抜群のコスト・パフォーマンスを誇る高品位コンデンサー・マイク

SEIDEPC-M2

ドイツのSEIDEから、ブランド初号機となったPC-M1(本誌1999年3月号で紹介)の後継モデルと言えそうなコンデンサー・マイクロフォンPC-M2が新たにラインナップに加わりました。早速、PC-M1との印象の比較、相違点、本機の特徴などを中心にチェックしていきましょう。

指向性が3種類の切り替えになり
より幅広い用途で利用可能に


外観は今までのシリーズに共通するつや消しシルバー(ゴールドが薄く混じった感じ)で、大きさもほぼ同サイズです。マイクロフォンのカプセルには大型のダイアフラムが採用されるなど、スタジオの定番コンデンサー・マイクNEUMANN U87的な使い方を目指してデザインされているようです。また、これまでのSEIDEシリーズと同様にマイクロフォン上部のスクリーン・ネットはかなり細かく、とても奇麗で丁寧に仕上げられています。マイクの顔付きもバランスがよく、堂々とした"頼れる奴!"という印象。付属品としてショック・マウント・アダプターが付いていて、マイクロフォン本体と一緒に格納できるハード・ケースも標準装備。保管性も考えるとこれは重宝しますね。電源はファンタム48Vで、コンソールやマイク・アンプから供給します。


と、ここまではPC-M1とほぼ同スペックなのですが、PC-M2での最大の変更点は、指向性を3種類(単一指向性/双指向性/無指向性)から選べるようになったこと、そしてローカット(100Hz/−6dB)のスイッチが使いやすくなったことでしょう。PC-M1ではマイクロフォン内部の基板にパッド・スイッチがあったため、外からは確認できなかったり、マイク・セッティング後にパッドを入れるときは1度セットをばらさなければいけませんでした。しかしPC-M2では、それぞれのスイッチがマイク正面に付けられているので、非常に使いやすくなっています。このように、前モデルの難点が新機種で改良されていることはユーザーにはとてもありがたいことですね。ほかに周波数特性、最大音圧レベル、SN比などはPC-M1と同様となっています。


ボーカルから生楽器、PAの現場まで
あらゆる用途で活躍できるサウンド


では実際のサウンドを聴いてみることにしましょう。今回はNEUMANN U87 Aiとの比較テストを行ってみました。出力差があり(U87 Aiの方が5〜6dB大きい)マイク・アンプの設定も違ったため正しいSN比は分かりませんでしたが、問題になるほどではなく、十分なスペックを感じさせました。まずは男女のストレート・ボイスでのチェックです! U87 AiとPC-M2をソースから等距離にセットし(15〜20cmほど離して)、両者をスイッチングで切り替えて聴き比べてみましたが、サウンド・キャラクターがかなり似ていたのにはとても驚かされました。声を出している本人や私以外、スタジオにいたみんなが違いを判別できなかったほどです。また男性/女性の声ともに2本のキャラクターの差はほとんどありませんでした。前モデルのPC-M1もU87に近いキャラクターを持っていましたが、PC-M2ではさらにそっくりになっています。U87をお手本に設計コンセプトを組み立てているのがよく分かりますが、ここまで似ていると正直驚きですね! さらにアコースティック・ギターやボーカル等でもチェックしてみましたが、サウンド・キャラクターの差はほとんど感じませんでした。特に高音域や倍音での差があまり無かったのには驚きです。今回はウッド・ベースやピアノなど、低音域の楽器や特性の広い楽器でのチェックまでは行えませんでしたが、想像するにそれほど大きな差は無いでしょう。


ただ、ボイスの極オンセッティングでは少々キャラクターに差が出たので報告しておきます。近接効果はU87の方が大きく、オフ時とのキャラクターに差が出ましたが、PC-M2はそれほどでもありません。また真正面での指向性から外れていった特性の差も少々出ました。指向性に対して90度では周波数のバランスがかなり変わってしまうので2本の差は大きく出ます(PC-M2の方がより高域が落ちる)。さらに指向性による違いに関してですが、無指向性では少しだけPC-M2の方が方向による特性差(高音域での差かな?)があるようです。といっても全く別物のキャラクターになるわけではなく、かなりいい線行ってますよ! あえて残念な点を挙げると、ショック・マウント・アダプター(ゴムでマイクを浮かせるタイプ)が外れやすい設計になってしまっていることで、セッティング変更時や指向性/ローカットを変えるときに外れてしまって結構大変でした。


全体的な感想としては、ボーカルからさまざまな生楽器/アンプ等の収録、PAの現場まであらゆる用途での使い方が可能だと思います。U87にしてもずば抜けて素晴らしいマイクというわけではなく実は癖のあるキャラクターなんですが、かなり万能に使えますし、実際多くの現場で使用されてきた実績があります。PC-M2もおそらくその辺の使われ方を目指したコンセプトなのではないでしょうか。それにしてもこの価格でこのスペック、読者の皆さまにはぜひぜひお薦めの1本です。


SEIDE
PC-M2
88,000円

SPECIFICATIONS

■指向性/単一指向性、無指向性、双指向性
■周波数特性/30Hz〜20kHz
■感度/−34±2dB(0dB=1VPa、1kHz)16mV
■最大音圧レベル/135dB
■入力インピーダンス/≦200Ω
■ロール・オフ・スイッチ/100Hz/−6dB
■電源/48Vファンタム
■外形寸法/49(φ)×195(H)mm
■重量/485g