SOFTUBE Console 1 Fader MK III & Console 1 Channel MK III レビュー:DAWや対応プラグインとスムーズに連携するフィジカル・コントローラー

SOFTUBE Console 1 Fader MK III Console 1 Channel MK III レビュー:DAWや対応プラグインとスムーズに連携するフィジカル・コントローラー

 私がSOFTUBEでなじみがあるのは、高品質なプラグイン・エフェクト、そしてプラグイン・シンセです。しかし、同社のWebサイトを見ると実はハードウェアも充実していることが分かります。その中の一つがフィジカル・コントローラーのConsole 1シリーズ。今回、第3世代となるフェーダー型のConsole 1 Fader MK IIIが登場し、2024年に発売されたチャンネル・ストリップ型のConsole 1 Channel MK IIIと共に試すことができました。

Console 1プラグインをインサートすることで、複雑な設定なしにコントロールが可能

 Console 1 Fader MK III、Console 1 Channel MK IIIは共にコンセプトがしっかりしていて、それが私のDAW使用のワークフローにすごく合っています。フィジカル・コントローラーの強みは、“同時に1つのパラメーターしか操作できない”というマウスの欠点を補えることです。具体的には、複数のフェーダーを同時に上げ下げしたり、あるいはEQの周波数とゲインを両手で同時に操作する、といったことができます。それにより、音楽制作のワークフローにおける一瞬一瞬の操作速度が2倍以上になると言えるのです。

 製品の概要を見ていきましょう。Console 1 Fader MK IIIおよびConsole 1 Channel MK IIIは、AAX/AU/VST3をサポートした主要なDAWに対応しています。DAWを快適に操作できる理由は、核を担うConsole 1プラグインがデータ通信を行って、DAW上のパラメーターを本体の操作子と同期するシステムになっているからです。通常のMIDIコントローラーなどはDAWでリモート・コントロール設定を行ったり、一つ一つの操作子へ機能をアサインしなければいけないことが多いですが、このConsole 1シリーズでは必要ありません。全トラックへConsole 1プラグインをインサートするのは必須ですが、リモートで動かす必要のないトラックはConsole 1プラグインをインサートしない、という使い分けもできますね。また、一部のDAW(APPLE Logic ProやAVID Pro Toolsなど)はConsole 1プラグインを使用せずともボリュームやパンなどの基本的な操作が可能です。

 Console 1 MK IIIシリーズのシステムは、本体と先述のConsole 1プラグイン、Console 1 On-Screen Display(以下COD)という3つから成り立っています。Console 1プラグインはDAWと本体を接続するためのいわばドライバー。CODはトラックの状態を表示してくれるメイン・アプリケーションです。

トラックの状態を一画面で表示するアプリケーション、Console 1 On-Screen Display。Console 1プラグインをインサートした各トラックの状態を大画面で見ることが可能で、Console 1プラグインの内蔵エフェクトも表示される。Console 1 Channel MK IIIでは、基本的にこの画面を見つつ本体のノブをコントロールしていく

トラックの状態を一画面で表示するアプリケーション、Console 1 On-Screen Display。Console 1プラグインをインサートした各トラックの状態を大画面で見ることが可能で、Console 1プラグインの内蔵エフェクトも表示される。Console 1 Channel MK IIIでは、基本的にこの画面を見つつ本体のノブをコントロールしていく

 Console 1プラグインの状態を大きな画面で常に表示してくれますが、多くの情報を確認する必要がない場合は、本体左上“display”というセクションのmodeボタンを押すことで表示内容を変更できます。

 本体の詳細を見ていきましょう。Console 1 Fader MK IIIはDAWのフェーダー部をコントロールする目的で使用します。静電容量式タッチ・センサー内蔵の100mmフェーダーを10本備え、フェーダー上部にはレベルやパンなどを視認できる高解像度スクリーンが用意されています。右下にはパンなどを操作できるノブがありますが、フェーダー・モードを切り替えることでパンやプラグインのパラメーター操作をフェーダーで行うことも可能です。フェーダーは10本ですが、Console 1プラグインを挿したトラックはすべて認識されるので、ページを切り替えれば全トラックを操作できます。

 Console 1 Channel MK IIIはノブやボタン類がミキシング・コンソールのように配置されており、Console 1プラグインに備わったチャンネル・ストリップCore Mixing Suiteをフィジカルに操作できます。

各トラックへインサートするConsole 1プラグイン。Core Mixing Suiteというチャンネル・ストリップ・エフェクトが搭載されており、フィルターやテープ、シェイパー、ドライブ、EQ、コンプなどのセクションがあり、それぞれオン/オフが可能だ

各トラックへインサートするConsole 1プラグイン。Core Mixing Suiteというチャンネル・ストリップ・エフェクトが搭載されており、フィルターやテープ、シェイパー、ドライブ、EQ、コンプなどのセクションがあり、それぞれオン/オフが可能だ

 Core Mixing Suiteでは、内蔵するサチュレーターやゲート、フィルター、EQ、コンプ/リミッターなどを自由にアサインして使用可能です。さらに、対応するSOFTUBE、FABFILTER、UNIVERSAL AUDIOのプラグインをConsole 1プラグインに読み込み、Console 1 Channel MK IIIからコントロールすることができるのも特徴です。

