膨大な音色資産と高い拡張性を兼ね備えた音源モジュール

ROLANDXV-5080

サンプル・プレイバック・タイプの音源として不動の人気を誇るROLAND JVシリーズの基本設計を受け継ぎ、大きくパワー・アップしたXVシリーズ。その最上位機種に当たるXV-5080はサンプラーのライブラリーを読み込んだり、新しいエクスパンション・ボードに対応するなど驚異の拡張性を誇っている。早速その実力を探ってみよう。

"使える度"を維持して
進化したXVシリーズ


とにかくROLANDのサンプル・プレイバック音源は、プロからアマチュアまで幅広く定評がある。しかしこれは技術的なことだけでは語れない。筆者は初期のサンプラーSシリーズを愛用していたが、その理由は決してサンプラーとしての機能が優れていることではなく、圧倒的に"使える度"が高かった点にあった。また、同社開発の音色ライブラリーにも素晴らしいものが多かったのだ。


その技術と資産を生かし、より再生部分を強化した形にしたのが、メモリーに音色をそのまま乗せたいわゆるサンプル・プレイバック音源だ。つまり、サンプリングできるという自由度をなくしてでも"使える度"を究極まで追求した製品がUシリーズ、JD/JVシリーズへと発展してきたわけである。特に近年のJVシリーズの"使える度"はハンパではなかった。巷にJVシリーズの音があふれているのが何よりの証拠だろう。


そんなJVシリーズをより進化させたのがXVシリーズである。内部のプログラム的にも多くの改良点があるが、ユーザー的にはJVシリーズが同じスタイルで進化しながらも、音質が向上し、新たな機能が加わったととらえるのが分かりやすい。


S/P DIFやR-BUS端子を備えるほか
ワード・クロック端子も搭載


XV-5080は現在XVシリーズの最上位機種ということになるが、これまでの最上位機種JV-2080からどれだけ進化したのかをスペックで見ていこう。まずパート数は16から32へ。最大同時発音数は64から128へ。パッチ数は640から896へ。実際にはそのほかにも、GM Level2パッチやパフォーマンス、リズム・セットなどがあるので、プリセット・サウンドの数は1,000を超える。JVシリーズ同様非常に使えるサウンドが多く、JVユーザーが移行しても問題が起こることは少ないだろう。


エフェクトはJV-2080ではEFX40種/リバーブ/コーラスだったのが、マルチエフェクト90種/リバーブ4種/コーラス2種/2バンドEQと飛躍的に増えた。しかもこれらはSRV-3030のDSPをそのまま移植したというのだから、クオリティの点でもかなりの向上が見られる。実際本機のサウンドはJVシリーズ以上にクリアで、高域の伸びた印象が強かったが、これは内蔵エフェクトの変更が多分に関係しているのだろう。


端子類はアナログ6アウトから、アナログ8アウトに増え、さらにS/P DIFデジタル・アウト(コアキシャル/オプティカル)も用意。プロのレコーディングにも使用可能なように、ワード・クロック・イン端子まで標準装備している。また、R-BUSデジタル・アウトを使用すれば、デジタルで8チャンネル・アウトも実現する。加えてパート数が32になったことに伴い、MIDI端子もINが2つへ増加。それでいて大きさ、重量はJV-2080と変わらないのだから恐れ入ったものだ。


一方、操作性の面でもJD-990やJV-2080を操作した経験のある方なら全くマニュアルを読む必要もないほどだし、初めて使うユーザーもすぐに操作できるはずである。というのも、階層構造が非常に分かりやすく、使用したいパラメーターに簡単にアクセスできるからだ。また、ディスプレイも非常に大きく、1度に表示できる情報量も多いし、配置も実に適切だ。大量に用意された音色を選ぶのが大変と思うかもしれないが、心配は無用。音色はジャンル別に分類されており、PATCH FINDERモードで音色カテゴリーを選択すれば、同傾向の音色のみが選べるようになっているのだ。


サンプラーのライブラリーを
そのまま読み込んで再生可能


何と言っても本機で驚異的なのはその拡張性だ。既に多数のJVシリーズ用SR-JV80エクスパンション・ボードが発売されているが、これらの中から4つ、そして新たなSRXエクスパンション・ボードを4つ、さらにSIMMメモリー(72pin、FP/EDO16/32/64MB対応)を最大2つまで拡張可能。フル装備で何と16ビット・リニア換算で500MBを超える(!)音源に拡張することができるのだ。


また、XV-5080は拡張したSIMMを利用してサンプラーのライブラリーまでをも読み込むことが可能だ。AKAIのS1000/3000シリーズ用、ROLANDのS-760用のCD-ROMはもちろん、AIFFやWAVファイルも読み込んで使用することができる。実際に試してみたが、AKAI用ならプログラムごと読み込んでそのまま使用、AIFF/WAVファイルなら波形を読み込んでウェーブ・フォームとして使用することができた。通常のサンプラー以上にエディットのパラメーターや実際のかかり方、モジュレーション系が優れているので、サンプリング作業ができないという点を除けば、サンプル・プレーヤーとしては相当自由度の高い設計のものと言える。なお、読み込んだ波形は、スマートメディアに保存可能だ。


これだけの充実したスペックを持つXV-5080。絶対にオススメということになるのだが、唯一問題があるとすれば、あまりに良いので多くのユーザーが購入し、XVサウンドが世界中にあふれてしまうのではないかという点くらいだ。そんな心配をしてしまうほど素晴らしい音源なのである。



ROLAND
XV-5080
198,000円

SPECIFICATIONS

■最大同時発音数/128
■パート数/32
■音色メモリー/プリセット:パッチ896+GM Level2パッチ256+パフォーマンス64+リズム・セット14+GM Level2リズム・セット9、ユーザー:パッチ128+パフォーマンス64+リズム・セット4
■エフェクト/マルチエフェクト90種類、リバーブ4種類、コーラス2種類、2バンドEQ
■外形寸法/482(W)×88(H)×281(D)mm
■重量/4.9kg