次世代のマルチサンプラー+シンセをレビュー! 〜ソフト音源WAVEA Flite

WAVEA Flite レビュー:4基のマルチサンプラーとシンセを搭載し複雑な音作りが可能なソフト音源

 SAMPLE MAGICの創設者で音楽プロデューサーのシャルーズ・ラウーフィと、ミラン・ファン・デル・メールにより設立されたWAVEA。同社の主力製品であるソフトウェア・マルチサンプラー+シンセFliteの取り扱いが日本でも始まりました。Mac/Windows対応のプラグイン形式(AU/VST3)で提供されるこの音源、掘り下げて紹介します。

フィルター/エンベロープ/FXなど多数のモジュール 充実したプリセット&ライブラリーは美しいサウンド

 Fliteには、プリセットの読み込みと演奏だけができるPlayモードと、パラメーターにフル・アクセスできるCreateモードがあります。Playモードのみであれば無料で使用できるので、音の感じを知りたい人はまずPlayモードを試してみるのがいいでしょう。本稿で紹介するのはCreateモードです。

 構成を見ると、キーやベロシティごとに違うサンプルをアサインできる本格的なマルチレイヤーのサンプラー×4と、FM/バーチャル・アナログ/ウェーブテーブルを混ぜて使える3オシレーターのシンセ、ホワイト/ピンク/ブラウン/パープルが切り替えられるノイズ・ジェネレーターが音源部分。フィルター×2は、いずれもローパス/バンドパス/ハイパスや12/24dB/octのスロープの切り替えに対応するほか、ANALOG/MODERNから特性を選べます。さらに、ADSRタイプのエンベロープ・ジェネレーター×3とテンポ同期可能なLFO×3、ノート専用&モジュレーション専用の32ステップ・シーケンサー、FX(ディレイ/フランジャー/グラニュラー/Lo-Fi/リバーブ/ROLAND Juno風のビンテージ・コーラス)×3を備え、自由にアサインして使えます。

 ライブラリーやプリセットにはPRESET BROWSERからアクセスします。バンドルされるライブラリーはYAMAHA CS-80、ROLAND Juno-106、Jupiter-8、TB-303、TR-808、TR-909、SH-101、OBERHEIM OB-8、Xpander、SEQUENTIAL Prophet-T8、Pro-One、Prophet-5、KORG Mono/Poly、LINN LinnDrumのほか、FXも含む2.5GB分を24ビット/48kHzで収録。シンセ関連がメインで、順次追加されるとのこと。外部のWAVやMP3も読み込めます。

 プリセットのサウンドは全体的に美しく、非常にセンスの良い、“分かってる”音色が多い印象。エフェクトが秀逸で、アンビエント、シネマティック系のパッドが特に優秀です。ステップ・シーケンサーを使ったトリッキーなリズムのプリセットを流用し、別の音色をアサインするのも面白いです。

使いやすいサンプラーのインターフェース ルーティングの概要が即座に分かるオーバービュー

 音作りは、おおよそ上から下に手順が流れるレイアウトで、任意のサンプラーやオシレーターをクリックするとパラメーターが現れます。割り当てられているサンプル名が鍵盤ごとに表示されるため、レイヤーの状態が分かりやすいです。“どこを使って、どこでループさせるか”も波形を見ながら調整でき、サンプラーとして優秀だと思いました。

サンプラー・セクションはシンプルで、使いやすさが魅力。各サンプルのループ設定のほか、サンプルを縦方向や横方向に重ねるレイヤーも可能

サンプラー・セクションはシンプルで、使いやすさが魅力。各サンプルのループ設定のほか、サンプルを縦方向や横方向に重ねるレイヤーも可能

 シンセ・エンジンは、ANALOGの波形はサイン/三角/ノコギリ/矩形の切り替え。WAVETABLEでは16種の波形が選べ、FM音源では得られない複雑な倍音を含んだ“いかにもウェーブテーブル”なサウンドが楽しめます。カスケード・スキャンはありませんが、SHAPEで数種類のモジュレーションを付加でき、ウェーブ・シェイパーのような効果のものが多いです。1つのオシレーターで2つのオシレーターが鳴っているよなエフェクトもあります。

 ルーティングの自由度が高いシンセは、何と何がつながっているのかを把握するのが困難になります。それを解決するため、FliteではMACRO OVERVIEW/MODULATION OVERVIEWがあります。

MACRO OVERVIEW。画面下に並んだ8つのつまみ(MACRO)にアサインしたパラメーターを一覧で確認することができる

MACRO OVERVIEW。画面下に並んだ8つのつまみ(MACRO)にアサインしたパラメーターを一覧で確認することができる

MODULATION OVERVIEW。モジュレーションの割り当て状況を一覧で確認可能。任意のパラメーターのラベルをクリックすると、そのパラメーターに割り当てられたモジュレーション・ソースやMACROが表示される

MODULATION OVERVIEW。モジュレーションの割り当て状況を一覧で確認可能。任意のパラメーターのラベルをクリックすると、そのパラメーターに割り当てられたモジュレーション・ソースやMACROが表示される

 これらは“どのモジュールが何のパラメーターを動かすために使用されているか”が見渡せる構造。MACROは画面下部に並ぶ8つのつまみのことで、1つのつまみに4つまでパラメーターをアサイン可能。そして、“どこに何がアサインされているか”を示すのがMACRO OVERVIEWです。同様に、MODULATION OVERVIEWではモジュレーションの割り当て状況を一覧できます。なお、MACROに割り当てたパラメーターはつまみ以外では動かせなくなるので、改善を望みたいところです。

 急いで説明しましたが、特筆すべきは動作がとても軽いということ。このメリットは大きいです。それと、やはり音のセンスが良い。広がりのある奇麗な音が得意で、プロが扱うようなプリセットがたくさん入っているので試してみる価値ありです。サンプルやウェーブテーブル音源をレイヤーすることも簡単なので、そういう音作りをしたい方にもいいでしょう。

 

林田涼太
【Profile】いろはサウンドプロダクションズ代表。録音/ミックス・エンジニアとして、ロックやレゲエ、ヒップホップとさまざまな作品を手掛ける。シンセにも造詣が深く、9dwのサポート(syn)としても活動。

 

 

 

WAVEA Flite

16,236円(価格は為替レートによって変動)

WAVEA Flite

REQUIREMENTS
▪Mac:mac OS10.13以降、INTELまたはApple Siliconプロセッサー
▪Windows:Windows 10以降、INTELプロセッサー
▪共通項目:8GB以上のRAMを推奨、64ビットのホスト・アプリケーションのみ対応
▪対応フォーマット:AU、VST3

製品情報

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