48ビット・プロセッシングDSP搭載のオーディオ用CD-R/RWライター

SONYCDR-W33

パソコン用の記録メディアとして一気に普及したCD-RとCD-RW。その一方で音楽録音用として、カセットやMDを超えた高音質録再が楽しめるコンシューマー用のCDレコーダーも人気だ。SONYから登場したCDR-W33は音楽制作用の業務用機ではなく、あくまでも後者に属する製品だが、そのプロフィールを見ていくと一般向けと言うより、録音マニアや音楽クリエイターたちを意識して開発された製品のように思われる。その魅力と実力のほどをチェックしていこう。

記録メディアは
CD-R/CD-RWに対応


コンシューマー用のCD-R/RWレコーダーは、録音機とメディア双方の販売価格に数%の私的録音補償金を上乗せすることで、音楽CDからのデジタル・コピーを第1世代に限り許可した。当初は割高感の強かった専用メディアも、ハードの普及と共に価格は大分下がってきている。投げ売り状態のパソコン用メディアに比べればそれでもまだ高いが、"音楽録音用"ということで一種の安心料だと思いたい。


本機で録音できるメディアは、その音楽録音用、あるいはコンシューマー用と明記されたCD-RとCD-RW。デジタル音源からは1世代のみのデジタル・コピーができるSCMSに対応している。SCMS以外で本機がコンシューマー仕様と認められるのは、ラック・マウント金具が着脱式で、普通に設置しても美観を損なわない点。シャッフルやプログラム、タイマー再生などの機能が備えられている点。リア・パネルがシンプルで、オプティカル/コアキシャルのデジタル入出力、およびRCAのアナログ入出力がそれぞれ1系統用意されているのみ、という点など。


では、民生機の"一線"を超えた部分はどこか? ここからが本題だ。本機に搭載されたADコンバーター、DAコンバーターはいずれも高精度な24ビット仕様。特にアナログで入力された信号に対しては、AD変換後に48ビット・プロセッシングDSPによるSBM(スーパー・ビット・マッピング)デジタル・フィルターが、本来は切り捨てられる下位8ビットに含まれる情報をもCDフォーマットの16ビット中に織り込むことで高品位サウンドを実現。さらに、デジタルEQとデジタル・リミッターによる高音質マスタリングも可能にしている。自分で制作した音源からCD-Rを焼くときなど、0dBまでレベル・メーターを振らせて記録しても、いわゆる音圧感が足りないことはよくある。プロのマスタリングでは、コンプレッサーやリミッター、EQなどが必須であることはご存じの通りである。


デジタルEQは、バス(50Hz〜1kHz)とトレブル(1〜12.5kHz)のローパス/ハイパス・フィルター。ミッド(100Hz〜10kHz)は、バンド幅が3段階に設定できるベル型カーブとなっている。いずれも、周波数とレベル幅(±6dB)の調整が可能だ。また、デジタル・リミッターの方はピークを0dBに固定して最大6dBまでゲイン・アップできるが、アタックやリリースなど細かな設定項目は無い。−20dBを超えた録音レベルに対して次第にソフト・クリップするようプログラムされており、高めの録音レベル設定でディストーションを付加する活用例もマニュアルには紹介されている。


これらの機能は設定値がディスプレイ表示されるだけで、単体コンプやパソコンのプラグインのようなグラフィカルな表示はない。ある程度、コンプなどの操作に慣れた人ならともかく、初めて扱うユーザーは多少戸惑うところかもしれない。グイグイいじって、音の変化をいろいろ体験していくのが上達への道だ。


緻密で切れが良く
温かみのあるAD/DA部


DATで生録したジャズ・トリオの演奏をアナログ入力して、実際に操作してみた。EQはレベルを最大にして音を聴きながら設定周波数を探し、ポイントが見つかったら適度に加減していく方法が間違い無い。リミッターの方は、録音レベル5〜6辺りで調整してみる。かなり細かなステップで音圧が上がっていき、+4.5dBを超えた辺りから確かにディストーションがかかってきた。録音レベルをさらに上げるとレベル・オーバーになったので、ソフト・リミッター的に機能しているようだ。両機能共にフロント・パネルのSBM/LIMITER/EQスイッチを切り替えることで、効果の効き具合がチェックできる。


SBMの方は、微小レベルでのリニアリティとSN比を改善する効果が大きいが、通常レベルの音楽ソースでも金管楽器の音の艶やベースの量感、シンバルのアタックなど、ポイントになりそうな部分に効いているのが確認できた。AD/DAは緻密で切れが良く、どちらかと言えば温かみのある音質傾向を備えており、DAT音源からもホットで音の太い、量感あるサウンドを引き出せた。この機能はアナログ入力にしか効かないのが残念だが、CDコピー用途から簡易マスタリングまで活用できてこの値段なら、そのパフォーマンスの良さは十分に納得できるはずだ。



▲リア部。左からアナログ入力/出力端子(RCAピン)、デジタル入力/出力端子(オプティカル)、デジタル入力/出力端子(コアキシャル)、コントロールS端子


SONY
CDR-W33
75,000円

SPECIFICATIONS

■再生可能ディスク/CD/CD-R/CD-RW
■記録可能ディスク/CD-R/CD-RW(音楽用)
■記録方式/トラック・アット・ワンス
■サンプリング周波数/32/44.1/48kHz
■周波数特性/20Hz〜20kHz(+3/−0.7dB)
■SN比/98dB(再生)/92dB(アナログ録音)
■ダイナミック・レンジ/98dB(再生時)/92dB(アナログ録音時)
■ワウフラッター/測定限界(±0.001%W.Peak)以下
■外形寸法/482(W)×88(H)×265(D)mm
■重量/4.6kg