SE ELECTRONICSのボーカル用ダイナミック・マイクV7のレッド・バージョンであるV7 Redを試していきます。
といっても、実はV7自体は以前、本誌の特集でも試用したことがあるのです。その特集ではボーカリストのお二人と試用レビューをしていて、2024年9月号のバックナンバー、またはWebサイト『サンレコ』でも記事が公開されていますので、ご興味がある方はご参照いただければうれしいです。そのときは何本もあるうちの1本だったので、今回はじっくりこのV7の魅力をお伝えしていきたいと思います。
特許取得済の内蔵ショック・マウントにより、カプセルをハンドリング・ノイズから切り離す
V7はスーパーカーディオイド(超指向性)のハンドヘルド型ダイナミック・マイクです。ここで紹介するV7 Redの塗りはマットな仕上がりで、それでいて鮮やかな赤色をしていてステージでも存在感を放ってくれそうです。グリル内のスポンジは黒と赤の2色が付属しており、赤を選べば真っ赤な見た目にできます。直径は54mm、長さは184mm。自分は手が小さいのですが、握った感じは太すぎず細すぎず、持ちやすい曲線的なグリップ・フォルムをしています。マット仕様のおかげか、手にしっかりなじむような塗装です。重量は300gを切る軽量なモデルとなっています。周波数特性は40Hz〜19kHzで、高音は出しすぎず抑えすぎずな数値です。パーツはすべてが金属製で、相当な耐久性を誇っています。激しめのパフォーマンスをされる方や、たくさんの現場で使っていく方も長く愛用できるマイクでしょう。
それでは、実際に使った感想をお伝えしていきます! V7には特許取得済みの内蔵ショック・マウントや、カスタム開発されたアルミニウム・ボイス・コイルなどが採用されていて、SE ELECTRONICSの技術を注いで製作されています。
グリルを外しコイルとマウント部分を確認してみると、確かに柔軟性があり、かつしっかりしています。この内蔵ショック・マウントは、カプセルをハンドリング・ノイズから効率的に切り離すようになっているとのことで、なるほど試してみた感覚としても、あまりハンドリング・ノイズが気になりません。アルミニウム・ボイス・コイルはハウリングの防止をしつつ、マイク自体のゲインを上げやすいように設計されています。
バンド・サウンドに埋もれない、伸びのある中域と味付けの少ない音
サウンドについても触れていきましょう。端的に表すと中域が伸びやすい印象です。女性ボーカルが声を張っても高音が耳に痛くならず、でも抜けてこないわけではない、絶妙なバランスになっています。低音に関しても余計な部分が膨張されずに、タイトな仕上がりになっています。あまり味付けのされていない、素朴で力強いサウンドです。
音量も各帯域でばらつきがなく、平均的に出力される印象で、スーパーカーディオイドのダイナミック・マイクでありながら、繊細なボーカル表現が可能になると思います。雑味がない分、モニター・サウンドの音作りもしやすくなることでしょう。とにかく音量感がしっかりしていて音の立ち上がりが速く、バンド・サウンドに埋もれない力があります。これだけパワーがあるなら、どんなライブ環境でもパワフルなパフォーマンスができそうです。弾き語りでも楽器音量をしっかり鳴らして演奏する方、バンド・ボーカルの方は相当パフォーマンスがしやすくなると思います。前出のハンドリング・ノイズの少なさからも、自由な表現が可能となるでしょう。実際、こちらのV7を利用しているボーカルの方のバンド・ライブを拝見しましたが、バンド・サウンドの音圧に負けないだけでなく、混ざり具合も相当に素晴らしかったです。
今回はV7 Redで試奏したのですが、同価格のカラー・バリエーションとしてWhiteやBlack、マイルス・ケネディ氏のシグネチャー・モデルのMKなどもあり、見栄えにもこだわることができます。
BlackモデルはRedとはまた違う重厚な渋さがありかっこいい仕上がりです。SNSに動画や写真をアップすることが多くなった現在では、ビジュアルにこだわることができるのも大きな魅力だと思います。楽器演奏もするプレイヤーにとっては、楽器の色と合わせたりできるのもワクワクしてしまいますね。
そしてなんと、ボーカルだけでなく、トークバック向けに製作されたV7 PTTというモデルもラインナップされています。
ちなみに、ロック機能付きのオン/オフスイッチが搭載されたV7 Switchとは少し仕様が異なっていて、PTTは押している間だけオンになるという優れもの。トークバックでやりとりをした後にうっかりスイッチをオンにしっぱなし……といったトラブルを防止できます。ちなみに、重量はスイッチ装備の分通常のV7よりも10gほど重くなります。
みなさん、マイクを購入する際には必ず“うーん”と悩んだ経験があり、初めての方は特にお悩みのことと存じます。V7はこれだけの性能と、プレイヤーに寄り添ったバリエーションを持ちながら、リーズナブルな価格で展開されているのです。自分も、正直本気で欲しい1本です。耐久性やデザイン、サウンドの性能やコスト・パフォーマンスなどさまざまな面から、マイ・マイクを初めて検討している方も、2本目などのサブマイクを探している方にも、とてもお薦めしたいボーカル・マイクです。店頭やスタジオ、ライブ会場などで見かけた際は、ぜひ試してみてください!
ハタナカミホ
【Profile】ライブ・ハウス原宿ストロボカフェのPAエンジニアを務める。シンガー・ソングライター経験があり、自ら楽器演奏なども行う。また楽器店に勤務していた関係で、楽器や音響機器への造詣も深い。
SE ELECTRONICS V7 Red
20,900円

SPECIFICATIONS
▪タイプ:ダイナミック ▪指向性:スーパーカーディオイド ▪周波数特性:40Hz〜19kHz ▪感度:2.0mV/Pa(−54dB) ▪インピーダンス:300Ω ▪コネクター:3ピンXLR(オス) ▪外形寸法:54(φ)×184(H)mm ▪重量:296g ▪付属品:マイク・クリップ(変換ネジ付き)、交換用ウィンドスクリーン(ブラック)、キャリング・ポーチ