SE ELECTRONICS SE4400とT2の2本の指向性可変コンデンサー・マイクをカーディオイドに限定したモデル(SE4400とT2はいずれも77,000円)。SE4100には1インチの金蒸着真ちゅうカプセルを、T1には1インチのチタン蒸着カプセルを採用。ほかの基本的な仕様は共通する。本体上のスイッチは、−10/−20dBのPADと80/160Hzの−6dB/octハイパス・フィルター。SE4100、T1それぞれに2本セットのステレオ・マッチド・ペア(各104,500円)もラインナップする。
柔らかなサウンドのSE4100
今回は、4ピース・ロック・バンド(vo&g/g/b/ds)のレコーディングで主にチェックしました。マイクプリは、メインテナンスされているオールドNEVEやSOLID STATE LOGICコンソールのHAを使っています。
と、その前に本体や付属品をチェック。両マイク共に軽量な金属製のケースに収納されており、保管や移動が容易です。マイク・ホルダーはゴムひもで支えるショック・マウント仕様で、スペアのゴムひも(サスペンション)付属もうれしいところ。マイク本体は、重さは感じないものの、しっかりとした外装です。
チェックはバス・ドラムから。フロント・ヘッドの中心から15cmほど離して設置しました。金蒸着真ちゅうカプセルのSE4100は柔らかで、胴鳴り全体を捉え、太めの低音と余韻感があります。チタン蒸着カプセルのT1は、アタックをよく拾いキリッとした音。引き締まった低音とこちらも余韻感があります。例えるなら、やや甘口と辛口のお酒といった雰囲気。また、EQで低域をぐいっと上げるとしっかり低音が持ち上がる点に、確かな音の密度を感じました。
T1はエッジと奥行きが録れる
次にエレキギターのアンプに、SHURE SM57と併用して設置。傾向は先のバス・ドラムと同様ですが、もう少し特性が分かってきました。T1はエッジとボディを同時に拾い、SM57と、似た形状のAKG C414の間のようなサウンド。1本でも成立する感じです。SE4100はイメージしていた通り、C414のようにボディ担当で、それよりはほんの少しスッキリしていて、実空間で聴く音にとても近く感じます。
SE4100をベース・アンプにも試してみると、やはりブースで聴いた音の印象に近く、非常にフラットでミックス時に扱いやすそうです。ボーカルでは、大きめの音像で後処理しやすいSE4100、立った音でスピードのあるT1、どちらにも良さがあるので、曲とイメージによって使い分けできたらベストだと思います。
最後にパーカッションも。SE4100はアタックが柔らかいのでやや平面的な音をしていますが、その分レンジ感が保たれて明るさもあり、手と打面のこすれるニュアンスまで感じられます。T1にはアタック感とそれ故の奥行きがあり、オンマイクにも向いていました。
両機共にゲイン値は高め。PADを使っても音質の劣化は感じませんでした。80/160Hzのハイパス・フィルターのかかり具合も自然です。
実空間で聴いているような自然な音のSE4100、ダイナミックとコンデンサーのハイブリッド的でエッジと奥行きが録れるT1。スペック的に共通した特徴はありますが、音は似て非なるものです。お手頃価格で、録り音の幅も広がるので、ぜひ両方を使ってみてほしいです。
福田聡
【Profile】レコーディング/ミキシング・エンジニア。ファンクを軸に、グルーヴ重視のサウンドを数多く手掛ける。リズム録りが生きがいの一つで、ジャンル問わず多くの生バンドの作品で腕を振るう。
SE ELECTRONICS SE4100/T1
各55,000円

SPECIFICATIONS
※ダイアフラム以外は共通
⚫カプセル・タイプ:コンデンサー ⚫ダイアフラム:SE4100/金蒸着のマイラー、T1/チタン蒸着のマイラー ⚫指向性:カーディオイド ⚫周波数特性:20Hz〜20kHz ⚫インピーダンス:125Ω ⚫最大SPL:137/147/157dB(0/−10/−20dBのPADスイッチ使用時、0.5%THD) ⚫SN比:85dB ⚫等価ノイズ・レベル : 9dB(A) ⚫ハイパス・フィルター : 80/160Hz ⚫外形寸法:58(W)×146(H)×29(D)mm ⚫重量:280g