優れた基本性能を誇るプロフェッショナル用デジタル・コンソール

SONYDMX-R100

SONYのデジタル・コンソールと言われて、まず思い出すのはOXF-R3です。OXF-R3は業務用の大型デジタル・コンソールで、音質や操作性などにおいてとても高い評価を得ています。日本ではまだ導入されている台数が少ないようですが、海外ではよく知られているデジタル・コンソールの1つです。そして、このOXF-R3の技術をフィードバックし、開発されたのが今回紹介するDMX-R100です。だいぶ前から発表はあったものの、なかなか発売されず非常に気になっていたのですが、かなり完成度の高い製品のようです。

何と今回はこのコーナー始まって以来の4ページ! こんなサンレコ史上に残る記念すべき原稿を、私なんかが書いていいのだろうか?などと思いつつ、字数の許す限り、なるべく細かく見ていきたいと思います。

タッチ・パネル式カラーLCDと
チャンネル・ストリップを併用


まず本機の基本仕様をざっと書き出してみると、
●24ビット/96kHz対応
●48ch+8AUXリターンの合計56インプット
●8MTRバスと8AUXセンド
●タッチ・パネル式カラーLCDとパラメーター設定パネル、チャンネル・ストリップの併用による高い操作性
●24ch+1Masterの合計25本のタッチ・センス・フェーダーを装備
●1〜48chのインプットとPGM、MTR、AUXの各アウトプットにダイナミクス/イコライザーを内蔵
●オプション・スロットを4つ装備し、さまざまなフォーマットの外部機器に対応
●タイム・コード・ベースのオートメーションとスナップ・ショットの搭載
●5.1chサラウンドに対応
●ビデオ・シンク端子やソニー9ピン・リモート端子の装備による映像機器への対応
といったように、スペックだけでもプロの現場での使用を意識した高い基本性能を持っていることがよく分かります。外見は想像以上の大きさで、重量も52kgとかなり重く、サイズもYAMAHA 02Rの幅に比べると2倍近くあります。フロント・パネルには、左側からチャンネル・ストリップ、LCDパネル/パラメーター設定パネル、オートメーションやトランスポート・コントロール部が、比較的余裕のある状態で配置されています。

充実した入出力を装備し
外部機器との同期に完全対応


まずは、音声信号の入出力周りから細かく見ていきます。本機は標準の状態で、アナログ24チャンネルの入力を装備しています。1〜12の入力はXLRのバランス入力とTRSフォーンによるバランス入力の2系統を装備し、インプット・セクションにあるスイッチによって切り替えることができます。またこのセクションには、インサート・ケーブルを使用して外部のアウトボードを接続できるインサート端子と48Vファンタム電源も装備されています。13〜24の入力はライン入力1系統のみですが、XLRとTRSフォーンのコンボ・タイプなのでどちらの接続にも対応可能です。AUXセンドはTRSフォーンによるアナログ・アウトが8系統用意されていますが、5〜8に関してはXLR端子によるAES/EBUアウトも装備されているので、デジタルで外部エフェクターに出力することができます。AUXリターンは1〜4がアナログ入力、5〜8がAES/EBUのデジタル入力になっているため、8系統をフルに使う場合はデジタル/アナログを併用した接続となります。そのほかには、PGM(マスター)用のアナログ(XLRとTRSフォーン)、デジタル・アウト(AES/EBU)、マスター・レコーダーの出力をモニターするための2TR INがアナログ/デジタルのそれぞれ1系統、スタジオ側のプレイバック・モニターへ出力するSTD MONITOR、そして5.1chサラウンドのモニター環境に対応するための6系統のCR MONITORなどが装備されています。MONITOR端子には市販のコンピューター用ディスプレイを接続すれば、LCDパネルの画面と同じ内容を表示することができます。KEYBOARDとMOUSEの端子は、一般的なPC用のキーボードとマウスを接続することにより、名前の入力やマウスとタッチ・パネルを併用したオペレーションが可能になります。SERIAL端子とUSB端子も装備されていますが、これは将来のバージョン・アップのための拡張用端子で、現在のバージョンでは未サポートとなっています。同期関係の入出力では、ワード・クロックIN/OUT(ターミネート・スイッチ付き)とビデオ・リファレンスIN(ループ・スルー端子とオート・ターミネート機能付き)を装備しています。オプション・スロットからのクロックにも対応しているので、それらはセットアップ・ページで自由に選択することができます。オートメーションを動作させるために必要なタイム・コードの入出力は、通常のLTC以外にMTC専用のMIDIポートが装備されています。MIDI端子は、MTC専用ポート以外にIN/OUT/THRUがあり、本機からMMC対応の機器をコントロールしたり、本機のパラメーターをMIDIシーケンサーなどを使い、コントロール・チェンジ・メッセージで制御することができるようになっています。ただ、本機には高性能なオートメーションが内蔵されているので、パラメーターをコントロールするというよりも外部機器のトランスポート・コントロールといった使い方がほとんどでしょう。9ピン・リモート端子は2つ装備されていて、対応しているビデオ機器をコントロールすることができます。本機ではこのようなマシン・コントロールの設定が6台まで登録でき、必要に応じて切り替えて使用できるようになっています。

