SHUREといえば、筆者も長きにわたり使い続けているSM57、SM58、SM7をはじめとしたSMシリーズです。今回、このSMシリーズに共通する魅力をアップデートさせたホーム・レコーディング用コンデンサー・マイクSM4がリリースされました。マイク・クランプが付属するSM4-K-J、ショック・マウントとポップ・フィルターが同梱されるSM4-K-Kit-Jというラインナップの中から、SM4-K-Kit-Jを見ていきます。
耐久性、指向性、音質などシリーズの魅力を継承 動画映えするかわいらしいデザイン
SMシリーズの特長を述べると、SM57は収音範囲が狭く余分なノイズを拾わない点が非常に優れていて、スネアやタムといった打楽器の録音に最適。SM58は耐久性の高さや安定した使い心地が高く評価され続け、世界中のライブ・ハウスでボーカルなどに用いられています。SM7は今や動画配信などに人気のマイクとして認識されていますが、そのまろやかでスウィートな音質は、マイケル・ジャクソンも愛用したとされるほど。ボーカル録音でも力を発揮しますし、声の成分をくっきりと録れるのに丸みがあって聴き疲れしない音質で、ナレーションでも多用されています。
このように、高い耐久性や余分なノイズを拾わない指向性、丸みがあるのにくっきりとした音質、そしてお手頃な価格で購入可能なところはSMシリーズの優れた特徴と言えるでしょう。こういったシリーズの良いところを継承し、さらにアップデートさせているというSM4は、黒をベース・カラーとしたかわいらしい見た目のコンデンサー・マイクです。463gととても軽く、手のひらサイズの大きさで、持ち運びに便利。見栄えがするので、YouTube、Instagram、TikTokなどで動画を配信する場合にも最適だと思います。そして今回見ていくSM4-K-Kit-Jは専用ショック・マウントとポップ・フィルターが付属しているにもかかわらず4万円台で購入できるので、かなりお得と言えるでしょう。というわけで、同梱物を見ていきます。
ショック・マウントはシンプルに見えますが、とても緻密な作りです。硬めで短いゴムが4カ所に付いていて、何かに引っかかって切れてしまったりする心配もなさそう。ポップ・フィルターはアームがなく、スクリーンだけのコンパクトな仕様です。マグネット式で“カチャッ”と気持ち良くはまり、横を向けたりつるしたりしてもスクリーンが落ちることがなくマイクの真ん中に固定できるので、ムラがなく安定した収録ができそうです。軽くてマグネットが強力なので、接続部が振動でカタカタ鳴らないのも良いところ。メッシュ織のファラデー・ケージでツルツルしていて、経年によってゆがんでしまう可能性も低そうです。これらとマイク本体が、キャリング・ケースに全部入ってしまいます。誰かの家に収録しに行ったり、リハスタに持ち込んだりする際も快適でしょう。
干渉シールド技術でRFノイズ混入を軽減 近接効果を抑えるデュアル・ダイアフラム仕様
ここからは、SM4の音質を見ていきます。まずはボーカルを録音してみました。今回はNEVE 1272をマイクプリとし、オーディオI/OのLYNX STUDIO TECHNOLOGY Aurora(n)からAVID Pro Toolsに録音しています。まず驚いたのが、声を出す前に感じられる部屋の環境音が、素晴らしく“静か”なことです。嫌な感じがしない空間の音で、特に高域の痛い部分が削られているように聴こえました。そして録音したボーカルのサウンドは軽やか。重心は低めで、ハイファイというよりナチュラルでクリーンな印象です。解像度も高く、程良いバランスでした。
SM4の大きな特長として、干渉シールドという技術が用いられており、それによりスマホやパソコン、Wi-Fiルーターなどワイヤレス・デバイスから出るRFノイズをブロックしているそうです。電磁波や電波は、ノイズ対策ができていない自宅などではより発生しやすくなるので、ホーム・レコーディング用のマイクとしてはとても心強い仕様です。この干渉シールドとポップ・フィルターを組み合わせることで、ダブルで破裂系のノイズを軽減することができるのです。
また、SM4は単一指向性で、近接効果を安定させるためにデュアル・ダイアフラムが採用されています。実際にマイクから音源を遠ざけても近づけても低域の印象は変わりませんでした。この仕様によって、録音時につい体が動いてしまうことで生じる距離感や音質のバラつきの軽減が期待できますし、アコギなど、演奏の際にどうしても動いてしまう楽器の録音にも効果的だと思います。というわけで、アコギでも試してみます。ネックとサウンド・ホールのちょうど中間くらいの位置に、ギターのボディから10cmほど離してセットしました。録音してサウンドを聴いてみると、ホール周辺のモワッとした中低域からの影響もない、スッキリしたサウンドで収録することができました。中域から高域にかけての解像度が高く、抜けの良さも感じます。少し本体を傾けてマイキングしてみても、レベルは多少変わりますが、音質に変化がないのにも驚かされました。
さらに最大140dBという高い音圧レベルにも対応するということで、キック・ドラムをオフマイクで録ってみたところ、吹かれの影響がなく、低域の過剰なブーストも抑えられ、クッキリとクリーンに皮の鳴りが収録できました。ラウドなハイハットや、ギター・アンプのオフマイクなどにも使用できると思います。
ここまで見てきた通り、SM4は自宅録音で発生する電磁波などからの干渉や近接効果への対策が練られており、そのうえ高音質です。動画配信にも最適なボディの見た目や、どこにでも手軽に持っていける便利さを両立させているところも含めて、現代的な使用法に寄り添った万能マイクだと思いました。
yasu2000
【Profile】NYのInstitute of Audio Reserch卒業後、ブルックリンBushwick Studioを経て、2005年に帰国。現在はorigami PRODUCTIONS所属アーティストのほか、あいみょんなどを手掛ける。
SHURE SM4
SM4-K-J:オープン・プライス(市場予想価格:36,630円前後)/SM4-K-Kit-J:オープン・プライス(市場予想価格:49,500円前後)
SPECIFICATIONS
▪指向性:単一指向 ▪周波数特性:20Hz〜20kHz ▪出力インピーダンス:150Ω ▪感度:−38dBV/Pa(1Pascal=94dB SPL) ▪最大SPL:140dB ▪電源:48Vファンタム電源 ▪SM4-K-J付属品:スイベル・マウント・マイク・クランプ、ポーチ、 3/8インチ-5/8インチ変換ねじ ▪SM4-K-Kit-J付属品:ポップ・フィルター、ショック・マウント、3/8インチ-5/8インチ変換ねじ、キャリング・ケース ▪外形寸法:52(φ)×149.7(H)mm ▪重量:463g