トータル・コンプに最適なデジタル・シグナル・プロセッサー

JUNGER AUDIOAccent2

先日、国内外のアーティストのCDを続けて聴く機会があった。驚いたのは、わが国のアーティストのCDだけが異常に音量が大きいことだった。CDゆえにピーク値は同じなのだが、平均的な音圧感が極めて大きいのだ。ミックス・ダウンやマスタリング時のトータル・コンプ/リミッター処理がなせる技なのだが、ビート感やグルーブ感はもとより、透明感や奥行き感はほとんど感じられない。音がデカイことだけは感心するのだが、音楽的には不必要な処理に少しあきれてしまった。これに対し、ここで取り上げるAccent2は、そのようなサウンド処理を目的とするのではなく、高品位なサウンドを得るためのトータル・コンプ/リミッターとして最適な製品と言えそうだ。

クオリティを優先した
設計思想


Accent2は、2チャンネルのコンプレッサー、リミッターのほかに、エキスパンダー、フィルターを装備。ダイナミクス系の配列はエキスパンダー→コンプレッサー→リミッターと定石通りだが、フィルターに関してはエキスパンダーの前後を選べ、サイド・チェインとしてディエッサー効果も簡単に得ることができる。そして、高いクオリティのサウンドと、ダイナミクス効果のナチュラルさが特徴だ。コンプレッサーとリミッターには、アタック・タイムやリリース・タイムというパラメーターは無く、Processと名付けられた0〜9のプリセット的なパラメーターを選択する方式になっている。いずれの設定値の場合もタイムは一定ではなく、入力信号に反応して変化するのだが、その幅は規定することができる。また、コンプレッサーのレシオは1.0:1〜4.0:1でレンジも0〜15dBと実用的な範囲を重視しており、こうした点にもトリッキーさではなくクオリティを優先する姿勢が感じられる。その効果は、次第に音量が増してくるフォルテシモに対しても、突然のアタック音に対してもそつなく追従してくれている。しかも原音の透明感は保たれたままで(その理由は後述)。マスタリングなどでは、リモート・フェーダーが使用できる点が重宝するだろう。しかし、専用のマスター・フェーダー・モジュールは無く、本来はライバル製品となるべき T.C. ELECTRONICの製品をマニュアルで推奨しているところなど、ユーザーの立場に立っていて好感が持てた。入力ディバイスは、プッシュ・スイッチ機能付きの大きめのダイアルで操作性も良い。デジタルI/Oに関しても充実していて、コネクターはXLRとBNCを装備し、96kHzにはHigh Speedと2wireをサポートしている。外部シンクや、外部からコントロールできるリモート端子も用意されている。ディスプレイもメーターのスケールは決して長くは無いものの、必要な機能はそろっている。また、Accent2には弟分のAccent1というモデルがある。AD/DAコンバーターを搭載していない点が異なるが、このAD/DAは単体としても十分に価値がある。24ビット、96kHzまで対応しており、かつサンプリング・レート・コンバージョン機能や16ビットまたは20ビットへのディザー機能もあるので、最終メディアのフォーマット変換にも重宝する。また、これらを入出力として使用していないときは、外部機器をインサートするI/Oにも使用できるアイディア設計がうれしい。

サウンドの透明感を保つ
マルチループ原理


トータルにかけるコンプ/リミッターは、個々のチャンネルに使用するものに比べ、より高いクオリティが要求される。ミックスされたソースは、音声帯域も広い上にさまざまな種類のエンベロープが混じっているのだ。例えば、シンバルの余韻が伸びているところにバス・ドラムのアタックでコンプがかかると、シンバルも同時に抑えられるために不自然に聴こえる。いわゆるブリージング現象だ。こうした問題を回避するために、最近はマルチバンドで処理している製品を多く見かける。それらは、低域から高域までの全帯域を複数に分割し、それぞれにダイナミクス処理した後にまたミックスするという方式で、スピーカーが複数のユニットで全帯域をカバーしているのに近い考え方だ。これによりブリージングやポンピングの問題は、おおむね解消される。しかしながら、この方式ではクロスするポイントでの不自然さから、サウンド全体の透明感が失われがちになるという問題がある。よって、シンセや打ち込みを主体とした音楽にはほぼ問題無く使用できるが、オーケストラやピアノ・ソロなどでの使用では厳しい印象が否めなかった。そこで、Accent2ではそれを解消するためにマルチループ原理と呼ばれる方式を取っている。細かな点に関しては公開されていないので不明だが、これがなかなか素晴らしい効果をもたらしてくれるのだ。歪み感はもとより、色付けが無いのがうれしい。良い意味で音が太くなったりするエフェクターやテープの磁気飽和も悪くはないが、意図していない変化は避けたいし、そもそもコンプレッサーやリミッターによって音質、音色や広がり感、奥行き感が変化してはいけないのだ。ピークを抑え音圧を稼ぐ代償として、音質変化を犠牲にしていたに過ぎないのだから。その設定も極めて容易だ。本機は4つのエフェクターを個々にオン/オフできるのだが、コンプレッサーとリミッターはセットで使用することを前提として考えられているようで、前述のように個々の機能は決して豊富なパラメーターを備えてはいない。しかし、それが使い勝手を良くしている典型のような設計になっているからだ。Accent2は、自動車などにも共通するドイツ製の質実剛健さが感じられる製品にまとまっている。高品位を欲するレコーディング、マスタリング・スタジオのみならず、放送局やMAスタジオの最終段には最適だ。本機のコンプレッション・サウンドを聴いて、 つぶし過ぎてにごったサウンドに慣れてしまったエンジニアたちが、少しは反省してくれるとうれしいのだが......。
JUNGER AUDIO
Accent2
1,000,000円

SPECIFICATIONS

●内部処理
■サンプリング周波数/44.1kHz〜96kHz
■フォーマット/24ビット
■ディザー/ TPDF、16ビット、20ビット
■サンプリング周波数コンバート/非同期、44.1kHz〜96kHz、THD+N:−110dB
■シンク端子/BNC(イン、アウト)
●デジタル入出力
■AES/EBU/XLR、BNC
■フォーマット/AES(プロフェッショナル、コンシューマー)
●アナログ入出力
■AD/DA変換/24ビット、44.1kHz〜96kHz
■ダイナミック・レンジ/入力:114dB(RMS)、117dB(A)、出力:110dB(RMS) 、115dB(A)
■入出力レベル/+12〜+22dBu@0dBFS
■外形寸法/483(W)×44(H)×250(D)mm
■重量/4kg