マトリクス・スイッチャーで
入出力端子を自由に接続


●7種のオプション・ボード
そして本機の豊富な入出力を活用するのに不可欠なのがオプション・スロットです。現在用意されているオプション・ボードは次の通りです。
・8チャンネル・アナログ・ライン入力基板(DMBK-R101/XLR仕様の+4dB基準A/Dボード)
・8チャンネル・アナログ・ライン出力基板(DMBK-R102/XLR仕様の+4dB基準D/Aボード)
・8チャンネルAES/EBUデジタル入出力基板(DMBK-R103/XLR仕様。サンプリング周波数は、88.2/96kHzにシングル・ワイアーで対応)
・8チャンネル・サンプリング・レートDIコンバーター基板(DMBK-R104/サンプリング・レート・コンバーターを内蔵した、AES/EBUとオプティカルS/P DIFによるデジタル入力ボード)
・8チャンネル・インサーション基板(DMBK-R105/アンバランスのアナログ信号によるインサート用基板。本体に1枚のみ使用可能)
・ADAT用インターフェース基板(DMBK-R106/8チャンネルADATオプティカル・ボード。88.2/96kHzでは使用不可)
・TDIF用インターフェース基板(DMBK-R107/8チャンネルTDIFボード。88.2/96kHzでは使用不可)以上7種類のオプション・ボードがあり、現在一般的になっているフォーマットもひと通りカバーされています。もちろん、アナログ/デジタルの混在や異なるフォーマットの同時使用が可能なので、これらを最大4枚まで組み合わせて使うことができます。また、本機のボードは02Rのボードと比較するとサイズが大きめです。そのためアナログ・ボードやAES/EBUのボードは、D-Subなどのマルチコネクターなどを使わずに、ボードに直接XLRプラグを挿せます。マルチコネクターの場合、相手の機器と8チャンネルまとめて接続するときは便利で良いのですが、8チャンネルのボードの中で接続する機器を分けたい場合(例えば8チャンネルAES/EBUボードを使って4台のエフェクターをデジタル接続したいときなど)は、本機のようなボードに直接コネクターを搭載したタイプの方が有利です。●マトリクス・スイッチャー
こういったボードのほかに、もう1つ本機の入出力を活用するのに欠かせない機能があります。AUDIO INPUT ROUTING(P248/画面①)とAUDIO OUTPUT ROUTINGです。これは4つのオプション・スロットを含む本機のすべての入出力端子を内部で自由にパッチできるマトリクス・スイッチャーです。オプション・スロットに8チャンネル・インサーション基板を装着している場合のインサート・ポイントの設定もここで行えます。具体的な使い方としては、シンセやサンプラーの出力、MTRやマスター・レコーダーの入出力、エフェクターなどをすべて本機に接続しておいて、実際の作業では必要に応じてAUDIO INPUT ROUTINGで任意のチャンネルにアサインすれば、いちいちケーブルをつなぎ替える必要もなくなります。▲画面① 入力マトリクス・スイッチャー。ここでは、アナログ/デジタル/オプション・ボードからの入力を自由に設定可能 またこのようなセットアップ的な使い方以外に、バスでまとめたリズム・トラックをAUXから出力し、アナログのコンプをかけて本機のアナログ・インプットに戻すといったことも簡単に設定できます。1つの入力を2つの異なるチャンネルにアサインしたり、その逆もできるので、1トラックを曲中で作り変えたり、ブレイクビーツを2つのチャンネルに立ち上げイコライザーで帯域を分けるなどという設定も手元で簡単にできます。PGM、MTR、AUX SENDの各バスにはデジタルIN/OUTを使ったインサートも可能で、PGMバスに外部のマルチバンド・コンプレッサーをインサートしたり、ノーマライズ処理をすることができます。今までのデジタル・コンソールでは、外部エフェクターのインサートが難しかっただけに、より操作の幅を広げてくれると思います。●88.2/96kHz対応
本機はサンプリング周波数88.2/96kHzに対応していますが、このモードの場合44.1/48kHz時と比べると幾つかの制限があります。主なものは、
・入力チャンネル、AUXリターン、MTRバス、インサーション・センド、ダイレクト・アウトの各チャンネル数が半分に減少
・AUXセンドの数が8チャンネルから2チャンネルに減少
・サラウンド・モードの使用不可
となっていて、オプション・ボードも前述のように動作しないものや一部機能が制限されるものがあります。単純に考えても、DSPを含めた全体の処理が2倍になるわけですから、この辺りは仕方ないかもしれません。ただせっかくの88.2/96kHzモードでサラウンド・モードが使えなくなってしまうのは、ちょっと惜しい気がします。

