
いよいよAKAIのDPSシリーズも16トラックに。しかも24ビット/96kHzにまで対応し、一気に最先端スペックとなった。また、既にDPS12で定評のあった操作性を大型液晶でさらに進化させ、ピンポン・バスを採用してバス周りの使い勝手も向上。完成度の高い仕上がりになっている。
最新スペックの録音モードと
本格的になったI/O端子類
記録メディアは内蔵または外付けのハード・ディスクを使用。標準的に発売されているDPS16HD20には、20GBのハード・ディスクが搭載される。これだけ容量があれば、ハード・ディスクを入れ替えて作業する必要はほとんどないだろう。録音モードは従来の16ビットに加え、24ビット・モードが選択可能になった。ただし録音/再生トラック数には制限があり(表①)、16トラックをフルに使いたい場合は16ビット・モードを選択しなければならない。一方、サンプリング周波数も、32kHz/44.1kHz/48kHzに加えて96kHzが選択できる。つまり24ビット/96kHzの最新AD/DAコンバーターを搭載しているわけで、下位機種である16ビットのDPS12iとの機能差が音質面でも明確になっている。 表① 同時再生(録音)可能なトラック数 もちろん録再は非圧縮で、プロジェクト(曲)ごとにこれら録音フォーマットを選択可能だ。ただし、ビット数やサンプリング・レートを後からコンバートすることはできないので、オール・デジタル処理で自作CDを作る場合には、44.1kHz/16ビットで作業を始めよう。なお、DPS12、DPS12i、DPS16(24ビットと96kHzを除く)の間ではデータ交換が可能とのことだ。ミキサー部は26ch仕様。インプット・ミックス側がアナログ8ch+デジタル2chで、これにトラック・ミックスの16chが加わる。インプット1と2の端子にはコンビ・ジャックが採用されており、XLRとフォーンに対応。ファンタム電源スイッチがあるので、コンデンサー・マイクも直接つなげる本格派だ。また、インプット8はスイッチ切り替えでエレキギター用のハイ・インピーダンス接続も可能になっている。トラック・ミックスに使用するフェーダーは16本用意され、他のメーカーに見られるようなステレオ・フェーダーによる省略が行われていないのがうれしい。パン専用つまみも装備しており、多少コストがかかっても"基本的な使いやすさを優先する"という姿勢が貫かれている。EQは、最大16基の3バンドEQ(MIDのみQあり)を用意。これは26の任意のチャンネルにアサイン可能だ。AUXセンドは4つで、内蔵エフェクトへの送りと、外部エフェクターへの出力は共通となっている。
6つのアサイナブルつまみと
新たなバスの採用で操作性を向上
オプションの内蔵エフェクト・ボードEB4M(30,000円)は最大4系統使用でき、AUXタイプはもちろん任意のチャンネルへのインサート・タイプに切り替えることも可能。もちろん内蔵エフェクトのリターンは専用に用意されている。内容は空間系を中心にしたベーシックなエフェクトがメインだが、DISTORTION、PITCH CORRECTOR、ROTARY SPEAKERなども搭載。さらに、"DIGITAL EQ"という3バンドすべてにQがある本格的パラメトリックEQのプログラムも用意されていて、メインEQで追いつかないような細かい音作りもこちらでは可能になっている。出力側にはマスター・アウトの他に、モニター・アウト端子も装備。4つのAUXセンド端子と合わせて8パラアウトも可能だ。各端子へ出力する信号はQUICK PATCHモード(後述)でそれぞれ任意設定でき、ここでAUXや各トラックも選択できるので、外部MTRへのコピー作業も8トラック単位で可能となる(ただしデジタル・アウトはマスター・アウトと同じ信号)。ハイピッチ50ピンのSCSI端子には、外部メディアを接続しての記録(ハード・ディスクのみ)や、データのバックアップが可能。さらにCD-RやCD-RWドライブを接続すれば、オリジナルCD作りもできるようになった。
波形表示も可能な編集機能に
タイム・ストレッチを新搭載
大型ディスプレイの右にはQ-LINKと称した6つのつまみを採用。これは主にEQやAUXセンド、エフェクトのエディットなどに使うつまみで、パラメーターへダイレクトにアクセスできるのが便利だ。"左手はトラック・セレクトで右手はパラメーター"の体制でどんどん設定していける。また、QUICK PATCH画面(画面①)では各インプットからの信号を視覚的にパッチング可能。昔のMTRのように、いちいちPANを左右に振ったりしなくて済むのが快適だ。例えば、1つのインプットから複数のトラックへ信号をアサインしておけば、1本のマイクを使って次々に録音トラックを変えてダビングしていくことができる。



185,000円(DPS16 HD20/20GBハード・ディスク内蔵)
SPECIFICATIONS
■サンプリング周波数/96/48/44.1/32kHz
■周波数特性/96kHz:10Hz〜44kHz、48kHz:10Hz〜22kHz、44.1kHz:10Hz〜20kHz、32kHz:10Hz〜15kHz(±2.0dB)
■最大録音時間(10GBディスク使用時)/96kHz:約15時間、48kHz:約30時間、44.1kHz:約32時間、32kHz:約45時間
■量子化数/24/16ビット・リニア
■AD/DA/24ビット・128倍オーバー・サンプリング
■アナログ入力/フォーン/XLR(バランス)×2、フォーン(バランス/アンバランス)×6
■アナログ出力/マスター・アウトL/R(RCAピン)、モニター・アウトL/R(RCAピン)、AUX SEND 1〜4(フォーン)
■デジタル入出力/コアキシャル(S/P DIF)
■MIDI/IN、OUT/THRU
■外形寸法/515(W)×127.5(H)×358.5(D)mm
■重量/6.4kg(内蔵ドライブ含まず)