「SPL Marc One / Phonitor One D」製品レビュー:32ビット/768kHz対応のモニター・コントローラーとヘッドフォン・アンプ

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Marc One(写真上)、Phonitor One D

 

 ドイツに拠点を置くブランドSPLから、今回新しく発表されたモニター・コントローラーのMarc One、そして高品位ヘッドフォン・アンプ/DAコンバーターのPhonitor One Dが届いた。早速試してみよう。

両者共に重厚で高級感のあるボディ
Marc OneはオーディオI/O機能を搭載

 Marc OneとPhonitor One Dは、両者共に重厚なブラックのサテン仕上げで高級感がある。Marc Oneのフロント・パネルには、スピーカー出力A/Bの切り替えスイッチ、操作性の良い大型のモニター・ボリューム・ノブ、ステレオ/モノ/左右反転の切り替えスイッチ、オーバー・レベル・インジケーター、ライン・イン1/2とUSB入力のミックス・ノブ、ヘッドフォン・ボリューム・ノブ、後述するCrossfeed調整ノブ、そしてヘッドフォン・アウト(ステレオ・フォーン)を装備。リア・パネルを見ると、スピーカーAの出力にはサブウーファーも接続できることが分かる。

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Marc Oneのリア・パネル。左側のSettingsセクションでは、スピーカー出力を−10dBアッテネーションしたり、ライン・イン1と2を同時入力することが可能だ。そのほかライン・アウトL/R(フォーン)、2系統のスピーカー出力L/Rとライン・インL/R(いずれもTRSフォーン、フォーン)、コンピューターやiOSデバイス接続用のUSB端子(Type-B)を備える。なお、スピーカーAにはサブウーファー用の出力(TRSフォーン)も搭載している

 一方、Phonitor One Dのフロント・パネルにはMarc Oneと同形のモニター・ボリューム・ノブのほか、ライン・イン1/2/USB入力の切り替えスイッチ、そして同じくCrossfeed調整ノブとヘッドフォン・アウト(ステレオ・フォーン)が備えられている。至ってシンプルな仕様だ。

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Phonitor One Dのリア・パネル。左からライン・アウトL/R(TRSフォーン)、ライン・インL/R(RCAピン、TRSフォーン)、USB端子(Type-B)

 なお、両機共にPCMでは32ビット/最高768kHz、DSDでは最高11.2MHz(DSD256)に対応するAD/DAコンバーター(Phonitor One DはDAコンバーターのみ)を搭載し、AKM AK4490チップを内蔵。Marc Oneは、2イン/2アウトのオーディオI/O機能も搭載する。アンプはクラスAB回路を採用するため、高音質でのモニタリングが可能だろう。

 

 ここからは実際に試聴しながら、両者の特徴についても詳しく触れていく。テストで用いる音源は、プロデューサー本間昭光氏とともに進行中のプロジェクトの一つで、新進気鋭の天才アーティスト、映秀。の楽曲。管楽器や弦楽器、ピアノの繊細なピアニッシモ部分から、ハードなディストーション・ギター、ダイナミックなドラムまで、さまざまサウンドが共存するナンバーだ。この音源をコンピューターから直接両者にUSB入力、またはD/Aしてライン・インしたときの2通りで試聴。モニタリング時は、レコーディング・スタジオ定番ヘッドフォンとハウジングに厳選木材を用いた国内音響機器メーカーのハイエンド・モデルを使用する。

 

不自然な頭内定位を解消するCrossfeed機能
伸びやかな高域と分離が良い低域

 Marc Oneは、極めてハイファイな音でモニタリングを実現する。また、ヘッドフォンにおける不自然な頭内定位を解消するCrossfeed機能が搭載されているため、スピーカーとヘッドフォンにおけるミックスの差異を最小限に抑えることができるだろう。ゆえにMarc Oneは、ヘッドフォン環境でも快適に作業できる便利なモニター・コントローラー&オーディオI/Oだと感じた。

 

 さらに、フロント・パネル中央やや左に位置するステレオ/モノ/左右反転スイッチを用いることで、精度の高いミックス・バランスの確認が行える。使用中にオーバーロード・インジケーターが点灯することがあるが、最大22.5dBuもゲインを得られるため、そうそうひずむことは無いだろう。

 

 次はPhonitor One D。Marc Oneと共通して感じるのは、とにかく“ハイファイ”ということ。高域はツヤ良く伸びやかで、低域は分離が良くお見事。音の芯の部分まできちんと再現している。また、楽曲に登場する管楽器や弦楽器の旋律はきめ細かく、ローエンドは引き締まっていて高密度。倍音成分までしっかりと聴き取れる。押し出し感もあり実にリッチなサウンドだ。

 

 Phonitor One Dは、すべての場面において楽曲の音像を破たんすることなく、むしろ余裕を持って悠々と再現してくれる。この印象は、USB入力/アナログのライン入力において大きな差は無い。よってPhonitor One Dは、プロフェッショナル・オーディオ・ユーザーだけでなく、ハイエンド・オーディオのユーザーをも充分に満足させられる高品位なヘッドフォン・アンプだと言えるだろう。

 

 車はMERCEDES-BENZ、カメラはLEICA、オーディオ機器はOCTAVE……と、自他共に認めるドイツ製品信奉者であり愛好家である筆者だが、今回の2製品もドイツ製品らしく高精度かつ無駄のない作り。最近の機器としては珍しいくらい上質なアナログ・サウンドを聴かせてくれた。特にPhonitor One Dは、筆者の仕事道具としてはもちろん、趣味のオーディオ機器の一つとしても加えたい気持ちだ。

 

山内"Dr."隆義
【Profile】井上鑑氏や本間昭光氏、服部隆之氏らがプロデュース/編曲する作品に従事し、長きにわたりJポップを支えるレコーディング・エンジニア。近年はその経験を生かした80’sサウンドに傾倒中。

 

SPL Marc One / Phonitor One D

オープン・プライス

(市場予想価格/Marc One:87,800円前後、Phonitor One D:76,800円前後)

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SPECIFICATIONS
●Marc One
▪ダイナミック・レンジ:117dB(ヘッドフォン) ▪重量:1.55kg

●Phonitor One D
▪重量:1.45kg

●共通項目
▪周波数特性:10Hz~200kHz(−3dB) ▪ダイナミック・レンジ:121.5dB(A/D)、113dB(D/A) ▪最大入力ゲイン:+22.5dBu ▪最大出力ゲイン:+22dBu ▪全高調波ひずみ率:0.002%(0dBu、1kHz) ▪ヘッドフォン出力ノイズ:−97dB(A-weighted、600Ω) ▪クロストーク:−75dB(1kHz、600Ω) ▪外形寸法:210(W)×49.6(H)×220(D)mm

REQUIREMENTS
▪Mac:USBクラス・コンプライアント対応
▪Windows:Windows 7/8/8.1/10 up to 2009/20H2(32/64ビット)

 

製品情報

www.electori.co.jp

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