音色数と機能/拡張性に富んだマルチ音源モジュール

KORGTriton-Rack

世界中のミュージック・クリエイターを魅了したKORG Tritonシリーズに新たに追加機能を備えたラック・マウント・バージョンが登場。筆者は同社の発展と共にM1R、01R/W、TR-Rackと使ってきたが今までと同様、経済的に制作スペースがあまり確保できなかったためキーボード版はずっと導入できずに辛抱強くモジュール版の登場を待ち望んでいた。スペックをチェックするだけでも"待ったかいがあった!"と思える本品だが、実際に触ってその恐るべき実体を思い知らされることとなった。

最大2,057音色メモリー
リッチで抜けの良い太い音が特徴


まずはフロント・パネル。バンクの呼び出しが専用ボタンで可能な上、カテゴリー別に呼び出し、オーディションして目的の楽器に即座にアクセスすることが可能になっている(ボタンを押すだけで音色に適した382種類ものリフを自動演奏してくれる)。エディット作業も、鍵盤バージョンで採用されたタッチ・ビューではないものの、中央のLCDを見ながらファンクション・キーやダイアルを使って快適に操作ができる。さらに自分がエディットしたいパラメーターを、4つのリアルタイム・コントロール・ノブにアサインしてコントロールすることも可能だ。


リア・パネルには6つのアナログ出力、2つのアナログ入力、S/P DIF(オプティカル)出力を装備。残念ながらデジタル入力は付いていない。電源部は、筆者のように頻繁にスタジオに持ち運ぶような人には少々不便だが、ACアダプターを接続して使用するタイプになっている。


次は音色について見てみよう。標準で512のプログラムと16のドラム・キットに、GM level2に対応した256のプログラムと9のドラム・キットを装備。それに加え、アナログやフィジカル・モデリングなどのあらゆるシンセサイズ方式を得ることができる6ボイスのEXB-MOSS音源(39,800円)を1台搭載することも可能だ。さらに16MBのEXB-PCMデータ・ボード(各10,000円)を8枚まで追加できるので、最大2,057もの音色を瞬時に呼び出すことも可能になっている。


実際にMOSS音源やボードの音源も含めた音色をざっと聴いてみたが、いずれもKORGらしいリッチで抜けが良く太いキャラクターで、早く制作に使いたくなるものばかり。特にエフェクトのプログラムが絶妙なオルガン、レゾナンスが効いたシンセ音、シャープなクラビ、独特の浮遊感のあるストリングスやパッドの音などは、聴くだけでもゾクゾクしてくる。同時発音数は60ボイスでダブル・モード時は30ボイス。デュアル・アルペジエイターを装備しているので、328ものアルペジオ・パターンを本体に設定できるのも魅力的だ。


専用機並みのサンプリング機能
マニアックなエフェクトも楽しめる


同製品に付いているサンプラー機能は専用機並みに充実しており、16MBのSIMMを標準しているのですぐにサンプラーとしても使用可能だ。メモリーは72ピンのSIMMを使用して最大96MBまで拡張でき、AIFF/WAVE/AKAI S1000/S3000、KORGフォーマットのデータをロード可能。さらに、AIFF/WAVEフォーマットにも変換できるので他機との互換性もよい。


サンプル波形はLCD表示で、鍵盤バージョンのTriton Ver.2.0と同等の編集機能を搭載。一般的な波形編集機能に加え、RPPR機能(リアルタイム・パターン・プレイ/レコーディング......エフェクトのかけ録り機能やサンプリングした素材を自動的に分割してキーごとに割り当て、接続したMIDI 鍵盤を弾いたりシーケンサーに打ち込むことによってパターンを再生できる機能)という便利なものが付いている。


エフェクター部も、2マスター・エフェクト、5インサート・エフェクト、1マスターEQが同時に使えるのでかなり充実している。種類も102と豊富で入っていないものは無いと言ってもいい。さらに特筆すべきは、トーキング・モジュレーターやビット数を落とすDecimator、アナログ・レコードのノイズを付加するAnalog Record、ピアノの内部の共鳴をシミュレートするPiano Body、入力信号を録音して自動的にリバース再生してテープの逆回転サウンドのような効果が得られるAuto Reverseなど、専用機にも無いような数々のマニアックなものが使用できるという点。前述のアサイン可能なコントロール・ノブとA/D入力を併用して、エフェクターとしても使いたくなるほどだ。


また同製品は前述の音色ボードやSIMM以外にも拡張性にも優れており、6チャンネルまでのADATオプティカル出力を可能にするEXB-DI(10,000円)、SCSIデバイスへのデータの送受信を可能にするEXB-SCSI(9,980円)、次世代のネットワーク・フォーマットであるmLANに対応させるEXB-mLAN(今秋発売予定)を装備することもできるようになっている。


ざっと駆け足で紹介したが、とても1ページでは書ききれないほどのスペックと魅力がある製品なので、ぜひ店頭で詳細を確認してほしい。



▲上部端子はオプション群。左よりSCSI(EXB-SCSI)、DIGITAL OUT(EXB-DI)、mLAN


KORG
Triton-Rack
189,000円

SPECIFICATIONS

■音源部/HIシンセシス・システム
■サンプリング周波数/48kHz
■サンプリング用RAM/16MB(最大96MBまで拡張可能)
■同時発音数/シングル・モード時60、ダブル・モード時30
■エフェクト数/102(マスター/インサート用)
■プログラム、コンビネーション/最大1,792プログラム、最大1,664コンビネーション、GM level2音色配列準拠256プログラム+9ドラム・プログラム、オーディション・リフ382種、144ドラム・キット
■マルチ/16マルチティンバー、200マルチ
■アルペジエイター/デュアル・ポリフォニック・アルペジエイター、5プリセット・パターン、328ユーザー・パターン(200種プリセット)
■MIDI/IN、OUT、THRU
■外形寸法/482(W)×89(H)×344(D)mm
■重量/4.8kg