【編集部レビュー】Apollo Twin X | Gen 2 〜飛躍的に出音が向上した新世代オーディオインターフェース

Apollo Twin X Gen 2

 UNIVERSAL AUDIOからApollo Xの新モデルが登場した。Gen 2(Generation 2)と呼ばれる、初代のApolloから数えて第4弾のこの新Thunderboltオーディオインターフェース。早速Apollo X Twin DUO | Gen 2をお借りできたので、速報的にインプレッションをお届けしたい。

製品リリースはこちらから。

プラチナを思わせるシルバー系カラーにチェンジ

比較用のApollo Twin X(Gen 1)。2018年リリース

比較用のApollo Twin X(Gen 1)。2018年リリース

 まず外観上、先代(Gen 1)のApollo Xと大きく変わったのはボディカラー。Gen 1のクロームがかった濃いめのメタリックグレーから、プラチナを思わせるシルバー系へとチェンジした。そしてボタン類の形状が、四角から楕円に変更されている。

Apollo Twin X Button
Apollo Twin X Gen 2 Button
Gen 1(左)までは四角だったボタンが、Gen 2(右)では楕円形へと変わった。細かいところではメインのノブ外周のカラーも変更されている

 とはいえ、本体上のノブやボタンの配置、サイズ、入出力端子の位置は変わっておらず、これまでのApolloに慣れたユーザーはそのままリプレースしても何の違和感もなく操作できる。

 実は、Apollo X | Gen 2の中で、先行してリリースされているモデルがあった。Dante対応のApollo x16Dがそれだ。既にこの新しいGen 2のボディカラーとボタン形状をまとっていたわけで、Apollo Xシリーズの刷新を予告していたとも言える。

Dante対応のApollo X16D。他のGen 2モデルに先駆けて発表されており、Gen 2のデザインと音質面でのアップデートをいち早く採用している

Dante対応のApollo x16D。他のGen 2モデルに先駆けて発表されており、Gen 2のデザインと音質面でのアップデートをいち早く採用している

“Gen 1に戻したくない” スペック以上に大きい出音の更新

 Gen 1からGen 2へのアップデートで、特に気になるのは出音=出力のサウンドだ。DACチップの変更などで大きく向上し、ダイナミックレンジの向上やノイズ低減を図ったと事前に伺っていたが、スペックでは確かにそれが見られるが、正直どれほどのものかと半信半疑だった。というのも、6年前にリリースされたGen 1でもそれ以前のApollo MK2ファミリーからアウトプット系が大きく改善され、多くのプロがその実力を認めるところとなったからだ。

Apollo Twin XにおけるGen 1とGen 2の比較表。ダイナミックレンジ(DNR)、全高調波歪率(THD)ともに向上している項目が多く、特に出力系に顕著

Apollo Twin XにおけるGen 1とGen 2の比較表。ダイナミックレンジ(DNR)、全高調波歪率(THD)ともに向上している項目が多く、特に出力系に顕著

 今回お借りしたのはApollo Twin X DUO | Gen 2で、同Gen 1と比較してみたが、出音のアップデートは数値で見るスペック以上に非常に大きなものであった。

UAD Control Panelにも「Gen 2」と表示される

UAD Control Panelにも「Gen 2」と表示される

 まずはスピーカーでの試聴から。普段から愛聴している曲をいくつかチョイスしてみると、低域、高域とも大きく改善しているように感じた。

 低域側では、ボトムの量感が増しているように聴こえる。例えば5弦ベースのローエンドの量感や音程感がよりはっきり分かる。

 一方高域側は、レンジが広がって、空間が広くなったような印象だ。解像度が増してアタックの再現力も上がり、今まで意識しなかったブレスやハイハットのペダルワークの細かさなどに気がつく。コーラスパートの解像度が上がり、今まで“コード”として認識していた1本1本のラインが見えるように聴こえてくる。

 解像度の向上は全体的にも言え、これまでほかの音に埋もれがちなピアノの弱音も、きちんと譜面に書かれているかのように聴き取れたケースもあった。

Apollo Twin X(Gen 2)のリア・パネル。UNISON対応のアナログ入力×2系統、ライン出力4系統、オプティカル入力(ADATまたはS/P DIF)1系統で、レイアウトはGen 1と全く変わらない

Apollo Twin X Gen 2のリア・パネル。UNISON対応のアナログ入力×2系統、ライン出力4系統、オプティカル入力(ADATまたはS/P DIF)1系統で、レイアウトはGen 1と全く変わらない

 高域のレンジが伸びた分、全体の出音は多少端正になったように感じる。Gen 2に比べると、Gen 1は(誤解を恐れずに言えば)まとまりのあるロック的な出音のかもしれない。リスニング用としては好みが分かれるかもしれないが、制作のモニタリング用として考えるとGen 2の精緻な表現力は大きな魅力だ。Gen 2の出音を聴いてしまうと、個人的にはGen 1に戻したくないと思ってしまう。

ヘッドホンでの定位感や解像度も向上

 続いてヘッドホンでも試聴してみた。使用したヘッドホンは近年リリースの開放型モニター用モデルで、インピーダンスも低く、レンジが広いモデルだ。

 これもモニターでの試聴=メインアウトと同傾向にあるというのが率直な印象。比較すると、Gen 1はやや中域の密度が高く、前に張り出して感じる。それに対してGen 2はアタックがはっきりしているからか、定位がよく分かる印象だ。木管楽器の音がよりありありと感じられるのも、倍音部分の情報量や再現性の高さによるところだろうか。ローエンドのピッチもよく聴き取れるので、ベースとキックとの関連性もよく見える。

