ZOOM M4 MicTrak レビュー:32ビット・フロート録音に対応するハンドヘルド・マイク型4trレコーダー

ZOOM M4 MicTrak レビュー:32ビット・フロート録音に対応するハンドヘルド・マイク型4trレコーダー

 国産ブランドであるZOOMから、ハンドヘルド・マイク型の4trレコーダー、M4 MicTrakがリリースされました。早速レビューしていきたいと思います。

最大入力音圧135dB SPLを誇る指向角90°のXYステレオ・マイクを内蔵

 まず目を引くのはそのいでたち。ボーカル・マイクを模した黒いボディには、ハンドリング・ノイズを大幅に低減するという強化コーティング塗装が施されています。重量は電池を含めても計325gという軽さ。軽くて頑丈なハニカム構造のマイク・グリルの内側には、最大入力音圧135dB SPLを誇る指向角90°のXYステレオ・マイクを内蔵しています。

 フロント・パネルの上部にはカラー液晶ディスプレイを採用し、ここで4tr分の音声波形をリアルタイムに表示。ディスプレイの下部には拡大/縮小キー、INPUTキー、LO CUTキー、マイク入力を切り替える1キーと2キー、REC/STOP/PLAY/PAUSEといったトランスポート用の操作キーを装備。なお、LO CUTキーではオフ/80/160/240Hzの4段階でローカットを切り替えることができます。そしてフロント・パネルの下部にはスピーカーを内蔵。ヘッドフォンやイアフォンがなくても、その場で録音データを確認できて便利です。

 左右の側面には、24/48Vファンタム電源対応かつ、ロック機能付きのマイク/ライン入力(XLR/TRSフォーン・コンボ)を2系統装備。これらはEIN(入力換算雑音) −127dBu以下という、超低ノイズ・フロア設計の高品位マイクプリを内蔵しています。

M4 MicTrakのレフト・パネル。左からマイク/ライン入力1(XLR/TRSフォーン・コンボ)、ヘッドフォン出力(ステレオ・ミニ)、VOLUMEキー、専用リモコンを接続するためのREMOTE入力、ライン出力(ステレオ・ミニ)、外部機器と接続するためのUSBポート(Type-C)を備えている

M4 MicTrakのレフト・パネル。左からマイク/ライン入力1(XLR/TRSフォーン・コンボ)、ヘッドフォン出力(ステレオ・ミニ)、VOLUMEキー、専用リモコンを接続するためのREMOTE入力、ライン出力(ステレオ・ミニ)、外部機器と接続するためのUSBポート(Type-C)を備えている

M4 MicTrakのライト・パネルには、電源/HOLDスイッチ、microSDHC/SDXC用カード・スロット、TIME CODE入出力(ステレオ・ミニ)、MENUキー、プラグイン・パワー対応マイク/ライン入力(ステレオ・ミニ)、マイク/ライン入力2(XLR/TRSフォーン・コンボ)を搭載する

M4 MicTrakのライト・パネルには、電源/HOLDスイッチ、microSDHC/SDXC用カード・スロット、TIME CODE入出力(ステレオ・ミニ)、MENUキー、プラグイン・パワー対応マイク/ライン入力(ステレオ・ミニ)、マイク/ライン入力2(XLR/TRSフォーン・コンボ)を搭載する

 このほかにも、M4 MicTrakからマイクへの電源供給が行えるプラグイン・パワー対応マイク/ライン入力や、ライン出力、ヘッドフォン出力(いずれもステレオ・ミニ)、VOLUMEキー、MENUキー、有線式専用リモコンのためのREMOTE入力、TIME CODE入出力(ステレオ・ミニ)、コンピューターやタブレット端末、スマートフォンと接続して録音データのやり取りを行うためのUSBポート(Type-C)、microSDHC/SDXCカード用のスロットを搭載。なお、このUSBポートはバス・パワー供給にも対応しています。M4 MicTrakは、単三形アルカリ乾電池4本で約19時間駆動しますが、このUSBポートに外部バッテリーを接続すれば、さらなる長時間稼働も実現できるでしょう。

