豊富な音色と音作りの自由度を備えたブラック系ダンス用モジュール

E-MUMo'Phatt

独自の操作性、音質、機能で多くのクリエイターを魅了してきたE-MU Proteusシリーズに、新たなバリエーションが追加された。かつての名機Planet Phattのサウンドをベースに、より多彩なサウンドと機能を追加した、ブラック系ダンス・ミュージック向け音源モジュールMo'Phattである。早速その詳細を紹介しよう。

ブラック系のトラック制作に必要な
王道サウンドは一通りそろっている


最近のE-MUは新製品のリリースがとにかく活発である。かつては高級海外ブランドというイメージが強かったが、最近は品質は維持しながらも価格的には国内製品と肩を並べるようになり、より幅広いユーザー層に良いものを提供するというイメージが定着してきている。そんな同社の新製品Mo'Phattの主なスペックとしては、32ビット・プロセッサーによる高音質、64ボイス同時発音(アップグレードにより128ボイスまで拡張可能)、1,024プリセット(512ROM+512User)、32MB拡張ROMスロット×2(うち1つに"Phatt ROM"搭載済み/4スロットに拡張可能)、16chマルチティンバー(32chに拡張可能)、2パラアウトプット(6アウトプット+S/P DIFに拡張可能)といった辺りが挙げられる。


さて、本機が届いてまずデモ・ソングを聴いてみてびっくりしたのだが、32MBのサンプル・メモリーには、ロサンゼルスやニューヨークのトップ・クリエイターたちが手掛けた文字通りファットなサウンドが満載されている。R&B/ヒップホップのトラック制作に必要な王道サウンドは一通りそろっており、下手なサンプリングCDを何枚も買うよりはよっぽど役に立つだろう。カッティング・ギターやワウ・ギターのサンプル、ファンキーなボイス・ネタなども充実しており、お買得感も高い。中にはヌケが今一つと感じるプリセット音もあったが、全体的にE-MUらしい中低域にコシがある豊かな音質だ。なお拡張スロットには、Proteus2000シリ−ズ用の膨大なROMライブラリーのほかに、E4Ultraサンプラー・シリーズで作成したカスタムROMを1枚装着することもできる。


エフェクト関連は76種類の24ビット・エフェクターを2基搭載、一通りのエフェクトは網羅されている中で、特にディレイ系やリバーブ系が充実している。また、各サウンドごとにエフェクト・アルゴリズムや設定をリンクさせることも可能となっている。フィルターは50種類の12ポールZ-Planeフォルマント・フィルターを搭載、クラシック・タイプのものからユニークなものまでさまざまだ。また、内部回路のさまざまな箇所に信号をパッチできるパッチ・コード・モジュレーター・システムも搭載されており、プリセットごとにプログラミングすることができる。これらの機能により、1Uサイズとは思えないほど単体での音作りの自由度は高くなっている。


さらに、注目したいのがPlanet EarthやXtreme Lead-1にも搭載された新機能"Super BEATs Mode"だ。これは、かつてOrbit、Planet Phattなどに搭載されていたリズム・パターン"Beats Mode"を、それぞれ16のパート別に振り分け内部クロックまたは外部クロックとシンク可能にし、MIDIソングのスタート/ストップおよびソング・セレクト・コマンドで鍵盤から自由自在にトリガー/ラッチ/アンラッチ操作ができるという優れもの。これにより16のパート別にグルーブ感を自由自在に操ることができる。


また最大16ch同期したアルペジエイター・パターンを、異なるサウンドを使って同時に再生できるリズミック・パターン・ジェネレーター/アルペジエイターも独立して存在する。アルペジエイターのパターンはプリセットで200、プログラムやダウンロードが可能なユーザー・パターンが100もあり、それらの演奏パターンを拍単位でエディットすることも可能だ。これらの機能を組み合わせれば、シーケンサーがなくても本機のみで非常にユニークなトラックを演奏できるだろう。


欲しい音に瞬時にアクセス可能な
快適なオペレーション


操作性に関しては、12個のリアルタイム・コントロール・ノブ(4ノブ×3バンク)と素早くカテゴリー別に必要な音色が検索できるSound Navigator機能の搭載で、狭いLCDスペースながらオペレーションは快適だ。特にボタン1つでカテゴリーを選択できるので、欲しい音のイメージに瞬時にアクセス可能なのは特筆に値する。ディスプレイにはプログラム名の上にプログラム・チェンジのバンク・セレクト・ナンバーが表示されるので、打ち込みをしているときなどはシーケンサーの入力に反映できるのが便利だ。


また、Proteus2000シリーズから搭載されているAuditionボタンも非常に優れものである。音色ごとに合ったリフを演奏してくれるので、MIDI鍵盤から音を弾かなくても音色を効率よく確認でき、なおかつそのままプリセットをガンガン切り替えて音を確認でき大変便利だ。ただ、マニアックなエディット等を頻繁に行わなければならない場合は、パラメーターをめくるのに若干ストレスを感じることもあるだろう。しかし上記のノブにはすべてのシンセ・パラメーターの中から好きなものを自由にアサインすることができ(1つのノブに複数のパラメーターをアサインすることも可能)、外部からのコントロール・ソースでもすべてのパラメーターをコントロールできるので、その辺りはうまくフォローできるだろう。


本機はコスト・パフォーマンスが高く10万円以下で手軽に入手できることもあり、どちらかというとこれからR&B/ヒップホップ系のトラックを作りたいという入門者に特にアピールできそうだ。とはいえ、"音色のバリエーションを増やしたい""Mo'Phattのユニークな機能を使いたい"という上級者にも十分対応できるだろう。



▲リア部。左からMIDI IN、OUT、THRU端子、MAIN LR端子が並ぶ。パラアウト用にアナログ出力端子は4つ増設可能。このほかにS/P DIFのデジタル出力端子(コアキシャル)、MIDI IN、THRU端子がそれぞれ増設可能だ


E-MU
Mo'Phatt
99,800円

SPECIFICATIONS

■マルチティンバー数/16
■最大同時発音数/64
■サウンド・メモリー/32MB
■拡張メモリー/ウェーブ・エクスパンション・スロット×2+フラッシュ・メモリー・スロット
■データ・エンコーディング/非圧縮16ビット・リニア
■DAコンバート/20ビット(メイン・アウト)
■ダイナミック・レンジ/>90dB
■SN比/>92dB
■周波数特性/20Hz〜20kHz(+2/−1dB)
■最大出力レベル/+4dB
■外形寸法/482.6(W)×44(H)×215(D)mm
■重量/3.1kg