「WARM AUDIO WA12 MKII Black」製品レビュー:入力インピーダンス切り替えでトーン・コントロールが可能なマイクプリ

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 優れたコスト・パフォーマンスのアナログ機器を続々リリースし、近年大きな注目を集めているWARM AUDIOより、シングル・チャンネルのディスクリート・マイク・プリアンプ=WA12 MKII Blackが発売されました。以前レビューした同社のBus-Compも価格からは考えられないクオリティの製品でしたので、今回も期待に胸を膨らませチェックしていきます。

カラッとしていて非常に元気な音
ハイクラスのマイクプリとそん色無いクオリティ

 往年のビンテージ機器の再現機を中心にリリースしているWARM AUDIOですが、今回レビューするWA12 MKII Blackは独自のコンセプトに基づくオリジナル機で、メーカーのWebサイトによると、クリーンでフラットな特性ではなく、積極的に色付けをしていくプリアンプとのこと。

 

 それでは仕様を見ていきましょう。1Uハーフ・ラック・サイズの小型設計ですが、持ってみると結構しっかりと重量感があります。それもそのはずで、同社の製品ではもはやおなじみの特注CINEMAG製入出力トランスが採用されているのです。入力は背面にあるXLR端子のマイク入力と、フロント・パネルのハイインピーダンスのアンバランス・フォーン入力の2系統があります。

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リア・パネル。バランス・アウトプット(フォーン&XLR)とマイク・インプット(XLR)が左側に並ぶ

 操作子を見ていきましょう。48Vファンタム電源、PAD、位相反転スイッチと基本的なスイッチが並ぶ中、“TONE”という何やら気になるスイッチが。本機にはEQやトーン・コントロールの類は装備されていないはず、と思って調べてみると、こちらは入力インピーダンスの切り替えスイッチとのこと。通常モードでは600Ωの入力インピーダンスがTONEスイッチをオンにすると150Ωに切り替わり、なおかつ6dBゲイン・アップしてサウンドの質感を変えられる機能となっているようです。これは非常に大きな武器となりそうですね。

 

 そして個人的に大変ありがたいのがインプット・ゲインとは別にアウトプット・トリムが付いていること。これが装備されていると、録音するソースやマイクとの組み合わせで都度変わってくる入力ゲインのおいしいポイントを、常に適正なレベルでDAWやレコーダーに送ることができ、非常に重宝するのです。この価格帯の製品でアウトプット・トリムが装備されているのはなかなか珍しい気がします。インピーダンス切り替えによるトーン・コントロールにしても、このアウトプット・トリムにしても、ビンテージ機器を日々研究し続けている同社ならではの発想でしょう。音を聴く前から感心してしまいます。

 

 それではサウンドをチェックしていきます。まずは宅録でも録る機会が多いであろうアコースティック・ギターから。ひとまずTONEスイッチはオフ、アウトプット・トリムはユニティ・ゲインで、適宜レベルを取っていきます。なお、本機のアウトプット・トリムは最大でユニティ・ゲインです。サウンドの第一印象は、カラッとしていて非常に元気な音。普段使用しているハイクラスのマイクプリと比較してもそん色無いクオリティで、5万円台で購入できる製品とはとても思えないほどです。音のスピード感が速く、高品位なサウンドでした。

 

リボン・マイクとTONEスイッチの組み合わせで
アコギの音がややビンテージな質感に

 次にTONEスイッチもチェック。これが思った以上に質感が変化します。オンにすると、オフと比べ上下のレンジ感がややナローでナチュラルな感じになり、ミッドレンジがやや張り出してくる印象。スタンダードなコンデンサー・マイクとしてNEUMANN U87を併用してみたところ、今回の楽器とマイクの組み合わせではTONEスイッチ・オフの方が好印象でした。インピーダンス切り替えによるトーン・コントロールなので、マイクとの組み合わせで印象が変わるのでしょう。

 

 ということで、リボン・マイクでもチェックしてみました。チョイスしたのは現代のリボン・マイクとしてはスタンダードなROYER LABS R-121。まずはTONEスイッチ・オフでチェックしてみます。これも大変好印象。深みのあるアコギの良い音が録れています。そしてTONEスイッチをオンにしてみたところ、U87のときと比べて今度はとても良い印象。語弊を恐れずに言うと、ややビンテージな質感に早変わりしました。今回は甲乙付けがたいです。

 

 とは言っても、コンデンサー・マイクではTONEスイッチ・オフ、リボン・マイクではオンが必ず良いというわけではなく、あくまで録音するソースとマイクとの相性なのでしょう。実際に耳で確かめて、好みの方をチョイスすると良いかと思います。一粒で二度おいしいといった感じです。

 

 次に歌でも使用していきます。マイクは変わらずU87で、男性ボーカルをソースにチェックしてみます。これもなかなか好印象。こちらはTONEスイッチ・オフが良く、ナチュラルな質感で録れました。ぜいたくを言うと、ローミッドの色気がもう一息あると最高なのですが、価格を考えると十分過ぎるほどのクオリティです。ノー・コンプ/ノーEQでこの質感なら、実戦でも選択肢に入れてみたくなります。

 

 最後にハイインピーダンスのインストゥルメント入力をエレキベースでチェックしてみます。こちらはややモダンで派手めな質感。このHi-Z入力にもTONEスイッチは効くようなので、早速チェックします。今回の組み合わせではオンの方が好印象でした。チェックで使用した楽器にはこちらの方が相性が良かったのでしょう。いずれのモードも、どちらかと言うとロック寄りで元気なベースの録音に合いそうなサウンドです。

 

 いろいろとチェックしてみましたが、予想通りの優れたコスト・パフォーマンスのマイクプリだと感じました。小型で持ち運びも楽なので、お気に入りのマイク1本とモバイルのDAWシステム、そしてこのWA12 MKII Blackを持ってハイクオリティなモバイル・レコーディング、なんていうのも可能です。安価で素晴らしい製品を作り続けるWARM AUDIOに、今回も感服です!

 

大野順平
【Profile】スタジオ・サウンド・ダリ所属のエンジニア。中田裕二、福原美穂、SUGIZOらの作品を数多く手掛けるほか、baroqueや榊いずみ、浜端ヨウヘイ、叶和貴子といったアーティストにも携わる。

 

WARM AUDIO WA12 MKII Black

オープン・プライス

(市場予想価格:54,800円前後)

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SPECIFICATIONS
▪チャンネル数:1(モノラル) ▪ゲイン:71dB ▪入力インピーダンス:600/150Ω ▪OPアンプ:1731スタイル(6ピンの2520にリプレイス可能) ▪入力端子:メイン・イン(XLR/TRSフォーン・コンボ)、インスト・イン(フォーン) ▪出力端子:XLR端子、TRSフォーン端子 ▪外径寸法:216(W)×42(H)×276(D)mm(実測値) ▪重量:2.1kg(実測値)

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