 TIME CODE入出力に関しては、見慣れない人も多いかもしれません。タイム・コードとは、映像や音声などを同期する際に必要な時間情報を示すために記録された電気信号のこと。M4 MicTrakは高精度なタイム・コード・ジェネレーターを内蔵しているため、正確なタイム・コードを生成することが可能です。

デュアルADでダイナミック・レンジを拡大

 M4 MicTrakの特徴として、デュアルADコンバーターを採用していることが挙げられます。デュアルADコンバーターとは、1つの入力回路にローゲイン用とハイゲイン用という2つのADコンバーターを搭載することを言い、これによって、従来よりさらに幅広いダイナミック・レンジをカバーすることができるようになったのです。

 さて、M4 MicTrakにおける録音時のビット/サンプリング・レートは、32ビット・フロート/192kHz対応。つまり、使い方によってはAndroid/iOS/Mac/Windowsで動作する32ビット・フロート対応USBマイクとしても使用することができます。さらには4イン/2アウトのオーディオ・インターフェースとしてライブ配信にも活用可能です。

 それではフィールド・テストを行います。まずはステレオ・マイクで収音。RECキーを押すだけで、すぐに録音を開始できます。32ビット・フロート録音対応のため、煩わしい入力ゲイン設定が不要なのはとても助かります! 拡大キーを押すと、ディスプレイに表示された音声波形が見やすくなるのも便利です。

 実際に録れた音は、XY形式のマイクらしい音像定位が明瞭なステレオ・イメージがあり、通り過ぎる人々の足音や喧騒、車のエンジン音といったサウンドスケープを明確にキャプチャーできたと思います。また、ディスプレイは光度が十分にあるため、屋外でも高い視認性を備えています。

 予想外に良かったのは、M4 MicTrak本体のグリップ。普段自分が使用する持ち手を取り付けずとも、ハンドリング・ノイズが気にならなかったので驚きです。線路を通過する電車音を録音してみましたが音はひずむことがなく、奇麗な波形を確認できました。ちなみに当日は風の強い日だったため、M4 MicTrak付属のウィンドスクリーンWSM-2の上に、別売りのへアリー・ウィンドスクリーンZOOM WSU-1を装着。そのため“風きり音”や“吹かれ”はさほど気にならず、レコーディングに集中できました。

 次は、耳に装着して使用するタイプのバイノーラル・マイクをマイク/ライン入力のCh1とCh2へ接続。マイク/ライン入力は高品位マイクプリを搭載するためか、バイノーラル特有の音像をクリアな音質でしっかりキャプチャーできました。

再生音量を自動で調整する機能

 M4 MicTrakの魅力はまだあります。プレイバック時のレベルを自動で調整する再生音量自動調整機能や、最大6秒のプリレコーディング機能を備え、16/24ビットのWAVファイルの書き出しも可能。さらにモノラル録音にも対応するなど、かゆいところに手が届く仕様となっています。

 M4 MicTrakは、コンパクトなレコーダーを探している音楽クリエイターやサウンド・デザイナーに限らず、さまざまなシチュエーションで録音を行う動画クリエイターにもお勧めです!

 

佐藤公俊
【Profile】音楽家/サウンド・デザイナー。環境音と電子音を組み合わせたワークスは、パブリック・スペースやWebコンテンツ、ラジオ番組のサウンド・プロデュース、舞台芸術の劇伴など多岐にわたる。

 

ZOOM M4 MicTrak

オープン・プライス

(ZOOM STORE価格:45,000円)

ZOOM M4 MicTrak

SPECIFICATIONS
▪入出力端子:マイク/ライン入力(XLR/TRSフォーン・コンボ)×2、マイク/ライン入力、ライン出力、ヘッドフォン出力(いずれもステレオ・ミニ) ▪録音フォーマット:WAV(44.1/47.952/48/48.048/96/192kHz/32ビット・フロート、モノラル/ステレオ)、BWFおよびiXMLフォーマット対応 ▪最大同時録音/再生トラック数:4tr ▪記録媒体:microSDHC規格対応カード(4~32GB)、microSDXC規格対応カード(64GB~1TB) ▪電源:単三乾電池×4本、USBバス・パワー駆動対応、ACアダプター(別売り) ▪外形寸法:70.2(W)×47.0(H)×206.2(D)mm ▪重量:325g

製品情報

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