ROB PAPENは、AlbinoやPredator、Bladeなど2000〜2010年代よりシリーズ化しているソフト・シンセをはじめ、最近ではGo2-Xのような新機軸の製品もリリースしている老舗です。筆者もPredator 2などを所有しており、その分厚い出音やマニアックな操作系、音作りの幅広さで重宝してきました。というわけで、バーチャル・インストゥルメントのメーカーというイメージが非常に強いのですが、このたび発売されたのはプラグイン・エフェクトのUniMagic。早速、試してみての所感をお伝えします。
中央のAMOUNTノブでエフェクトの強さを調整 画面下部のスライダーはマクロ・コントロール
UniMagicはMac/Windowsに対応し、AAX/AU/VST/VST3プラグインとして動作します。ここ数年、幾つかのベンダーが開発し流行しているワンノブ・タイプのエフェクトで、中央に大きなノブを1つ備えています(メイン画像)。これはAMOUNTノブと呼ばれるもので、原音に対するエフェクトの強さを調整することができます。
他社同種の製品群と比較して異なるのは、プラグイン画面の下の方にフェーダーのような操作子がある点です。これは“リボン・スライダー”といって、各プリセットのマクロ(複数のパラメーターを一括して調節するためのパラメーター)の強弱を調節できるようになっています。ほかにもアクセス可能な部分がありますが、ワンノブ型プラグインの美点である非常にシンプルなルックス、そして誰もがとっつきやすい設計になっていると言えるでしょう。
それでは操作と出音について触れていきます。UniMagicは、簡単に言ってしまえば“空間系メインのエフェクトを良い感じで担当します”という製品です。その効果は、特にボーカルやギター、リード・シンセなどに向きそうなもの。筆者が試した範囲では、プリセットには大きなカテゴリーとしてマルチエフェクト系、テープ・エコー系、ショート・ディレイ系、コーラス系、ロング・リバーブ系、ルーム・リバーブ系、そしてピッチ・シフトなどを織り交ぜた“アグリー系”が見られます。各カテゴリーに5〜8種類のバリエーションも用意されていて、合計50種類のプリセットが入っています。また、ユーザー・プリセットを合計すると最大256種類のプリセットを扱えます。
イチから始めると手間のかかる処理を簡単に実現 スペシャル・エフェクトから隠し味まで対応
基本的な操作は、プリセットを呼び出し、AMOUNTノブとリボン・スライダーで音作りする流れです。ディレイ系などのプリセットには、リボン・スライダー横にある小窓“SPRING BACK”でテンポ・シンクのタイミングを調節するものもありますが、すべての操作が実に簡単です。では、主な効果と出音はどうでしょう? 操作は簡単ですが、効果は絶大です。
例えばプリセットの一つである“Sweet Vox 01”を呼び出すとします。エンジニア業務も行う筆者からすると、“これはショート・ディレイのディレイ成分に、さらにショート・ディレイをかけてステレオ化し、それらのディレイ成分に少しローカットを入れたな”などと細かい処理を推測できますが、そう考えただけでも複雑で、一つ一つやるとなると結構手間のかかる処理になります。そんな複雑な処理のセットが50個並ぶと考えれば、本製品の有用性は明白です。
また、自分が理解して想像している以外の効果の発見も多々あります。ほかのプリセットも見てみましょう。アグリー系にカテゴライズされる“Ugly Two 1〜3”のプリセットには、オクターブ下のピッチ・シフトとそれに加えるモジュレーションなども用意されていて、歌やラップの短いパートに使うようなエフェクティブな処理も簡単に実現できます。もちろん、一つ一つの効果を微調整することや、その手法を学ぶことも大切ですが、“理屈抜きに、聴いて良いから使う”ということも、作業の集大成である音楽にとっては面白い利益をもたらすような気がしています。
筆者は、UniMagicの紹介動画で開発者のロブ・パペン氏が語った“モダナイズ”という言葉が印象的です。往年の空間処理を組み合わせて、ただ単に奇抜なプリセットを並べたのではなく、ワンノブで現代的に使える空間処理を厳選して、有機的に提案してくれる点は特筆に値すると思います。また、隠し味的にサクッと使いこなせると、とても良いのではないでしょうか。
SUI
【Profile】サウンド・クリエイター。近作はWATWINGへの楽曲提供&日本武道館公演Blu-rayのエンジニアリング、Netflix映画『シティーハンター』の劇中曲「FOOTSTEPS」のカバー・アレンジなど。
ROB PAPEN UniMagic
3,300円
REQUIREMENTS
▪Mac:macOS 10.13以上、APPLE M1/M2/M3 ARMプロセッサー対応、AAX/AU/VST/VST3に対応するホスト・アプリケーション
▪Windows:Windows 7以上、AAX/VST/VST3に対応するホスト・アプリケーション(AVID Pro Toolsはバージョン12以上)