MACKIE Thump Go レビュー:遠隔で音量調節が可能なバッテリー駆動の小型パワード・スピーカー

MACKIE Thump Go レビュー:遠隔で音量調節が可能なバッテリー駆動の小型パワード・スピーカー

 小型ミキサーやスピーカーなど定評のある製品を数多く発表してきたMACKIE.から、新たなポータブル・スピーカーThump Goが発表された。パワード・スピーカーThumpシリーズの流れをくむスピーカーだ。

音声入力に連動してBGMの音量を下げるMUSIC DUCKING機能を搭載

 Thump Goはバッテリー駆動が可能で、8インチ・ウーファーと1インチ・ツィーターに出力200WのクラスDアンプを合わせたパワード・スピーカー。リチウム・イオン・バッテリーが付属し、最大12時間の連続使用が可能だ。バッテリーは単体でも販売されており、予備の追加もできる。本体に電源ケーブルをつなぐと自動で充電され、充電池の残量はリア・パネルのインジケーターに表示される。重量は8kgで、持ち手が付いているため片手で持つことができるほか、別売りのキャリング・バッグも用意。底面には35φのポール・マウント・カップが付いているので、汎用のスピーカー・スタンドやThumpシリーズ以外のサブウーファーにも取り付け可能だ。

 内蔵ミキサーの入力は2系統用意。スマートフォンやタブレット用のアプリが用意されていて、ミキサーのフェーダーや各種モードの切り替えといった遠隔操作をBluetooth接続によって行うことができる。スマートフォンやタブレットとはリア・パネルのPAIRスイッチを押すことでペアリングし、どんな場所でも数分で音楽を流すことができる仕様だ。マイクをつなぎ音源を鳴らした音色は、サイズの割に中低音がしっかりしているという印象があった。

リア・パネルにはチューニングを切り替えるVOICING MODESのほか、OUTDOOR MODE、MUSIC DUCKINGなどの各種モード切り替えスイッチ、Bluetoothのペアリング・スイッチを装備。ch1のゲイン、ch2/Bluetooth入力のゲイン、マスター・ボリュームの下に、ch1とch2のXLR/TRSフォーン・コンボ入力、ch2のステレオ・ミニ入力、THRU端子(XLR)を備える

リア・パネルにはチューニングを切り替えるVOICING MODESのほか、OUTDOOR MODE、MUSIC DUCKINGなどの各種モード切り替えスイッチ、Bluetoothのペアリング・スイッチを装備。ch1のゲイン、ch2/Bluetooth入力のゲイン、マスター・ボリュームの下に、ch1とch2のXLR/TRSフォーン・コンボ入力、ch2のステレオ・ミニ入力、THRU端子(XLR)を備える

スマートフォンやタブレット用アプリThump Connect 2の操作画面。Bluetooth接続により、ミキサーの調節やモードの切り替えを遠隔でコントロールできる

スマートフォンやタブレット用アプリThump Connect 2の操作画面。Bluetooth接続により、ミキサーの調節やモードの切り替えを遠隔でコントロールできる

 続いてシアターに持ち込んで、スピーカー・スタンドに立ててBGMとアナウンス用に使ってみた。Thump Goは、2台をBluetooth接続して使用できるLINK機能を搭載。スマートフォンからの音楽を、L/Rに分けてステレオで流すことが可能だ。ch1にマイクを入力し、THRU端子で2台をリンクさせて、アナウンスのセッティングが完了(マイク/ライン入力は、THRU接続しないと両方から音が出ないので注意)。アプリ上で、2台のThump Goの音量を1本のフェーダーでコントロールするStereo Modeと、2台を別々に調節するZone Modeの切り替えから、Stereo Modeを選択。マイクとBGMのバランスを取ることもできた。また、MUSIC DUCKINGスイッチを押すと、トークの間だけBGMが自動的に下がってくれる。これは優れもので、言葉が明瞭に聞こえ、話が終わった絶妙のタイミングで元の音量に戻った。ちょっとしたパーティーにおける呼び出しのような場面で重宝するだろう。

落ち着いた高域のOUTDOOR MODE

 その後、スタジオに持ち込んで、VOICING MODESという4つの音色モードを試してみた。MUSICはバランス良く音が届き、SPEECHは突然の大音量に備えてのことかと思うがコンプが効いている。MONにしてウェッジ・モニターとしても使用してみたところ、タイトに聴こえやすいところが強調された音色に。今回はサブウーファーと合わせてのチェックは行っていないが、SUBではローカットがかかっていた。

リア・パネルには、MUSIC/SPEECH/MON/SUBの4種類からなるVOICING MODESのチューニングを記載。モードの変更はThump Connect 2からも可能だ

リア・パネルには、MUSIC/SPEECH/MON/SUBの4種類からなるVOICING MODESのチューニングを記載。モードの変更はThump Connect 2からも可能だ

 また、FEEDBACK ELIMINATORというハウリングを回避するためのスイッチがあり、マイクを近づければフィードバックが発生しても早めに止まるゲートのような機能となる。音色に変化はないので常時オンにしたままでも問題ないだろう。

 OUTDOOR MODEを試すため、公園でも音を出してみた。低音が増すのは予想通りだったが、高音は意外と落ち着いた印象。室内での反射音がないことを想定して高域を伸ばしているのかと予想していたが、逆に落ち着いて聴こえてくる。野外での嫌なうるさい感じが無くなって良い印象だ。

 電源不要で場所を選ばないため、簡単な弾き語りなどではZone Modeを選択し、1台を客席に、もう1台を自分に向ければ簡易なFOHとFBシステムが組める。ただリバーブなどのエフェクト機能は搭載していないので注意が必要だ。

 そして特筆すべきは、ch2のコンボ・ジャック。ハイインピーダンス入力とライン入力の両方に自動対応するのだ。詳しい知識がないとHi-Zスイッチなどは忘れがちで、SN比が悪いままで演奏しているのをよく見かける。簡単に正しいゲインでパフォーマンス可能な点は初心者に優しい。ch2にはステレオ・ミニ入力も装備。Bluetoothだけでなくケーブル入力もできるのは、トラブル対策にもなるだろう。

 Thump Goは、ダイナミック・マイクとスマートフォンがあれば、電源を使わずに音楽や音源素材を使ったイベントが構成できる。バンド演奏などではほかのスピーカーとの併用が望ましいが、ギターなどを使ったストリートでの演奏、小規模な会議や学校などにおいては、たとえ音響の知識に詳しくないような方でも、十分なパフォーマンスを期待できるだろう。

 

山寺紀康
【Profile】 PAをメインに手掛けるサウンド・エンジニア。角松敏生、浜田省吾、久保田利伸、スピッツなどのライブでPAを担当してきた。尚美学園大学の芸術情報学部情報表現学科で准教授を務める。

 

MACKIE Thump Go

オープン・プライス

(市場予想価格:53,570円前後)/1台

MACKIE Thump Go

SPECIFICATIONS
▪スピーカー構成:8インチ・ウーファー+1インチ・コンプレッション・ドライバー ▪内蔵クラスDアンプ出力:175W(低域)+25W(高域) ▪周波数特性:50Hz〜20kHz(−10dB) ▪指向性:90°(水平)×60°(垂直) ▪最大音圧レベル:115dB ▪クロスオーバー周波数:2kHz ▪外形寸法:230(W)×457(H)×285(D)mm ▪重量:8kg

製品情報

関連記事