高性能マイクプリを備えた24チャンネル/4バス仕様のアナログ・コンソール

MACKIE.SR24・4 VLZ Pro

デジタル卓のシェアが高くなってきている現在、レイテンシー(音の遅れ)の問題や音質、使いやすさ等からアナログ卓もまだまだ健在です。何と言ってもパッと見て今どんな設定になっているかすぐに分かり、リアルタイムに多くのツマミを同時に動かせるというのもアナログ卓ならではの魅力でしょう。音も良く価格が安いことで人気のあるMACKIE.社のSR24・4がこのほどXDRマイク・プリアンプを搭載し、クオリティ・アップしてSR24・4VLZ Proとなり発売されました。音質も含めて、機能や使いやすさなど早速チェックしてみましょう。

適度な硬さがあり好感触の
フェーダーやツマミ


SR24・4VLZ Proは、24チャンネル/4バス仕様のアナログ卓です。SRとはSound Reinforcement(サウンド補正)の略で、主に設備やPA等のステージを目的に作られているようですが、レコーディングにも十分使用できるように設計されています。機能が多少違うだけで、音質やグレードで劣っているわけではありません。


それでは外観から見ていきましょう。外形寸法はMACKIE.の中ではコンパクトな方ではないですが、非常にシッカリとした作りでひ弱なところが全くありません。ツマミは他のVLZ Proシリーズと同じグレーとブルーの落ち着いた色となっています。フェーダーやツマミの動作感触も適度な硬さがあり、とても良い感じです。入出力端子はヘッドフォンやトークバック用マイク入力端子等も含めてリア・パネルにあります。ただし、暗い現場で使用する際に役立つランプ用のBNC12V端子のみトップ・パネルに装備されています。


リア・パネルにある入出力端子ですが、マイク入力端子は1〜20チャンネルにのみ付いており、これはすべてXLR端子2番ホットのバランス仕様となっています。ここにはTRSフォーン端子のインサーションも付いています。ライン入力端子は1〜24チャンネルすべてに付いており、TRSフォーン端子のバランス/アンバランス共用です。ただし21〜22、23〜24チャンネルは、おのおの1本のフェーダーで操作するステレオ仕様。メイン出力端子(DAT等のマスター・レコーダーに接続)は、XLRとTRSフォーン端子の両方があります。また、レベル調整ツマミ付きのモノ出力端子も装備されているので、レベル・マッチングで苦労することはないでしょう。その他、トークバック用マイク入力端子(XLR)、テープ・イン/アウト端子(RCAピン)以外は、AUX SEND等すべてTRSフォーン端子となっています。


1つ気になったのは、ファンタム電源スイッチが本体の電源スイッチのすぐ横にあること。大きさは違うのですが、リア・パネルにあり見にくいので実際には指の感触だけで電源を入れることになり間違えやすいです。トップ・パネルにあるともっと使い勝手が良くなると思い、少し残念です。


入力レベルは+22dBにまで対応
充実のマイク・プリアンプ部


次は、トップ・パネルを見ていきましょう。各チャンネル・セクションの一番上にはマイク・プリアンプのTRIM(ゲイン調整)ツマミがあります。今回のモデルから最大マイク許容レベルが+14dBから+22dBに上がっており、歪み率/ダイナミック・レンジも改善されています。肝心のゲイン・ブースト量も+60dBと十分な値です。ライン・プリアンプ側は1〜20チャンネルがー45〜+15dB、21〜24チャンネルがー20〜+20dBの広い範囲でゲイン調整できるため、どんなレベルの音でも確実にレベル調整することができます。


続いてAUX SEND。センド・ツマミは6つあり、1と2がプリフェーダー音を、5と6がポストフェーダー音を、3と4がプリフェーダーとポストフェーダー音をスイッチで切り替えて選択できます。本機のようにプリ/ポストがある6つのAUX SENDがあると本当に使い勝手がよく、例えば1と2で演奏するミュージシャン用のCUEモニター・センドとしてフェーダーとは別ミックスで音を送り、5と6はリバーブやディレイのエフェクター用のセンドに、3と4は用途によって切り替えて使用する等、思いのままです。


また、普通センドはツマミをフルに回して入力された音がその音量で出るのですが、本機は+15dBブーストできるためCUE用の別ミックスでゲインが足りないということは全くありません。この仕様ならキュー・ボックスを買わなくても十分に対応でき、非常に便利です。


その下にはEQセクションがあります。1〜20チャンネルは今まで同社によく見られる3バンド構成で、周波数はハイが12kHz、ローが80Hz、ミッドが100Hz〜8kHzの広範囲可変となっています。21〜24チャンネルは4バンド構成で周波数はすべて固定、ハイが12kHz、ハイ・ミッドが3kHz、ロー・ミッドが800Hz、ローが80Hzとなっています。ブースト/カット量はすべて±15dBです。そのほか、75Hzを18dBカットするロー・カット・スイッチも装備されています。


フェーダー・ストロークは60mmで適度に重く、キャップの大きさも使いやすく大変好きな感触です。ほかにパンポット、ソロ/カット・スイッチ、アサイン・スイッチ、シグナル&オーバーロード・インジケーターが機能的に配置されています。


