イタリアを拠点とするエフェクト・メーカー、SURFY INDUSTRIESのアンプ・エミュレート/プリアンプ・ペダル。アナログ回路設計にこだわりながら、FENDERのブラウン・フェイスとブラック・フェイスのサウンドをコンパクトな筐体とシンプルな操作性で実現。VINTAGE EQボタンでは古い真空管ギター・アンプのインピーダンスを再現し、より往年のサウンドに近い音を得ることができる。そのほか、ブラウン・フェイスのビブラート・チャンネルを基にしたトレモロ機能も備える。
極めてナチュラルかつ立体感のある音
SurfyManの最大の特徴は、ブラウン・フェイス期のShowmanとブラック・フェイス期のDeluxe Reverbをエミュレートしたサウンド・キャラクターをスイッチで切り替えられる点にあります。さらにVINTAGE EQスイッチを搭載し、現代的なトーンからビンテージ・サウンドまで幅広く対応可能。リバーブは非搭載ですが、これは同社のSurfyBear Compact Deluxeなど、高品質なリバーブ・ユニットと組み合わせて使ってもらう前提で設計されているためだと思われます。こういった割り切りも潔い選択だと言えるでしょう。
サウンドの第一印象は極めてナチュラルで、いわゆるライン録音でありがちな平面的な音にならず、立体感のあるリアルなトーンを得ることができました。ノブの効き方は非常に自然で、急激な変化もなく、イメージ通りのトーンにスムーズに近づけることができます。どの設定においてもバランスの取れた音色が得られる点は、SurfyManの大きな魅力だと思いました。
音量調節はVOLUMEとMASTERの2段構えで、VOLUMEを上げるとFENDERのアンプをほうふつさせる自然なクランチ・トーンを引き出すことができます。特にシングル・コイル系ギターとの相性は素晴らしく、サチュレーションが豊かな甘いクランチ・サウンドが得られました。ピッキングやフィンガリングのニュアンスにも素直に反応するため、ニュアンス重視のギタリストには特にお勧めできます。また、トレモロの揺れ方も非常に滑らかで、極上のトレモロ・サウンドを楽しむことができました。質感がとにかく素晴らしく、このトレモロだけでも本機を使う価値があると思います。
出したい音へ直感的にたどり着ける
近年、ギターのライン・レコーディング用のプリ・アンプが多数登場していますが、その多くはデジタル・モデリング技術を駆使していて、IR機能なども含めデジタルならではの多彩な音作りが可能です。それに比べるとSurfyManはシンプルそのもの。メーカー側の回答によるとアナログ回路で構成されているそうです。“なじみの良い極めて自然な音色”がアナログ回路によるものかどうかについてはいろいろな意見があると思いますが、何よりもアナログ回路でここまで実機をほうふつさせる音色にまで追い込んでいる技術と姿勢に驚愕しました。
SurfyManはディスプレイや複雑なパラメーターが一切ないシンプルな操作系統ゆえに、演奏しながらでも直感的に“出したい音”にたどり着けるのが大きな魅力です。宅録/ライブ演奏問わず、極めてナチュラルな音色が得られるという点で、右手のピッキングや左手のコントロールで微妙なニュアンスを表現したいギタリストにとって、SurfyManは最適解の一つであると思いました。
宮脇俊郎
1965年兵庫県生まれ。23歳頃からプロ・ギタリストとして活動を開始。『できる DVDとCDでゼロからはじめる エレキギター超入門』『ギター基礎トレ365日!』など、多くの教則本/映像を手掛ける。
SURFY INDUSTRIES SurfyMan
オープン・プライス
(市場予想価格:54,780円前後)

SPECIFICATIONS
⚫入力:TSフォーン ⚫出力:TSフォーン(OUT)、TS/TRSフォーン(LINE OUT)、ヘッドホン・アウト(ステレオ・フォーン) ⚫パラメーター:MASTER、PRESENCE、INTENSITY、SPEED、BASS、TREBLE、VOLUME ⚫スイッチ:PAD(−20dB、LINE OUT)、VINTAGE EQ ⚫外形寸法:230(W)×40(H)×115(D)mm ⚫重量:0.8kg