低価格ながら、的を絞った機能とコンパクトさが受けているDr.Sampleシリーズの最新機、SP-303が登場した。最近のサンプラー、ハード・ディスク・レコーダーはひたすらハイスペック、ハイサンプリング化を推し進めているが、本格的なスタジオ・ワーク以外ではそのスペックを活かし切ることが難しいのも事実。特に、クラブの現場でのDJプレイやライブ・パフォーマンスにおいて、最も重要なのは"すぐ音が出る""置き場所を選ばない"この2点なのだ。そこを見事に突いて大ヒットした前機種SP-202と比較しつつ、新たな機能や魅力を探ってみよう。
リサンプリングが使えるので
エフェクターをより生かせる
筆者も愛用しているSP-202と比べて、まず目に付く大きな変更点はシルバーの金属素材になったメイン・パネル。プラスチックの一体成形だったSP-202より高級感がアップしている。しかし全体的なレイアウトは変わらず、ボタン、ツマミの配置もほぼ同じなのでSP-202ユーザーは違和感無くすぐオペレートに入れるだろう。新たに加わった数々の新機能も、分かりやすいボタンのネーミングによってほとんどマニュアルを読まずに操作できた。ではその新たな機能を実際に使用しながら具体的に解説していこう。
まずエフェクトの数が大幅に増えた。SP-202では基本的なエフェクトのみだったが、SP-303では全26種類。今やDJの必須アイテムになったアイソレーターや、レゾナンスにオーバードライブまで付いたフィルター、ビット数を落とすLO-FIなどなど、この手のサンプラーを使うユーザー層が欲しいであろうエフェクトが網羅されている。そしてSP-202同様、EXT SOURCEボタンを押すとサンプリング入力に接続された音がスルー状態になり、単体のリアルタイム・エフェクターとしても使用できるのが超便利。EQすら付いてないシンプルなDJミキサーでも、アウトをSP-303につなぐだけでトリッキーな効果をDJプレイに加えることができる。そういうクラブでの使用を考えて、入出力が一般的なDJミキサーと同じステレオRCAピン・タイプになっているのも細かい配慮だ。クラブに必ず変換プラグが置いてあるとは限らないからね。そういった意味では、すべて自照式のボタンもクラブやステージの暗がりでの使用に大変助かるものだ。
さらにちょっとすごいと思ったのがVINYL SIMというアナログ・レコードのシミュレーター。プチプチ音を加えるだけでなく、アナログ盤特有のコンプ感や、回転ムラまで調節できる。CDからサンプリングしたクリア過ぎるブレイクビーツにかけたりするのはもちろん、古いレコードとCDを交互にかけるDJなど、これで違和感なくつなげられるだろう。さらにSP-202には無い機能として、これらの多彩なエフェクトをサンプルにかけた後、その音のまま再度サンプリングできるリサンプリング機能がある。もちろんすべて内部でデジタルのまま行われるので、音質の劣化も無い。これによって1系統の内蔵エフェクターを使い回すことができ、1台でさまざまなエフェクトのバリエーションが楽しめる。
サンプリング・メインの曲なら
1台で制作が可能
そして極めつけがパターン・シーケンサーの搭載。いわゆるリズム・マシン的なものだが、簡単な編集やクオンタイズ機能も備えている。これによってサンプリング・メインの曲ならSP-3031台でトラック制作が可能になった。そうなると作った曲は当然保存しておきたくなるワケで、SP-303では記憶媒体としてスマート・メディアを採用。8〜64MBのカードを使用でき、64MBのカードを使った場合最大約200分ものサンプリングを保存することが可能になっている（本体のみでは最大3分12秒まで）。もちろん、シーケンサー部のパターン情報も一緒にセーブされるので、作った曲をいつでも再現できる。さらにそのスマート・メディアを通じてパソコンのWAV/AIFFファイルも読み込むことが可能なので音ネタはまさに無限だ。そのほかにもサンプルのピッチを変えずに長さ（テンポ）を変更できるタイム・モディファイ機能や、ちょっとした効果音が作れるノイズ・ジェネレーターなど、もう至れり尽くせりの機能が追加されていて3万円台という価格は驚きだ。
エフェクター＆サンプラーとしてDJが現場で使うのはもちろん、ヒップホップ等のサンプル重視のトラック制作をロー・コストで行うには最適。簡単なシンセ音源1台しかないDTMユーザーなどもリズム用サンプラーとしてSP-303を併用すれば、曲の完成度が一気に上がるであろう。
SPECIFICATIONS
■最大同時発音数／8音
■インターナル・メモリー／サンプル16（8サンプル×2バンク）、パターン16（8サンプル×2バンク）
■メモリー・カード／サンプル16（8サンプル×2バンク）、バックアップ112（2バンク×7セット）、パターン16（8サンプル×2バンク）、バックアップ112
■サンプリング周波数／STANDARD＝44.1kHz、LONG＝22.05kHz、Lo-Fi＝11.025kHz
■インプット／ステレオRCAピン、MIDI IN
■アウトプット／ステレオRCAピン、ヘッドフォン（ステレオ標準タイプ）
■外形寸法／170（W）×241（D）×67（H）mm
■重量／850g
