多彩なシチュエーションで活用できるドラム&ベース・シーケンサー

ZOOMRT-323

ZOOMのドラム&ベース・シーケンサー、RhythmTrakシリーズにニュー・マシンが加わった。旧ラインナップでもそうであったように、本機もまた、音楽を創造する楽しさをたっぷり味わわせてくれる......そんな魅力の詰まった1台に仕上がっている。早速レポートしてみよう。

リアルタイムの操作性に優れ
サウンドのクオリティも充実


まずは旧来機から格段に向上したインターフェースが目に付く。液晶ディスプレイを採用し、データの視認性を高めてくれたのは大いに助かる部分と言えよう。本機内部には、プリセット400+ユーザー100のパターン、プリセット64+ユーザー64のドラム・キット、それから377種類の音源......というように、非常に豊富なデータが封入されているため、液晶ディスプレイの採用は大きなアドバンテージだ。大型のダイアルも2つ採用されたことにより、スピーディでフィジカルな操作が行えるのもうれしいところ。


触ってみた印象は、ライブやクラブ・プレイで使用すると面白そうだということ。そう感じさせてくれたのは、パッドにパターンをアサインし、リアルタイムで演奏するGroove Playモードだ。このモードでは、DJがスクラッチでもしているような感覚で、最大4つのパターンを重ねて複雑なグループを演奏することができる。プリセットされた音色、パターンも十分に実用レベルだ(ROLAND TR-808系のキック音のアタック感はこのクラスにしてはなかなかのもの)。ダンス系だけではなく、ロック、ジャズ系のパターンも多数収録されているから、ユニークなトラック・メイクも期待できる。パソコン用キーボードのスペース・バーのようなREPEAT/STEPボタンを押しながらパッドをトリガーすると、手を放してもそのパターンをループ再生してくれる。実際、この機能を使ってTR-808系のダンス・トラックをループさせ、その上にジャジーなパターンを絡ませて遊んでみたが、これがなかなか楽しい。ちょっとしたDJ気分だ。


このほか、パターン作成のためのPatternモード(各パッドに音色がアサインされる。ベース・トラック選択時にはパッドは鍵盤として機能する)とソング作成用のSongモード(パッドにはパターンがアサインされる)がある。ちなみにこのパッドはベロシティにも対応しており、さらにメロディを演奏することも可能だ(白鍵と黒鍵をイメージしたデザインとレイアウトになっている)。オクターブ切り替えも右脇のボタンでワンタッチ。音色のクオリティもラインナップの中では最上位に当たるのではないだろうか?


24ビットのD/Aが採用されている点も関係しているはずだが、内蔵されているサンプル自体が、とても音楽的というか、ツボを押さえているといった印象だ。例えば些細なことだが、エレキベースのサンプルなどは、弦のビビる感じまで再現している音程がある。再生されるフレーズ自体は生っぽくはないが、混ざるとそれなりに雰囲気が出るのだ。ドラム系もとてもバランスがとれている(無論、価格との競争でサンプラー並みに高品位というわけではないが)。だが素の状態だと、やはりパンチ感がやや薄いので、適当なコンプにつなげてやりたいところ。また、ヘッド・ルームの大きいミキサーに入力して使うのも実用案として有効と言えそうだ。過大入力にして、かつハードなEQ設定にすれば、自然なオーバードライブ感のあるサウンドがすぐに得られるはず。それをサンプリングして、独自のブレイクビーツ・ライブラリーを蓄えていくのもいいだろう。またこのモデルには、メイン出力のほかにサブ出力端子も設けられているので、外部ミキサーを使えば音作りの可能性はさらに広がる。リズム系とベースを別々に取り出したり、2種類のリズム・パターンに独立したエフェクト処理を外部で施すといった利用法も考えられる。


スマート・メディア経由で
PS-02との連携使用も可能


さて、ここでトラックの構成について触れておこう。本機には、ドラムA+ドラムB+ベース+ソング・トラック=計4トラックが装備されている。ドラムA/Bとベースに関しては読んで字のごとく、それぞれプリセットもしくはユーザー独自に作成したパターンの再生順序を指示するためのもの。ソング・トラックは多彩な利用法が可能になっていて、プログラミングの幅を広げるのに貢献してくれる。例えば、ドラムA/Bで基本となるベーシックなリズム・パターンを演奏させ、ソング・トラックにはフィルだけをプログラムしておく......など。このほか、初代モデル...234で採用されて話題になったサウンド・ジャマー・スライダー(音色にリアルタイムな変化を与える)の動きを記録させたり、ドラムやベースのフレーズをリアルタイム入力することができるよう設計されている。これらの各トラックは、独立したミュート操作が可能。プログラム済みのソングからバリエーションを生み出すことも簡単だ。特にテクノ系のソングでは、ドラムAにキックとハット、ドラムBにスネアとパーカッションという具合にあらかじめ分けて入力しておけば、場面によってキックとハットだけのトラックを演奏させたりすることもできる(実際、そのようにプログラムされているプリセットもある)。


最後にデータ管理の方法について。本機では、先に登場したパームトップ・スタジオPS-02にも採用された、スマート・メディアによるデータのバックアップ方法にも対応している(PS-02とのデータの互換性もあり)。さらにMIDIにフル対応、単3電池6本で7時間以上の連続使用を実現、手軽にセッションを楽しめるLINE INの装備、2系統のCONTROL IN端子装備......など、活用法にたくさんの可能性を与えてくれる仕様が満載。どんなシチュエーションで活躍させるか、それはユーザーの創造力次第といったところか。



ZOOM
RT-323
29,000円

SPECIFICATIONS

■サンプリング周波数/48kHz
■D/A変換/24ビット8倍オーバー・サンプリング
■同時発音数/30
■分解能/♪=96
■テンポ/40〜250BPM
■定格入出力レベル/−10dBm
■外形寸法/265(W)×175(D)×55(H)mm
■重量/870g(電池除く)