最後にマスター・セクションです。MAIN MIX MASTERフェーダーはLRが1本で操作できるタイプで、使いやすくフェード・アウト等で苦労することもありません。AUX SEND MASTERツマミは1〜6まですべてあり、おのおのにソロ・スイッチが付いているのでどんな音が出ているか確認することもできます。また本機は4バス仕様なのでバス・フェーダーが4本あり、それぞれにAIRという機能が装備されています。これはEQなのですが16kHzより上をブーストして音を硬くすること無く、空気感や倍音を出そうというものです。また、この4バスすべてにもソロ・スイッチが付いています。本機の場合バス・フェーダーに送ってAIRをかけた音をMAIN MIX MASTERフェーダーに送ることもできるので、各チャンネルで自由にAIR機能を使用可能です。


ほかにトークバック音量を調整したり、送り先をLRとAUXで切り替えたり、ソロやエフェクト・リターン音量の調整をすることもできます。しかもマスター・フェーダーや4つのバスにもインサート端子があり一見シンプルなデザインの割に、いろいろな機能を使いやすくまとめてあります。


バス部に装備のAIR機能で
高域のヌケと空気感を調整可能


では、肝心の音です。始めにマイク・プリアンプから。本機にはXDRプリアンプが搭載されていますが、非常にノイズが少なくダイナミック・レンジの広いクリーンで伸び伸びとした音がします。周波数特性的にはあまり伸びている感じは無く低域もそんなにある方ではないですが、音に明るさとまとまりがあり、分離も良く大変良い感じです。また歪みに強く、+4dBの信号にも十分対応できます。無理矢理歪ませても音がやせて高域がチリつく感じが無く、まるでトランス受けのディスクリート・アンプのような歪みで結構使えます。


EQは、3バンド/4バンドでかかりは違いますが同じ質感です。ローはベースが伸びやかに出てくる感じではなく、キックがダンピング良く前に出てくる感じ。ミッドはかかりが良い割に、カーブがブロードなので自然です。ハイは12kHzとなっていますが、聴いた感じ8〜10kHzぐらいで、良い意味でステレオのトーン・コントロール的に自然にハイを上げて音を硬くできます。


バスに装備されているAIRですが、これが結構良くできていて、普通のEQで16kHzを上げたときはもっとノイズっぽくイマイチの場合が多いのですが、AIRはポイントとカーブ設定がうまく高域全体の空気感とヌケを良くすることができ、すべてのチャンネルに欲しいぐらいです。


今回は、メイン出力とコントロール出力(パワー・アンプに接続するモニター用のボリュームを通った後の音)を比較してみました。通常私たちがスピーカーで聴いている音はメイン出力の音ではなくコントロール出力の音ですが、その音が非常に良いのです。メイン出力の音は滑らかさはあるものの、多少中低域の分離の悪い音となっています。それに対してコントロール出力の音は少しドンシャリになるものの中低域の分離が良く、なおかつ元気で明るく、ベールを1枚取ったような音です。この音ならPro Tools等のHDレコーダーのモニター用としても十分通用するでしょう。


いろいろ使用してみましたが、本機はステージはもちろん、自宅やプリプロ等さまざまなシーンで使えます。シーケンサーやHDレコーダーを回して、ほとんどそのままミックスしてDATに直接録音する、あるいは、音源が多くシンセやサンプラー等の立ち上げチャンネルは多く欲しいが、レコーダー等に音を送るバスは少なくてよい、などという方にはもってこいの卓です。他社からも非常に低価格のアナログ卓がいろいろ出てきている現在、価格だけはもっと安い卓がありますが、使い勝手や音を考えるとやはりしにせMACKIE.は良いということを再確認しました。



▲SR24・4VLZ Proのゲイン・パス・ダイアグラム(単位dBU)



▲リア部。上部左からメイン出力端子(フォーン/上)、メイン・インサート端子(フォーン)、AUX SEND端子1〜6(フォーン/上)、CONTROL ROOM用出力端子(フォーン/下)、STEREO AUX RETURN端子1〜8(フォーン)、サブ出力端子1〜8(フォーン)、サブインサート端子1〜4(フォーン)、チャンネル21〜24ライン入力端子(フォーン/上)、テープ・イン/アウト端子(RCAピン/下)、チャンネル20〜1入力端子(上からインサート/フォーン、ライン/フォーン、マイク/XLR)。下部は左から電源プラグ、電源スイッチ、ファンタム電源スイッチ、ヘッドフォン端子1〜2(フォーン)、トークバック用マイク入力端子(XLR)、メイン出力端子(XLR)、モノ・メイン出力のレベル調整ツマミ、モノ・メイン出力端子(XLR)


MACKIE.
SR24・4 VLZ Pro
208,000円

SPECIFICATIONS

■周波数特性/+0/-1dB(20Hz〜50kHz)、+0/-3dB(20Hz〜100kHz)
■全高調波歪率/Mic input to insert output:<0.0007%(1kHz@+14dBu, 20Hz〜20kHz)、Other outputs:<0.004%(1kHz@+14dBu, 20Hz〜20kHz)
■最大入力レベル/+22dBu
■最大出力レベル/+22dBu
■入力インピーダンス/1.5Ω(マイク)、>10kΩ(その他)
■出力インピーダンス/120Ω
■外形寸法/787.4(W)×154.9(H)×487.7(D)mm
■重量/14kg