タイム・コード・ポジションで
スナップ・ショットを記録/再生


●スナップ・ショット
スナップ・ショットは、インプット・セクションとシステム・パラメーター以外の設定を最大99個記憶することができる機能です。ほかのデジタル・コンソールにも当然のように装備されているものですが、本機の特徴はスナップ・ショットの記憶/再生とタイム・コードの時間情報を関連付けている点です。フロント・パネル右側にあるスナップ・ショットのセクションにTC LINKというスイッチがありますが、スナップ・ショットを記憶するときにこのスイッチを押しておくと、パラメーターの設定と同時にそのときに入力(出力)されているタイム・コードのポジションも記憶します。そしてタイム・コードの再生時にTC LINKをONにしておけば、記憶したときのポジションに沿って、スナップ・ショットが再現されるというわけです。タイム・コード・ポジションは自動的にキューに登録され、キュー画面で表示されます。細かいタイム・コード・ポジションの変更もこのキュー画面で可能です。TC LINKをOFFにしておけば、タイム・コードの時間情報を含まない通常のスナップ・ショットとしても使用することができます。オートメーションは比較的シンプルな構成ながら、必要な機能はそろっています。オートメーション・データのオフライン編集などの機能は持っていませんが、その分ベーシックな部分がしっかり考えられているという印象です。パラメーターもフェーダー、パン、ミュート、AUXセンド、ダイナミクス、イコライザーなど、ミックス時に必要と思われるパラメーターはすべて記憶/再生が可能です。

