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TOONTRACK EZ Mix 3 レビュー:プリセットを選ぶだけでミックス/マスタリングができるプラグインの最新版

TOONTRACK  EZ Mix 3 レビュー:プリセットを選ぶだけでミックス/マスタリングができるプラグインの最新版

 EZ Mixは、TOONTRACKが開発したオールインワンのミックス/マスタリング用ソフトです。プリセットを選ぶだけでEQ、コンプなどのダイナミクス系エフェクトから空間系エフェクトまでが適用され、“EZ”の名の通り簡単にミックス/マスタリングを完結することができます。ジャンルに合わせたさまざまなプリセット・パックも発売されているため、幅広いスタイルに対応可能です。最新版のEZ Mix 3は、AI技術を活用し、より“かゆいところに手が届く”ソフトとなっているようです。今回はEZ Mix 3と、基本のプリセット・パックであるCore Packを使ってその実力を測ってみました。

直感的にプリセットを選べるSimilarity。Map AIによる自動プロセッシング機能も搭載

 EZ Mix 3をパソコンにインストールすると、プラグイン版とスタンドアローン版を使用できるようになります。プラグイン版はMac/Windows対応のAAX/AU/VSTプラグインとしてDAWの各トラックやバスにインサートして使い、スタンドアローン版はオーディオI/Oへの入力をリアルタイムにプロセッシングして出力可能です(ステレオ仕様)。スタンドアローン版は、ミックスやマスタリングよりはライブ用途に向けられている印象です。試しにピアノ音源やドラム音源を鳴らしながらいろいろなプリセットを使用してみたところ、動作は快適で、レイテンシーが気になることもありませんでした。

 続いて、本命であるプラグイン版を使っていきます。今回は30trで構成された楽曲をミックスしてみました。まずは各トラックの調整ですが、やることは単純明快。

 ・DAWの各トラックにEZ Mix 3をインサート

 ・Quick Start画面で楽器を選択

トラックにEZ Mix 3をインサートすると立ち上がるQuick Start画面。ここで“Instrument”と“Mastering”から用途を指定する

トラックにEZ Mix 3をインサートすると立ち上がるQuick Start画面。ここで“Instrument”と“Mastering”から用途を指定する

 ・Similarity Map画面でプリセットを切り替えながら、意図したサウンドに近いものを選ぶ

プリセット選択を行うSimilarity Map画面。マップ上の各ドットがプリセットを示しており、クリックするとプリセットが切り替わる。画面下に表示される各種パラメーターもグラフィカルで、直感的に調整していくことが可能。またプリセットによってはAnalyze Trackというボタンが表示される(赤枠)。ここを押してプロジェクト・ファイルを再生すると、各トラックの音量やEQ、リミッティングを自動で処理するなど、AIを生かした機能が適応される

プリセット選択を行うSimilarity Map画面。マップ上の各ドットがプリセットを示しており、クリックするとプリセットが切り替わる。画面下に表示される各種パラメーターもグラフィカルで、直感的に調整していくことが可能。またプリセットによってはAnalyze Trackというボタンが表示される(赤枠)。ここを押してプロジェクト・ファイルを再生すると、各トラックの音量やEQ、リミッティングを自動で処理するなど、AIを生かした機能が適応される

 ・GUI下部に表示されたパラメーターを微調整

 以上で各トラックの処理が終了です。なお、プリセットの検索の際、Similarity Mapが使いにくいと感じる場合は、キーワードでプリセットを絞り込むことも可能です。各トラックの処理が終わったら、ドラムやバッキングをそれぞれバスにまとめて各バス用のプリセットを割り当て、最後にマスター・トラックでマスタリング用のプリセットを選択します。なおプリセットによってはAnalyze Trackというボタンが現れます。これを押してプロジェクトを再生すれば、AIが楽曲の傾向に合わせて自動で高度な処理を施してくれます。

 ここまでを繰り返しただけで、楽曲がサクッとまとまってきました! ミックスに要した時間はわずか40分! デモとして出せるくらいのクオリティで、音圧も十分です。なお、この間、いわゆるEQやコンプレッサーの画面は一切出てきていません。すべてはプリセットの選択と、GUI下部のわずかなパラメーターのみで調整することになります。

 ここまでのように、非常に少ないステップで簡単にミックス/マスタリングを完結できるのがEZ Mix 3の特長です。しかもAIを活用することで、仕上がりのクオリティのブレが少なくなるのもいいですね。ミックスに慣れていない初心者の方だけでなく、時間に追われるプロ・クリエイターの時短ツールとして、また“自分の専門外の楽器はEZ Mix 3に任せる”といったピンポイントな使い方もいいかと思いました。

“分かっている”感がある各楽器用のプリセットと60種類を超える別売りの拡張パック

 ここからは、EZ Mix 3に標準搭載されるCore Packのプリセットの特徴や傾向を掘り下げていきます。ピアノ用プリセットである“Piano in the Mix”は、ピアノのトラックに挿すだけで、オケの中でキラキラ輝く“埋もれない”ピアノになりました。いわゆるポップス的なキラキラしたピアノは自分で作ろうとすると案外難しく、一歩間違うと固くて調和しない音になりがちです。しかしEZ Mix 3はピアノの音色からうまくキラキラ要素を取り出してまとめてくれている印象です。

 ギターやベースのトラックについても、プリセットを選ぶだけで“分かっている”雰囲気の音にしてくれます。ギター/ベースの場合はAIモデルによるアンプ/エフェクターのシグナル・チェーンを自動で設定するプリセットも搭載されており、よりリアルで実用的な音色作りが可能です。筆者含むギターが専門外の人には、大変ありがたいですね。少し驚いたのがドラム用のプリセット。スネアのトップとボトムで別のプリセットが用意されており、ドラムのミックス・プロセスをよく理解しているなと感じました。また、リバーブ/ディレイのみのプリセットなども用意されていますので、空間系エフェクトまでEZ Mixで完結できます。Core Packについてまとめると、全体的に汎用性重視のものが多く、特定のジャンルに特化したプリセットやバラードやピアノ・ソロ、弾き語りなど、少ないトラックでしっとりと聴かせる系のプリセットはそれほど多くない印象です。しかし“足りないな”と感じるところは、拡張パックを購入することでカバーできます。本稿執筆時点で66の拡張パックがリリースされているので、ジャンルに合わせてさまざまなテイストのミックス/マスタリングを仕上げることができるでしょう。

 今まであまりこういうツールに触ってこなかったのですが、パッと“そういうことだよ!”というサウンドにたどり着けるので、正直驚きました。挿すだけで即戦力的なサウンドが得られるので、ミックスの心得がある方でもさらに攻めたサウンドを作ることが可能でしょう。拡張性も含め、初心者はもちろん、プロのミュージシャン、エンジニアでも長く活用可能だと感じました。

 

かごめP
【Profile】レコーディング・スタジオで働く傍ら、2009年にボカロPとして活動を開始。ボカロの活動以外にも、さまざまなアーティストのミックス/エンジニアリングを手掛けている。

 

 

 

TOONTRACK EZ Mix 3

18,700円

TOONTRACK  EZ Mix 3

REQUIREMENTS
▪Mac:macOS 10.13/10.14/10.15/11(INTEL CPU/ARM)/12(INTEL CPU/ARM)/13(INTEL CPU/ARM)/14(INTEL CPU/ARM)
▪Windows:Windows 10/11
▪共通項目:8GB以上のRAM、64ビット版OSのみ対応
▪対応フォーマット:VST、AU、AAX、スタンドアローン

製品情報

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