ステップ・シーケンサー搭載の卓上型シンセサイザー音源

YAMAHAAN200

コンピューター・ベースの制作環境が増えてきた最近でも、まだまだリズム・マシンやサンプラーなどの単体機種を使用する機会は多いです。やはり、"適当に遊んでいたら、こんなのできちゃった"というアナログライクな操作性や、電源を入れたらすぐに立ち上がる(笑)などのお手軽なところが魅力の1つだと思います。以前からそういった単体機種を数多く発表しているYAMAHAから、シーケンサー、アナログ・モデリング・シンセサイザー、リズム音源を一体化させたAN200が発表されました。さて、このAN200でどんな音楽制作が可能なのでしょうか、見ていきましょう。

リアルタイムな操作性を重視した
直感的インターフェース


最初にざっとパネル上を見て気がつくのが、たくさんあるノブやスイッチ類。これらを使うことによって、音色やシーケンス・データをリアルタイムに変化させたりすることができるといった用途のものですが、AN200ではさらにシフト・ボタンでの切り替えによってさまざまなパラメーターがアサインされています。


プリセットとして256個のテクノ、ヒップホップ、ブレイクビーツなどのパターンが用意されているので、それを元にツマミをいじり回すのも楽しいでしょう。ものの1分でプリセット・パターンの原形を留めていないオリジナルなパターンができることと思います。


AWM2を使ったリズム音源はアナログ・ドラム・キットやサンプリング・ドラムを基調とした120音色(ベース・サンプルも含む)が用意されており、まさにダンスもの音源といった感じです。エフェクトを施さなくても使える、歪んだスネアがあったりとなかなか用意がいいです。シンセサイザー音源としてはアナログ・フィジカル・モデリング音源が採用されており、キレのよいフィルターによる抜けのよい音色が印象的です。ポリ、モノ、ユニゾン、オシレーター・シンクやノイズの組み合わせで幅広い音作りができ、付属CD-ROMのAN200 Voice Editor(Macintosh/Windows対応)を使って音色のフルエディットも可能です。これらの音源はキーボードなどの拡張音源としても使用できます。また、4タイプの内蔵エフェクトはパターンのBPMが変化しても自動的に同期をするディレイをはじめ、フランジャー、フェイザー、オーバードライブ+アンプなどといった手軽で感覚的に使用できるものが用意されています。


内蔵の16ステップ・シーケンサーはリズム・トラックが3つ、シンセ・トラックが1つの構成となっており、パターン入力方法はステップ、リアルタイムの2通りから選択できます。また、リアルタイムで入力した後にステップで修正といった使い方にも対応しています。この16ステップ・シーケンサーの面白いところが、それぞれのステップにインスト、ピッチ、ゲート、ベロシティなど別々のものを設定することができ、1トラックに1音色という概念が無いところです。なのであらかじめ用意されているベースのサンプルをアサインし、ステップごとにピッチやゲートを入力してあげればベース・ラインも作れたりします。16ステップのインストをバラバラにすることも可能です(まぁ、しないでしょうけど)。ボタンを切り替えることにより、トップ・パネル一番下の8本のノブがそれぞれステップ1〜8と9〜16に対応する仕組みです。データ入力するときにシフト・ボタンを押しながらノブを回すと、そのステップ以降の数値をすべて同じ値に設定することができるのでまとめて入力したい場合などは非常に便利。あと、このAN200、シフト・ボタンを押しながら操作というのが非常に多く、どこに何があるか理解するまでちょっと苦労するかもしれませんが、すぐ慣れるので問題は無いでしょう。


パラメーターの変化を記憶できる
シーン機能がユニーク


そうして作ったパターンを再生させながらリアルタイムにサウンドを変化させるのに便利なキーがそれぞれ用意されており、テンポを倍や半分にしたり、リズムの先頭だけを繰り返し再生させたり、パターンを逆再生させつつロールをしたりなどといったユニークなオペレーションが可能。TAPボタンを3回以上たたくとそのタイミングでBPMが設定できる点も面白いです。これらの機能を試していると、本機はライブ・パフォーマンス性を重視した作りになっているのがよく分かります。また、シンセ・トラックに複数のパラメーターの変化を記憶させておくことができるシーン機能もユニークです。例えばオシレーター、フィルターEG、パン、エフェクト、LFOなどつまみで音色を変化させたノブの設定をそれぞれ2つ記憶させたバリエーション音源を、ボタンでシーンを切り替えたりモーフィングさせたりすることができます。


また、パラメーターの時間的な変化を4種類までプログラミングできるフリーEG機能も面白い機能です。打ち込みのライブではあらかじめ作り込んでいる場合が多いと思うので、このようなリアルタイムな機能を効果的に使い、その場で構成を作っていくというライブでは重宝するでしょう。


そうして作ったパターンはユーザー・パターンとして128個まで保存でき、ソング・モードでそれらを並べて再生することももちろん可能です。そのソング・モードで曲を作り込んでいくことができます。つまり1台でループ・ベースのワークステーションとして機能させることができます。


簡単に遊べる手軽な楽器はコンピューター・ベースのものとは違った楽しさがあるものです。AN200は久々にそう思わせてくれる機材の1つでした。



YAMAHA
AN200
59,800円

SPECIFICATIONS

■音源方式/アナログ・フィジカル・モデリング(AN)音源+AWM2音源(リズム・トラック)
■アウトプット/L(MONO)/R、MIDI OUT、ヘッドフォン
■インプット/MIDI IN、DC IN
■マルチティンバー数/AN5音+AWM32音
■最大同時発音数/32
■音色数/プリセット256+ユーザー128
■外形寸法/388(W)×51.7(H)×208.9(D)mm
■重量/1.6kg
■付属品/電源アダプターPA-3B、CD-ROM