ロー/ハイエンド共によく伸び
とてもすっきりしたクリアな音


ここからは通常作業するときの流れに沿ってセット・アップを行い、音質なども含めながら機能および操作性を見ていきたいと思います。今回は本機をデジタル・マグネットに持ち込み、Pro Toolsとのアナログ接続およびAES/EBUによるデジタル接続でチェックしました。電源を入れると、まずはタイトルをロードするか新しいタイトルを作成するかが表示されます。本機では1曲分のミキシング操作に関するデータ(スナップ・ショット・データ、オートメーション・データ、サンプリング周波数、タイム・コードの設定など)をタイトルと言います。ここで本機のメモリー構成を説明しましょう。タイトルのセーブ先は内蔵のフラッシュ・メモリーかフロッピー・ディスクのどちらかが選べますが、通常はフラッシュ・メモリーを使用することになると思います。このフラッシュ・メモリーには10個のタイトルが保存でき、容量がいっぱいになればフロッピー・ディスクにバックアップを取ることも可能です。必要に応じて、それらにセーブされたタイトルをRAMに呼び出して作業するわけですが、本機ではそのRAM上に呼び出して作業をしているタイトルをカレント・タイトルと呼んでいます。注意しなければならないのは、カレント・タイトルのオートメーション・データやスナップ・ショットのデータは、単にRAM上にキープされているだけということです。この状態で誤って電源を落としてしまうと、せっかくのデータが消えてしまいます。そういった事故を防ぐためにも、タイトル・メニューで頻繁にKEEP操作をして、フラッシュ・メモリーやフロッピー・ディスクにセーブしておいた方がいいでしょう。サンプリング周波数、タイム・コード、同期信号の設定を行ったら次はAUDIO INPUT ROUTINGとAUDIO OUTPUT ROUTINGの設定をします(画面①)。デフォルトの状態では1〜24チャンネルにはアナログ・インプット、それ以降のチャンネルにはスロット番号の若い順にインプットがアサインされ、MTRバスは対応するスロットすべてに1〜8がアサインされます。この辺りの設定はタッチ・パネルで操作するのがほとんどですが、慣れると快適に操作できます。これで音出しの準備が完成です。まずは、アナログ・インプットにさまざまなソースを入力し、A/Dの音質を聴いてみました。とてもすっきりしたクリアな音で、ちょっとAPOGEEのコンバーターに近い印象を受けました。ローエンド、ハイエンド共によく伸びています。自分でミックス・ダウンした2ミックスを聴いたときに、ちょっとボーカルが引っ込んで聴こえるかな?とも思いましたが、好みの問題という気もします。SONYの音というと個人的にはPCM-3348の印象が強いのですが、それとはまた違った現代的な音という感じがしました。本機には24チャンネル分のチャンネル・ストリップ部が装備されていますが、ここでコントロールするチャンネルを切り替えるのがPAGEセクションです(画面②)。1〜24、25〜48、MASTERの3つに分かれており、24チャンネルごとの切り替えになっています。MASTERはAUXセンド・マスター、MTRバス・マスター、AUXリターンとして使用することができます。▲画面② チャンネル・ストリップ部のコントロール・チャンネルを切り替えるためのPAGEセクション。24チャンネルごとに表示 また、フェーダーとパンポットは通常の機能のほかに、AUX1〜8のセンド、MTRバスのセンド、トリムの各ボリュームをコントロールすることができます。フェーダーにAUXセンドをアサインすれば、センド・ボリュームをオートメーションに記憶させたいときなどに便利でしょう。隣り合ったチャンネルでペアを組めるほか、フェーダー、ミュートを合わせて8つまでグループを組むこともできます。