 面白いのは、Gen 1よりGen 2の方がヘッドホンボリューム設定を上げたくなる点だ。Gen 2と同じ音量設定だと、Gen 1では中域の密度に寄っているからか少しうるさく感じられる。適正と感じられる音量設定は、本体上の表示で1/2目盛りほどの差だった。

 総じてモニターの音は、メインもヘッドホンも大きく変わった。Gen 1も、発売された当時はそれ以前のオーディオインターフェースに比べて解像度が高く、かつ音楽的なサウンドだと感じたが、Gen 2の表現力はそれを大きく上回る。これが6年の間の技術革新だと思うと、“基準はアップデートされゆくもの”だと感じざるを得ない。

オートゲインやSound ID Referenceとの統合も

 さて、音質面だけではなく、機能面での向上もApollo X Gen 2のトピックだ。

「AUTO-GAIN」ボタンを押すと、設定ウィンドウが開く。ターゲットレベルや測定時間などを選択可能だ

「AUTO-GAIN」ボタンを押すと、設定ウィンドウが開く。ターゲットレベルや測定時間などを選択可能だ

 その一つは入力音量を自動調整するオートゲイン。UAD Consoleソフトウェア上の「AUTO-GAIN」ボタンを押すとダイアログが表示され、入力信号に合わせて適切なゲインへと自動調整してくれる。測定時間やターゲットとする音量も指定可能だ。ただし、AUTO-GAINの設定は、選択した全チャンネル共通となっている。

 最も有効活用できるのは、ドラムなどのマルチマイク録音だろう。その意味ではこの機能が最大に生かせるのは、Apollo x8p Gen 2での録音時だと思う。

 ただ、Apollo Twin Xのような入力数の少ないモデルであっても、例えばギターの入力ゲインを決めるときのように手が塞がっている際に、ゲインを自動で決めてくれるのは便利だ。

 また、モニターコントロール機能も向上。モデルごとの出力数に依存するが、最大9.1.6chのイマーシブ環境でのモニター管理も行える。今回お借りしたApollo Twin X Gen 2ではイマーシブやサラウンド制作には出力が足りないが、サブウーファーを含めたシステムに合わせてクロスオーバー周波数の設定が行えるようになっていた。

MONITOR CONTROLLER画面ではベース・マネージメントも可能となった

MONITOR CONTROLLER画面ではベース・マネージメントも可能となった

 さらに、近日中にはSonarworks Sound ID Referenceと組み合わせ、Apollo XのDSPで測定結果に基づく補正=Apollo Correctionを行えるようになるという(専用イネーブラーを追加購入する必要あり)。この機能はApollo X(Gen 1)でも有効となるようだ。

Apolloを選択する理由に“音”も加わる

 総じて、Apollo Twin X | Gen 2は、特に出力系統の刷新によってよりモダンなサウンドに仕上がり、制作やミックスで判断の手がかりとして使うツールとしては、確実にランクアップした。Gen 1も決して悪くはなかったが、6年という時間がもたらした進化は確実にある。

 プリアンプをハードウェアとソフトウェアの両方でエミュレーションするUNISONや、UADプラグインのかけ録り/モニターができることなど、Apolloならではの魅力で選択してきたユーザーも多いだろう。数々のアウトボードを再現したプラグインはもちろん、ANTARES Auto-Tune Realtimeでのピッチエフェクト(モデルによってグレードが異なるが、全Apollo X | Gen 2モデルにAuto-Tune Realtimeが付属する)やC-Suite C-Vox(別売り)での背景ノイズ抑制などのリアルタイム処理はApolloの大きな魅力となっている。

Auto-Tune Realtime Advanced
C-Suite C-Vox
ANTARES Auto-Tune Realtime Advanced(左)。Apollo Twin X|Gen 2では上位バンドル付属のStudio+ Editonに付属(Essentials+ EditonにはAuto-Tune Realtime Accessが付属)。C-Suite C-Vox(右:別売り)は声に特化してマイクに乗るノイズを抑えるプラグインで、配信者にも人気

 そんな機能面の利点でApolloに惚れ込んで選択しているユーザーも多いと思うが、Gen 2では“音でもApolloを選ぶ”という判断をするユーザーが増えるのではないか。そんなアップデートだと感じた。

バンドルされるプラグインも新ラインナップに

 Apollo Twin X | Gen 2は、ハードウェアとしては2コアSHARC DSPを搭載したDUO、4コアSHARC DSPを搭載したQUADの2タイプが用意される。そして、それぞれバンドルされるプラグインによってEssentials+ EditionとStudio+ Editionの2パッケージがある。

Essentials+ Edition

Essentials+ Edition

 Essentials+ Editionには20種類以上のプラグインがバンドルされている。Apollo x16Dの発表会で言及されていたが、「+」はANTARES Auto-Tune Realtimeをバンドルしたという意味。UADプラグインで最も人気があるのがAuto-Tune Realtimeだという。Essentials Editionでは基本機能を押さえたAuto-Tune Realtime Accessが付属する。

Studio+ Edition

Studio+ Edition

 一方、Studio+ Editonは50種以上のプラグインが付属する。こちらも「+」とあるように、ANTARES Auto-Tune RealtimeはAccessに加えて上位版のAdvancedが収録されている。

 既にUADプラグインをたくさん持っているのであればEssentials+、逆にこれからUNISONやUADプラグインの真価を味わってみたいのであればプラグイン数の多いStudio+といった選び方ができるようになっている。

 

 

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