方が良い場合もあると思います。


そして、今回のチェックで一番の収穫は、パーカッションの録音でした。ボンゴとタブラを録ってみましたが、フォルテッシモでたたいても歪むことなく、打点の音だけでなく胴の鳴りまで完璧に再現しました。さらに、手が革を擦るカサカサした音やタブラの低音まで見事に拾ってくれます。さすがコンデンサー・マイクだなと思いました。今後パーカッションの録音では、僕もこれを使ってみたいと思っています。


全体的な音質については、U87に比べると帯域は若干狭いですが、先ほども言ったように、環境によってはそれがかえって良い場合があると思います。録音機材を含めた機械は、すべての事象にパーフェクトなものは無いと思います。すべての機材は適材適所、頭を使って、愛を持って、そして通説にとらわれること無く自分の感性を信じて使用すれば、必ず良い結果が得られるでしょう。


このマイクの魅力は、性能と5万円以下という価格にあると思います。老舗らしくちゃんとした価格設定を行っているのも好感が持てます。可搬性の面も含めカジュアル感覚に使えるこのマイクは、アマチュアの方にも、そしてレコーディングやPA現場のプロの方にもお薦めできる製品だと思います。


SENNHEISER
E865
42,800円

SPECIFICATIONS

■指向性/スーパー・カーディオイド
■周波数特性/40Hz〜20kHz
■感度/−50dB(0dB=1V/Pa 1kHZ)
■最大音圧レベル/150dB
■出力インピーダンス/200Ω
■開放出力電圧/3mV/Pa
■付属品/ソフト・ケース、マイク・ホルダー
■外形寸法/47(φ)×193(H)mm
■重量/311g