コンプ/ゲートの同時使用可で
幅広い効果を持つダイナミクス


続いてダイナミクスとイコライザー/フィルターです。本機のダイナミクスは、よくあるコンプレッサーとゲートを切り替えるタイプではなく、コンプ(またはダッキング)とゲート(またはエクスパンダー)の同時使用が可能です。両者を同時に使うことは実際の作業ではよくあることなので、これは非常に助かります。●ダイナミクス
ダイナミクスのインサート・ポイントも、PRE EQ/POST EQを選べるようになっています(画面③)。音の方はというと、これがまたとても良い! レベルを均一にする自然な効果から、きつめのコンプ・サウンドまで幅広い効果が得られるようになっています。特にGAINを右いっぱいに回してAUTOにすると、レベル・マキシマイザー的な効果が得られ、THRESHOLDとKNEEの設定でアナログ・コンプに思いっきり突っ込んだ際のオーバーコンプレッションのような音作りも可能です。▲画面③ ダイナミクスの設定画面。インサート・ポイントはPRE EQ/POST EQの選択が可能で、ゲートにはKEY INも装備している ゲートもパラメーターが細かく用意され、KEY INも装備しているので狙った効果はほぼ作り出すことができるでしょう。とにかく本機のダイナミクスは良くできています。個人的にはこの部分だけでも買いのような気がします(ちょっと言い過ぎでしょうか!?)。●イコライザー/フィルター
イコライザー/フィルターは4バンドのパラメトリック・イコライザーとローカット/ハイカットのフィルターを組み合わせた構成になっています。バンドごとにON/OFFスイッチがあり、イコライザーのLF、HFはピーキングとシェルビングの切り替えが可能です。また、サンプリング周波数が88.2/96kHzのときはLF、HFの周波数帯域がそれぞれ39.8kHzと42.2kHzに広がり、ハイカット・フィルターも42.2kHzとなります。ブースト/カット量は±20dBと可変幅も広いので、積極的な音作りができるでしょう。イコライジングのカーブもLCDパネルに表示されるので、どのような設定になっているか、視覚的にも確認できます。実際に操作してみると、SSLのEQに近い印象がありました。SSLのEQは日ごろから使い慣れているので、同じような感覚で使えるのは非常にうれしいです。ただ、NEVEのVRシリーズのようなEQに慣れている方にはちょっと違和感があるかもしれません。このダイナミクスとイコライザー/フィルターのセクションをエディットする際には、パラメーター設定パネルを使うことになりますが、ほかのパネルには、バス・アサイン、AUXセンドなどチャンネルに含まれるほとんどのパラメーターがツマミやスイッチで配置されており、アナログ・コンソールのモジュールと同じ感覚で操作できるようになっています。02Rにも同じ機能がありますが、本機はダイナミクス部分のコントロールも可能であるということを考慮すると、操作性はより高いと言えるでしょう。

タイム・コード・ベースの
便利なオートメーション機能


次にオートメーション部分をチェックしてみましょう。本機のオートメーションはタイム・コード・ベースのため、レコーダーからタイム・コードを出力しそれに追従してオートメーションを走らせるのが基本ですが、本機のタイム・コード・ジェネレーターにはEMULATE MTRというモードがあり、ジェネレーターを仮想MTRとしてトランスポート部でコントロールすることができます。このモードだと、レコーダーがタイム・コード(LTCまたはMTC)にチェイスする機能さえ持っていれば、MMCの設定などをしなくても手元でトランスポート・コントロールが可能です。そこで、今回はこのモードを使ってPro Toolsをコントロールしてみました。ここでは、本機の特徴であるタッチ・センス・フェーダーを使ったオートメーションを中心に見ていきたいと思います。●タッチ・センス・フェーダー
まず、カレント・タイトルにあるオートメーション・データをクリアします。本機はオートメーションを記憶/再生するパラメーターやチャンネルを細かく設定できるので、もしオートメーションから外したい項目があれば、あらかじめ設定しておきます。次はオートメーション部でABSを選択し、タッチ・パネルのMASTER DROP INをONにします。これでトランスポート部のPLAYを押してタイム・コードを走らせれば、オートメーションの書き込みが始まります。このように書き込んだデータを元に修正をしていくわけですが、ここからがタッチ・センス・フェーダーの本領発揮です。普通のムービング・フェーダーでは、フェーダーを動かす前にパンチ・インして書き込みが終わったらパンチ・アウトするという作業が必要ですが、タッチ・センス・フェーダーの場合、フェーダーにさわったら書き込み、放せば前のデータに戻るという動作になるため、よりフェーダーの操作に集中できるようになっています。また、前のデータに戻るオート・リターン・モードも、指定したフレーム数で戻るRAMPや次のイベントまで書き込みを続けるHOLD TO NEXTなど状況に合わせて、4つのモードから選択できます。フェーダー・モードも絶対値を書き込むABSと前のデータに相対値で書き込むTRIMの2種類があるので、オート・リターン・モードとの組み合わせでストレスのない快適なオートメーション操作が可能でしょう。