フェーダーは触覚フィードバック搭載。高解像度ディスプレイで快適な操作が可能

 ではLogic Proで使用してみます。コントロール・サーフェース設定でConsole 1を選択し、すべてのオーディオとインストゥルメント・トラックにConsole 1プラグインをインサート。この状態でConsole 1 Fader MK IIIのスクリーンには各トラック名やメーターが鮮明に表示され、フェーダーとLogic Proのボリュームは完璧に連動しています。Logic Proのトラックの1つをマウスで選択すると、選択されたトラック情報がConsole 1 Fader MK III、Console 1 Channel MK IIIの両方にすぐさま反映されます。

 Console 1 Fader MK IIIはノブやフェーダーの動きが非常にスムーズで高級感があります。フェーダーの0dB付近では触覚フィードバックが得られるので、ディスプレイの数値を見ることなくフェーダーを0dBにそろえることができて便利です。フェーダー下のselectボタンを押してチャンネルを選択でき、パネル右下のノブでパンを操作可能。パネル左端に並ぶボタンではAUXセンドを選択し、フェーダーで送り量をコントロールできるようにデザインされています。

 フェーダー上部のディスプレイにはトラック・ネームやメーターなど必要な情報が精細な解像度で表示されます。それによりフェーダー操作、ミュートやソロ、オートメーションの書き込みなどのワークフローが快適で、100点満点と言えるでしょう。しかも、この快適さがSTENBERG CubaseやABLETON Liveでも同じだったことは驚きでした。

シルキーな音が魅力のCore Mixing Suite。使い慣れた他社プラグインを統合できるのも◎

 次はConsole 1 Channel MK IIIです。パネルには音の流れに合わせてエフェクトの操作ノブが並んでおり、先述のCore Mixing Suiteのエフェクトを調整できます。TAPE/PREAMPは音の色付け、FILTERはローカット&ハイカット・フィルター、SHAPEはゲートとエキスパンダーを担います。EQUALIZERは2基あり、中央下部のボタンで切り替え可能です。ModarnとVintageというカラーの違うタイプが用意されているので自分の好みで使い分けられます。COMPRESSORはBus/FET/Optoという3タイプが用意されています。DRIVEではdriveとcharacterノブでサチュレーション的に音色をイケイケにすることができます。

 Core Mixing Suiteのエフェクトは、SOFTUBEらしくシルキーで音の密度が高く聴こえます。存在感があるとも言えるでしょうか。私はFABFILTERやUADプラグインも持っているので、これらの使いやすいエフェクトもシステムに統合して音作りできるのは便利だと感じました。

対応するSOFTUBEやFABFILTER、UNIVERSAL AUDIOのプラグインをロードし、Console 1 Channel MK IIIから操作することもできる

対応するSOFTUBEやFABFILTER、UNIVERSAL AUDIOのプラグインをロードし、Console 1 Channel MK IIIから操作することもできる

 パネル右下のVOLUMEノブはフェーダーと同じ役割なので、Console 1 Fader MK IIIがなくても1chだけであればこのノブで操作できます。そう、Console 1 Channel MK IIIでは、フェーダーのボリューム調節を含めたすべての音作りが完結できるわけです。全体の作りはConsole 1 Fader MK IIIと同じなので、ノブやメーター、ディスプレイの操作感も申し分ありません。中でもパネル上部に並んだ1〜20のボタンが便利。簡易的な20ch分のメーターとチャンネル・セレクトとなっており、ch3のスネアの調整後にch5のシンバルの音作りを行う場合は、3→5とボタンを押せばいいのです。

 通常、エフェクトを調節したい場合は必ずそのプラグインをダブル・クリックして画面を開かなければなりませんが、CODを常に表示していれば、トラックを選択するだけですぐにConsole 1 Channel MK IIIで音作りが可能です。クリックする工程をなるべく減らそうというワークフローは、効率的なミキシングの大きな手助けとなるでしょう。

 Console 1 MKIIIシリーズは見た目も非常に上質で、スタジオ映えすること間違いなし! そして、音楽制作やミキシングの上級者に使っていただきたい“制作スピードを1段階スピード・アップさせるギア”として、間違いなく薦められるコントローラーです。

 

Nagie
【Profile】レコーディング・エンジニア/プログラマー/作編曲家。aikamachi+nagie、ANANT-GARDE EYESとしても活躍。Vocaloid『IA-ARIA ON THE PLANETS』の開発に携わる。

 

 

 

SOFTUBE Console 1 Fader MK III Console 1 Channel MK III

Console 1 Fader MK III:170,500円、Console 1 Channel MK III:121,000円

SOFTUBE Console 1 Fader MK III Console 1 Channel MK III

SPECIFICATIONS
Console 1 Fader MK III
▪外形寸法:435(W)×45(H)×219(D)mm ▪重量:2.08kg

Console 1 Channel MK III
▪外形寸法:435(W)×45(H)×219(D)mm ▪重量:1.8kg

REQUIREMENTS
▪OS:Mac/Windows
▪共通:AAX/AU/VST対応DAW

製品情報

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