簡単操作で多彩な効果が得られるギター・アンプ・シュミレーター

YAMAHADG-Stomp

モデリング技術の導入にいち早く踏み切り製品化したYAMAHAから、LINE6 PodやJOHNSON J-Stationを意識したであろう、コンパクトなボディのアンプ・シミュレーターが登場した。その名も"DG-Stomp"。あのDGシリーズの血筋を受け継ぐモデルだ。見た目から分かる通り、ライブでの使用をあらかじめ想定したフット・タイプ仕様のデザインが施されているのが、本機の特徴となっている。

スピーカー・タイプの切り替えで
音のキャラクターが決まる


冒頭では"アンプ・シミュレーター"と紹介したが、メーカー側のこのモデルの位置付けは、あくまで"プリアンプ"だ。単に歴代の銘アンプたちの音色を追い求めるだけではなく、デジタル・テクノロジーを駆使して新世代の音色の創造、ギター・パフォーマンスを追求したい......そんな姿勢がうかがえる。それがどんなものなのか、ここではその辺りのことについて紹介していこう。まず、現シーンの状況から考えて多くのユーザーが期待するのは、昨今のDTM、DAW環境下において重宝されるアンプ&スピーカー・シミュレーション機能の実力だろう。結論から言うと、DGシリーズの実力を知るものなら、その効果のほどは説明するまでもないほど、バラエティに富んだキャラクターの演出が可能になっている。アンプ・シミュレートで用意されているアンプ・モデルは8種で、他社の競合製品と比較するとやや少なめ。しかしトーンの調整でかなり幅のあるキャラクターが演出できるので心配は無用だ。深い歪みを演出するアンプ・モデルLEAD1&2では、とげとげしいメタル風のエッジの効いたサウンド、DRIVE1&2ではミッド・レンジに張りがある太くウォームな歪み、CRUNCH1&2は、ピッキングのニュアンスを生かすことのできるチューブ・アンプならではのナチュラルなクランチ・サウンド、CLEAN 1&2ではシャープでつややかなクリーン・サウンド、というように、ひと通りのアンプ・サウンドが網羅されている。スピーカー・シミュレーターでは、スピーカーのサイズやユニットの数、アメリカン・タイプやブリティッシュ・タイプなど、16種用意されたスピーカー・タイプの切り替えが可能(表①)。ここで選んだタイプによって、プリ部で作り込んだサウンドのキャラクターが随分と変化する。つまりライン録りにおける音作りのかなめとも言えるのがこの部分なのである。実際、試奏していてトーン・コントロールをいじってもなかなか音が決まらなかったのに、スピーカー・タイプを切り替えただけですべて解決するということも多かったので、プリセットをエディットしていく場合でも、最終的にどうしても追い込めないと感じたら、ここをチェックしてみるといいだろう。▲表① スピーカー・シミュレーター・タイプ 

プリセットの適正値を基準に
エフェクト・パラメーターを設定


エフェクト関係は、コンプ/コーラス/フランジャー/フェイザー/ロータリー/トレモロ/ディレイ/リバーブと、ギターで使いそうなベーシックはひと通り押さえられている。各エフェクトでは、オン/オフからパラメーターの設定までがパネル上でダイレクトに操作できるので、特にマニュアルを読まなくてもすぐにセッティングが可能だ。ところで、実際に本機を楽器店などで試奏してみる場合は、1度エフェクトをすべてオフにして音を聴いてみるといいだろう。というのも、プリセットの多くには内蔵されたエフェクターで相当色付けされたものが多く、それが逆に印象を悪くしかねないからだ。実用的な音色からエフェクティブな効果まで、内蔵エフェクトの実力を知るには十分なプリセット群だが、プリアンプ、アンプ&スピーカー・シミュレーターとしての実力をアピールするには邪魔な場合もある。ぜひ、初対面のギター・アンプで音作りする気分で取り組んでみてほしい。エフェクト部分を含め、ほとんどのパラメーターがアナログのアンプと何ら変わりない感覚で操作できるはずだ。DGシリーズの上位モデルでは、パッチを切り替えるとムービング・ツマミにより自動的にそのパッチで設定されている値に移動してくれた。プリセットをベースにエディットを施していく場合はかなり重宝する機能であったが、もちろん、コンパクトな本機ではその機能は割愛されている。その代わり、プリセットを呼び出して任意のツマミを操作すると、メモリーされている値がLEDに表示され点滅......適正値へ届くと点滅が止まるという機能が用意されているので、全パラメーターのツマミの位置をメモリーされている状態に合わせてからエディットをしていくことが可能だ(適正値に到達するまではツマミを操作しても音色に変化は起こらない)。その他、踏んでいる長さで3役の効果を発揮するTAP/BANK/TUNERスイッチの装備など、便利な機能が盛りだくさんである。
YAMAHA
DG-Stomp
39,800円

SPECIFICATIONS

■入出力端子/アナログ入力×1(フォーン)、アナログ出力(L/Rフォーン)×1、ヘッドフォン出力×1(フォーン)、デジタル出力(コアキシャル)、MIDI IN/OUT、フット・ペダル
■AD/DAコンバーター/20ビット+3ビット・フローティング(A/D)、20ビット(D/A)
■サンプリング周波数/48kHz
■メモリ−数/プリセット90、ユーザー90
■入力インピーダンス/1MΩ(INPUT HIGH:−25dBm、INPUT LOW:−15dBm)
■出力インピーダンス/1kΩ(0dBm)
■外形寸法/280(W)×70(H)×184(D)mm
■重量/2.2kg