1Uにリミッターとデジタル・アウトまで搭載した8chマイク・プリアンプ

PRESONUSDigiMax

PRESONUSの製品ラインナップには好評のコンプレッサー機能を軸にして、2chマイクプリとの一体型や8ch仕様の2Uモジュールなど、MTRへのダイレクト・レコーディングに便利な機材が並んでいる。今回紹介するDigiMaxもその延長線上の製品と言え、デジタル機器へのダイレクト接続を可能にするために各種デジタル出力端子を標準装備しているのが特徴だ。

各種デジタル出力を標準装備
外部クロックにも手軽に同期可能


DigiMaxはひと言で言えば"リミッターとデジタル出力を装備した8chマイクプリ"となる。上位機種の8chマイクプリM80が2Uだったのに比べると本機は1Uで実にコンパクトな設計だ。それでいてアルミニウム・パネルは適度に重量感もあってプロ機器の雰囲気。ただし専用の電源が外部接続で、これが厚みは1U、幅が1/3サイズ。故に本機を3台そろえて24ch分マウントすると、電源を含め4Uラックに収まることになる。


入力は8chすべてにXLR端子を用意。0〜60dB のゲインを持つマイク入力で、−20dBのPADスイッチ付きなのでドラムへのオン・マイクにも十分対応できる。さらに全チャンネルに+48Vファンタム電源を装備しコンデンサー・マイクも接続可能。またch1/2にはHi-Z入力(フォーン)も用意され、ギターやベースを直接挿すこともできる。ここにはフェイズ・スイッチも装備されているので、例えばベースのライン信号とアンプに立てたマイク信号との位相合わせなども簡単に行える。


出力はアナログ/デジタルの両方を備え、同時使用も可能。アナログ出力はフォーンのバランス・タイプで、MTRやミキサーの入力部に接続するのに都合が良い。デジタル出力は24ビット対応のADATオプティカルに加え、D-Sub9ピンも標準装備。ここにオプションの変換ケーブルを挿せばAES/EBUでの出力が行え(出荷時の設定)、さらに内部ジャンパーの設定でS/P DIFにも切り替え可能となっている(S/P DIF用の変換ケーブルが必要)。またBNCのワード・クロック・アウトのほかにワード・クロック・イン端子も装備しているため外部クロックへの同期もでき、スイッチによる内部/外部の切り替えがワンタッチで行える。外部クロックが入力されていない場合はLEDの点滅で教えてくれるのが親切だ。本機の性格上、外部への同期状態で使うケースが多いと思うので、この辺りの配慮はうれしい。


また8chすべてに簡易リミッターも内蔵されている。調整できるパラメーターはスレッショルドのみで、ゲイン・ツマミ外側のリングで行う。かかり具合はLIMITのLEDで確認でき、CLIPを監視するLEDもすぐ脇にあるのでかなり素早いレベル設定が可能だ。さらに簡単な音質補正用にENHスイッチも装備。これは"中域が削られ、逆に高低域はブースト"といういわゆるラウドネス・スイッチのような特性のプリセットEQをワンタッチでオン/オフできるものだ。


クリアで抜けのいい音色は
特にボーカル系に好印象


今回は本機の1/8程度の価格帯のモノ仕様のプリアンプと比べてテストした。コンデンサー・マイクを使い、まずはボーカルや生ギター等を単体HDRへ録音してみたのだが、やはり本機のADATオプティカル端子でデジタル入力したサウンドが一番クリアで抜けが良かった。特にボーカルにマッチした音色に感じられ、リアリティある音像が前面にくっきりと再現できる。さらにリミッティングの具合もやはりボーカル系に向いた効き方のようだ。スレッショルドを下げて深めにリミットしても声が遠のくこともなく存在するので安心してピークを抑えられる。


今回のテスト環境ではリズム系との相性はいまいちだったが、マイクの種類が変わるとマッチングも違ってくるので、別の環境でも使い込んでみないとこの辺は判断できないと思う。とにかくデジタル接続で使ったときの音抜けは素晴らしいので積極的にデジタル出力を使うのがお薦めだ。また音質補正用のENHスイッチに関しても、筆者の環境ではピンと来なかった。低域がかなりブーストされるので逆に抜けの悪い音に感じたからだと思う。ただ経験上、録音時にある程度の低域を補っておかないとミックスだけでは補正しきれない音源も存在するので、そんな場合にこのスイッチを使うといいのかもしれない。


ライブ収録はもちろん
CPUベースの録音にも最適


例えば練習スタジオでのバンド演奏をMTRに録ろうとプランを練っても、いざ8ch分のマイクプリをそろえるとなるとこれが意外に大変。"ちょっと録ってみようか"ぐらいの気持ちで始めても機材が大がかりになってしまうのであきらめたという人も多いだろう。本機は、まさにそんなときにピッタリの機材であり、とにかくレベルだけは合わせて録り込んでしまうという状況にはうってつけ。特にデジタルMTRとシステムを組めばワイアリングもスマートに行える。この場合、アナログ出力はそのままPA用に使えるのでセッティングもシンプルで済むのがいい。


また、本機のデジタル出力は単体MTRだけでなくCPUベースの録音にも活躍する可能性を持っている。ADATオプティカルの入出力端子を持つサウンド・ボードにダイレクトにつないでミキサー無しでシステムを組むなどということも可能なのだ。この場合、入力信号のアサインはHDRソフト内で自由に設定可能なので、マイク類は挿しっぱなしでも次々に録音してゆけるのが便利。サウンド・ボードで問題になりがちなレイテンシーも、本機のアナログ・アウト側をモニターすることで回避することができる。


従来の8chマイクプリの場合、どうしても価格的な部分がネックになって購入層もかなり限られていたように思う。しかし本機の場合は各種デジタル出力を装備したことで8ch仕様のメリットがより大きくなった。1Uというコンパクト・サイズと相まって、アマチュアにも大変魅力のある製品に仕上がっているのだ。



PRESONUS
DigiMax
248,000円

SPECIFICATIONS

■チャンネル/8
■入力/XLRバランス×8(入力インピーダンス1.3kΩ、+48Vファンタム電源装備)、Hi-Z×2(ch1とch2のみ、フォーン、入力インピーダンス1MΩ)、ワード・クロック(BNC)
■出力/フォーン・バランス×8、ADATオプティカル×1、D-Sub9ピン×1(オプションの変換ケーブルでAES/EBUステレオ4ペアまたはS/P DIFステレオ4ペアでの出力が可能)、ワード・クロック(BNC)
■サンプリング・レート/32/44.1/48kHz
■全高調波歪率/0.009%以下
■SN比/98dB以下
■電源/80W(エクスターナル/付属)
■外形寸法/483(W)×44(H)×178(D)mm
■重量/6.8kg
■オプション/D-Sub9ピン→AES/EBU変換ケーブル、D-Sub9ピン→S/P DIF変換ケーブル(各6,000円)