KV331 AUDIO Synthmaster 3 レビュー:多数の新機能と膨大なプリセット・サウンドを備えたソフト・シンセの最新版

KV331 AUDIO Synthmaster 3 レビュー:多数の新機能と膨大なプリセット・サウンドを備えたソフト・シンセの最新版

 あらゆる機能を搭載したソフト・シンセKV331 AUDIO Synthmasterがさらなる進化を遂げ、バージョン3にアップデートされました。最大16レイヤーのモジュラー・アーキテクチャーを採用し、多彩なモジュレーターやオシレーターによるさまざまな合成方法を備えています。

5種のS&Hを生成するノイズLFO アルペジエイター/シーケンサーを個別で装備

 Synthmaster 3はMac/Windows対応で、VST2、VST3、AU、AAXのプラグインとして使用可能です。起動すると複数のVIEWタイプがあり、TAB VIEWで各レイヤーの音作り(上掲画面)、TRACK VIEWで各レイヤーのキーボード・ゾーンやシーケンサーのエディット、MIX VIEWで各レイヤーの音量バランスやインサート・エフェクトなどを調整します。

 TAB VIEWは画面が4分割され、画面の左上にオシレーター(Basic/Granular/Additive/Vector/Wavetable/VAnalog)とモジュレーターを追加可能。

オシレーター/モジュレーターを選択しているところ。オシレーターはBasic、Additive、Vector、Wavetableに加え、新搭載のGranularとVAnalogを使用できる

オシレーター/モジュレーターを選択しているところ。オシレーターはBasic、Additive、Vector、Wavetableに加え、新搭載のGranularとVAnalogを使用できる

 右上にはフィルター(Digital/VAnalog/Ladder/Diode Ladder/State Variable/Bite/Comb/Formant/Phaser)を追加できます。左下はモジュレーション・セクションで、ADSRとマルチステージの2つのエンベロープ・ジェネレーター、LFO、ステップLFO、ノイズLFO、スケーラーが使用可能。新搭載のノイズLFOは、White、Pink、Brown、Violet、Blueの5種類のサンプル&ホールド・ノイズを生成するために使えます。画面右下にはLAYER、ROUTING、FX、SEQ(シーケンサー)、ARP(アルペジエイター)のタブが表示されます。ROUTINGではレイヤー内のモジュールのフローが視覚的に確認でき、接続や削除なども行えます。

ROUTING画面。レイヤー内のルーティングが視覚的に把握できるほか、モジュールの追加や削除なども行える

ROUTING画面。レイヤー内のルーティングが視覚的に把握できるほか、モジュールの追加や削除なども行える

 また、バージョン3からシーケンサーとアルペジエイターが個別実装になりました。シーケンサーはピアノロール画面で詳細にエディットでき、コードも打ち込めます。

 画面一番下のキーボードもさまざまな設定が行えます。特に便利なのはSETTINGS→USER INTERFACEからEnable QWERT Keyboardにチェックを入れると、パソコンのキーボードで入力ができるようになること。外出先でMIDI鍵盤がなくても打ち込むことができます。

グラニュラーやバーチャル・アナログなど新搭載のオシレーターも多数

 音色を作ってみましょう。まずは新搭載のGranularオシレーターを追加。選択したサンプルをグレインに分割し、異なる時間やピッチ、振幅で再生するオシレーターです。試しにマルチサンプルの“BT maremediteraneo pad”を選択すると、複雑で動きのある音色へ変化しました。オシレーターは最大16ボイスで、それぞれ最大32のグレインがあるので、オシレーターあたり最大512のグレインとなります。次に、こちらも新搭載のVAnalogオシレーターをレイヤー。

新搭載のバーチャル・アナログ・オシレーター、VAnalog。アナログ・シンセ風のサウンドが生成できる

新搭載のバーチャル・アナログ・オシレーター、VAnalog。アナログ・シンセ風のサウンドが生成できる

 アナログ回路が波形を生成する仕組みを模倣して、カーブ・セグメントを使いリアルタイムで出力を生成するというだけあり、温かみが感じられるサウンドが得られました。

 新機能のウェーブシェイパーも追加していきましょう。

こちらも新搭載のウェーブシェイパー。10種類を超えるディストーション・アルゴリズムが用意される

こちらも新搭載のウェーブシェイパー。10種類を超えるディストーション・アルゴリズムが用意される

 Soft Tanh、Soft Atan、Heavy、Fuzz、Fold Sine、Fold Tri、Fold Round、Rectify Full、Rectify Half、Clip、Bitcrush、Custom Curveと多彩に用意されたタイプの中から、今回はBitcrushを選択します。そしてROUTINGでShaperをかませたいところにドラッグします。Filter1の後に接続したところ、ザワザワしすぎていた帯域がうまく調整されました。続いて、LFOを使用。モジュレートしたいつまみにタブの十字矢印をドラッグすると、画面右端にモジュレーション・マトリクスが表示され、モジュレート可能に。例えばピッチのつまみに十字矢印をドラッグすれば、ピッチが変化します。

 最後に、初心者にとって即戦力となるプリセットを見ていきます。バージョン3のプリセット・ライブラリーには、過去のバージョンに搭載されたプリセットに加え、世界的なサウンド・デザイナーたちが作った音色が850も追加されています。これだけあれば、欲しい音に近いものが必ず見つかるでしょう。BROWSERでプリセットを選択する際は、製品名、作成者、インストゥルメント・タイプ、アトリビュート、スタイルなどから簡単に絞り込むことができます。驚いたのが読み込みの速さ。↑↓キーで素早く音色を選択できる上に、プリセットを読み込まなくてもプレビューできるので、直感を逃さず、音選びのストレスが大きく軽減されます。

 紹介したもの以外にも、フェイザー・フィルター、フォルマント・フィルター、ウェーブテーブル・エディターなど、多数の機能が追加されたSynthmaster 3。その名の通りシンセでできることが網羅され、シンセ好きならマスト・バイと言える内容だと感じました。初心者も好きなプリセットを見つけて、そこから音作りを深掘りするきっかけになると思います。

 

MEG.ME
【Profile】作詞/作曲/編曲家/プレイヤーとしてマルチに活躍するクリエイター。2011年にMEG.ME名義で活動開始。クラシックからポップスまで多様なジャンルを得意とし、舞台音楽なども手掛ける。

 

 

 

KV331 AUDIO Synthmaster 3

23,144円(価格は為替レートによって変動)

KV331 AUDIO Synthmaster 3

REQUIREMENTS
▪Mac:macOS 10.13/10.14/10.15/11(INTEL CPU/ARM)/12(INTEL CPU/ARM)/13(INTEL CPU/ARM)/14(INTEL CPU/ARM)
▪Windows:Windows 10(64ビット)/11
▪共通項目:INTEL Core Duo 2.0GHz以上のCPU、2GB以上のRAM
▪対応フォーマット:VST2/3、AU、AAX

製品情報

関連記事