手作り感覚が溢れるユニークなデザインのコンデンサー・マイクのシリーズ

Blue MicrophonesBlueberry/Dragonfly

BLUEというメーカーの5種類のマイクが、日本で発売になりました。今回は、そのうち2種類のマイクを試聴することができましたので紹介したいと思います。BLUEとは、BALTIC LATVIAN UNIVERSAL ELECTRONICSの略です。このメーカーで作られるマイクは、ユニークなデザインで知っている方も多いことでしょう(それにしても、BALTIC LATVIANとなっているし、マイクにはMade in Latviaとなっているから、もともとラトビア製なんでしょうね)。

共にフルディスクリート仕様の
単一指向性コンデンサー・マイク


今回チェックしたのは、BlueberryとDragonflyの2機種ですが、双方共に単一指向性コンデンサー・マイクになります。共に、純A級フルディスクリート増幅回路を採用し、48Vファンタム電源により駆動します。ダイアフラムは1インチの大口径のものを採用し、厚さ6μのマイラーフィルムに24金とアルミニウムを混合蒸着しています(Blueberryはトランス・カップリング、Dragonflyはトランスレスの出力)。


聞くところによると、BLUE社はネジ1本にいたるまで自社生産にこだわっているそうで、まさに手作り感覚が伝わってきそうです。ただしこの2つのマイクの外見は全く違うものになっており、Blueberryはシンプルなブルー・ボディのデザインで、Dragonflyはその名の通りトンボの目を印象付ける、マイク・カプセルとショックマウントを一体化した"羽を無くしたトンボ"のようなユニークな作りになっています。


外見はかなりの相違がありますが、共にレトロな懐かしさを覚えるデザインとなっていて、このメーカーのこだわりの1つとなっています。同社のWebページにも、"MicArt"というアート・ギャラリーのページがありますから、1度訪れてみても面白いと思います。なお、Dragonflyのマイク・カプセル部は角度を変えることができるので、マイキングの自由度が増します。


レトロな外見からは予想できなかった
ハイエンドの伸びたサウンド


さて、実際にチェックした感想を以下に述べていきましょう。まずSN比ですが、NEUMANNクラスのものと同等のレベルで問題ありません。強いて言うなら、ノイズの帯域がU87やAKG C414等と比べて"若干可聴帯域寄りかな"と感じるくらい。Blueberryはサスペンションの無いタイプですが、マイク・スタンドから伝わる低域の振動も予想以上に抑えられています(サスペンション付きのDragonflyと同レベル)。また双方共に単一指向タイプですが、指向性は比較的広いタイプとなっています。近接効果も意外に少なく、ある程度距離を変えても基本的なサウンドの帯域特性は変わりにくい特徴を持っています。


音色に関して言うと、両者からははっきりとした違いを感じることができます。この違いは、構成する回路の違い(トランス出力かトランスレス出力か)による傾向が強く出ており、トランス出力のBlueberryは少し中高域にくせを感じます。逆に、Dragonflyの方は少し中抜けのドライなサウンド・キャラクターを持ちます。厳密には違いますが、NEUMANN系のキャラクターがBlueberryで、AKG系がDragonflyといった感じでしょうか。双方とも、外見からサウンドもレトロ(甘い、抜けない)なものを予想しがちですが、ハイエンドはかなり伸びており、最近のマイクに見られる比較的エンハンスされた傾向にあります。 また、低域の特性は似た傾向で、ある帯域に少し膨らみを感じます。とはいえ、前述のように近接効果のあまり出ないマイクなので、比較的オンでマイキングしてもカブリを意識せずに録れます。


サウンド・キャラクターからみても、ボーカルにはBlueberryが合うケースが多いでしょう。別売の鉄製ポップ・ガードも本体を意識したしゃれたデザインで、歌う気にさせてくれるのではないでしょうか。また、Blueberryはオフにマイキングしてもその帯域特性がバランス良く残っているので、指向性の比較的広いことも考慮するとストリングスのパート・マイクにも合いそうです。倍音を生かしたい、あるいは倍音を多く含む音源にも適しているのではないでしょうか。


Dragonflyは、パーカッション/ピアノなどと相性が良いでしょう。しかも、比較的タイトに録りたい場合に良い結果が生まれそうです。大口径ダイアフラムを使用している割には音像が崩れにくく、積極的にオンのマイキングを楽しめるマイクと言えます(オフマイクとして使うのはあまりお薦めできません)。ただ1つ気になるのは、マイク・ケーブルの荷重でサスペンションがゆがみ、安定性が悪くなることです。フック状のホルダーがあれば問題無いのですが、要改善といったところでしょうか。


Blueberry、Dragonflyともに市場実勢価格は10万円台ということですが、最近多く見られる数万円クラスのものとは明らかにレベルが違い、デザインに負けない中身を備えたマイクと言えるでしょう。


Blue Microphones
Blueberry/Dragonfly
165,000円

SPECIFICATIONS

●Blueberry(オープン・プライス)
■指向性/単一指向
■周波数特性/22Hz〜20kHz
■出力インピーダンス/150Ω
■推奨負荷インピーダンス/>1,000Ω
■感度/21mV/Pa、+/−1dB
■最大入力レベル/133dB(THD0.5%)
■外形寸法/45(W)×235(H)×30(D)mm
■重量/620g
●Dragonfly(オープン・プライス)
■指向性/単一指向
■周波数特性/20Hz〜20kHz
■出力インピーダンス/50Ω
■推奨負荷インピーダンス/>1,000Ω
■感度/20mV/Pa、+/−1dB
■最大入力レベル/132dB(THD0.5%)
■外形寸法/45(φ)×235(H)mm
■重量/640g