SOLID STATE LOGIC SSL2 MKII レビュー:録音スペックと利便性が向上した小型USBオーディオI/Oの次世代モデル

SOLID STATE LOGIC SSL2 MKII レビュー:録音スペックと利便性が向上した小型USBオーディオI/Oの次世代モデル

 発売時に、“あのSOLID STATE LOGICからオーディオI/Oが発売された!”と話題になったSSL 2とSSL 2+。その後継機の登場です。2イン/2アウトのSSL2 MKIIと2イン/4アウトのSSL2+ MKIIがラインナップされており、今回はSSL2 MKIIをレビューしていきます。筆者は専門学生のとき、初めてSSLの実機に触った感触を今でも覚えています。業界で愛されるサウンド、ブランド、安心を低価格で手に入れられるようになった時代の変化に驚かされます。

扱いやすく配置変更された入出力端子

 SSL2 MKIIはMac/Windowsをサポートし、最高32ビット/192kHzでの録音に対応するオーディオI/Oで、USBバス・パワーで駆動します。

 前代機に比べかなりユーザー・フレンドリーになった入出力周りから見ていきます。SSL 2は入出力をすべてリア・パネルにまとめていましたが、SSL2 MKIIではフロント・パネルにヘッドホン端子(ステレオ・フォーン)とHi-Z端子(フォーン)が2つずつ配置されています。

フロント・パネルの端子類。左からHi-Z入力1/2(フォーン)、ヘッドホン出力1/2(ステレオ・フォーン)

フロント・パネルの端子類。左からHi-Z入力1/2(フォーン)、ヘッドホン出力1/2(ステレオ・フォーン)

 自宅の机の上に置くことを考えると、ケーブルの取り回しが容易になり、接続も簡単になりました。なお、2つのヘッドホン出力のボリューム・コントロールは共通ですが、シリーズ機のSSL2+ MKⅡでは個別に調整でき、自宅にミュージシャンや友人を招いてレコーディングを行う際、それぞれ違うボリュームでモニター可能です。

同時発売のSSL2+ MKII(オープン・プライス:市場予想価格45,980円前後)。こちらは2イン/4アウトで、2つのヘッドホン出力は個別でボリューム調整可能。リア・パネルにMIDI IN/OUTも装備する

同時発売のSSL2+ MKII(オープン・プライス:市場予想価格45,980円前後)。こちらは2イン/4アウトで、2つのヘッドホン出力は個別でボリューム調整可能。リア・パネルにMIDI IN/OUTも装備する

 リア・パネルには、パソコン接続用のUSB-C端子、ライン出力L/R(TRSフォーン)、マイク/ライン入力1/2(XLR/フォーン・コンボ)が配置されています。

リア・パネルの端子類。左上にUSB-C端子、中央にライン出力R/L(TRSフォーン)、その右にマイク/ライン入力2/1(XLR/フォーン・コンボ)

リア・パネルの端子類。左上にUSB-C端子、中央にライン出力R/L(TRSフォーン)、その右にマイク/ライン入力2/1(XLR/フォーン・コンボ)

ハイパス・フィルターを新規搭載

 トップ・パネルには、入力1/2のコントロール・セクションとモニター・ボリューム・ノブ、後述のMIXつまみ、ヘッドホン・ボリュームつまみなどが配置されています。入力1/2のコントロール・セクションには、ファンタム電源スイッチやライン・レベルへの切り替えスイッチ、前代機で話題になった4Kスイッチのほかに、ハイパス・フィルター・スイッチも搭載。録音や配信をする際に不要な帯域をカットできるので、本機の想定ユーザーのニーズに応えた改良点と言えるでしょう。

 また個人的に、筐体の質感も大きな魅力。高級感あるアルミ・フレームに加え、高品質な可変抵抗器を使用したノブ類を回したときの滑らかさも、機材好きとしては評価できます。ボリューム・ノブが大きい点も良く、モニター・コントローラーのような見た目から、ワクワク感や満足感が得られました。

マイクプリは癖がなく引き締まったサウンド

 筆者が普段使っているDAWからさまざまなジャンルの曲を再生し音質をチェックしてみます。ヘッドホン出力については、癖や色付けのないクリーンさ。ライン出力からの出音に関しても、ひずみ感が少なく、高域から低域までワイド・レンジなのが印象的です。SSLならではの音質で、この価格帯で得られることが考えられないほどの出来だと感じました。

 続いて、32ビット/192kHzでボーカルとアコギをマイク録音しました。使用したマイクは真空管コンデンサー・マイクです。ボーカルの録り音は癖がなく締まった印象で、こちらも低域から高域まできちんと伸びた奇麗なサウンド。アコギはピッキングのニュアンスがしっかりと捉えられ、後処理する際にも扱いやすそうです。

 前代機種にも搭載されていた4Kスイッチは、大型スタジオに導入されていたコンソールSL4000シリーズのマイクプリに似た色付けができると話題になりました。今回使用してみた感想は、クリーンでありながら、SSL特有の“音が前に飛んでくるような感覚”を簡単に得ることができます。周波数特性としては、単に高域が持ち上がったというよりも、少しサチュレートされて、倍音が増え、特にボーカルやギターなど自宅で録音することが想定されるソースは、録りの段階である程度サウンドを追い込める印象。かなり使いやすく、SSLの気合いが感じられる機能だと思いました。

 さらにかなり評価できるのが、トップ・パネル右上にあるMIXつまみです。このつまみは、パソコンからの出力とオーディオI/Oへの入力をどのくらいの配分で混ぜてモニターするかを簡単に調整できるもの。筆者はクライアントの方がセルフ録音したボーカルのデータを扱うことがよくあるのですが、モニター・バランスがうまく調整できていないことが理由で、あまり質が高くないデータが送られてくることも少なくありません。MIXつまみは、そういった初心者にありがちなモニター・バランスの問題解決に寄り添った機能です。

LiveやMelodyneの簡易版などが付属

 そして自宅録音を始めたばかりのユーザーにとってうれしいのが、付属のプラグイン・バンドルSSL ProductionPackでしょう。SSLが開発したVocalstrip 2、Drumstrip(EQやコンプなどが一緒になっている)やABLETON Live Liteに加え、今や多くのエンジニアに活用されているCELEMONY Melodyneの簡易版も付属。これだけで購入価値があるのでは?と思うほどの充実した内容です。

 SSL2 MKIIは、前代機の良いところを引き継ぎながら、ユーザー・フレンドリーに改良されています。初心者や中級者はもちろん、上級者の方のサブ機、または持ち運び用としても、たくさんの方の音楽制作に貢献していくことでしょう。

 

kain
【Profile】ボーカル/アレンジャー/サウンド・エンジニア。2011年に動画サイトへの投稿を開始。2015年以降は編曲やエンジニアとしての活動も始め、数々のアーティストの楽曲でミックス、編曲を行う。

 

 

 

SOLID STATE LOGIC SSL2 MKII

オープン・プライス

(市場予想価格:32,780円前後)

SOLID STATE LOGIC SSL2 MKII

SPECIFICATIONS
▪電源:USBバス・パワー ▪ビット/サンプリング・レート:最高32ビット/192kHz ▪外形寸法:234(W)×70(H)×159(D)mm ▪重量:860g

製品情報

関連記事