タッチ・パネルに直接触れて
サラウンド・パンを自由に設定


●サラウンド・モード
最後にサラウンド・モードにも触れておきたいと思います。本機をサラウンド・モードに切り替えるためには、MISC SETUP画面のMTR BUS MODEをSURROUNDにします。するとMTRバスがサラウンドのアウトプット・バスに切り替わり、INPUT/PAN/ASSIGN画面のサラウンド・パン・セクションが有効になります。MTRバスとサラウンドのアウトプットの関係は以下のようになっています。
・MTR1バス→L ・MTR2バス→R
・MTR3バス→C ・MTR4バス→SW
・MTR5バス→LS ・MTR6バス→RS次はMONITOR画面でモニター・モードをサラウンドにします。CR OUT1〜6が有効になり、先ほど設定したMTRバスのアウトプットがCR OUT1〜6に出力されるという仕組みです。サラウンド・パンの操作は、サラウンド・パン・セクションの表示/操作エリアで行います(画面④)。この表示エリアに直接指でタッチしながら、自由にサラウンド・パンの設定をすることができます。もちろんパンの動きはオートメーションに記憶させることができるので、複雑なパンニングを行うことも可能です。▲画面④ サラウンド・パン・セクション。右側のエリアに直接指で触れるだけで、自由にサラウンド・パンを設定することができる ひと通り本機を試してみて感じたことは、先行のデジタル・ミキサーをよく研究しているということです。今までのデジタル・ミキサーで惜しいと思っていた部分が見事にカバーされています。また、OXF-R3の評価が高いのも本機を見ていると分かるような気がします。細かいところでは、改善の余地がまだあると思いますが、ベーシックなハードウェアはしっかりしているので、システムのバージョン・アップなどで解消できる部分だと思います。本体のみの価格が2,000,000円ということを考えると個人で導入するようなものではないと思いますが、スタジオということであればその内容から考えても決して高いと言い切れるものではないと思います。正直言って自分のスタジオにも欲しいと思ってしまいました。

▲DMBK-R101



▲DMBK-R102



▲DMBK-R103



▲DMBK-R104



▲DMBK-R105



▲DMBK-R106



▲DMBK-R107



▼写真はオプション・ボードのDMBK-R101/R102/R103/R104が挿さっている状態

SONY
DMX-R100
2,000,000円

SPECIFICATIONS

■周波数特性/20Hz〜20kHz、±0.2dB(ライン)、20Hz〜20kHz、±0.3dB(マイク)
■全高調波歪率/0.01%、+4dBs、1kHzにて(ライン)、0.1%、−4dBs、1kHzにて(マイク)
■ノイズ・レベル/−104dBu、600Ω終端にて/−80dBu、4dB基準(ライン)、−126dBu、150Ω終端にて(マイク)
■クロストーク/90dB、1kHzにて
■ダイナミック・レンジ/104dB(ライン)
■AD/DA/24ビット、128倍オーバー・サンプリング
■入力インピ−ダンス/インプット:4.7kΩ(IN A1-12)、10kΩ( IN B1-12、LINE IN 13-14、2TRIN 1L/R、AUX RET 1-4)
■出力インピーダンス/150kΩ
■遅延/2.5ms、Fs=48kHz
■外形寸法/1197(W)×267(H)×690(D)mm
■重量/52kg