HARRISON AUDIOの32Classicコンソールのサウンドと機能を1Uラック・サイズに凝縮したアナログ・チャンネル・ストリップ。フロント・パネルにはJENSEN製トランスを採用したマイク・プリアンプ搭載のXLR/TRSフォーン・コンボ入力をはじめ、3dBのレゾナント・ピークが特徴のHARRISONならではのローパス/ハイパス・フィルターや、4バンド・パラメトリックEQなどを備え、精密な音作りを実現。さらに、複数ユニットのカスケード接続により、パンニング付きのステレオ・ミックス・バスとして使用可能だ。
マイクプリはJENSENトランスを採用
まずは信号の流れ、音の確認をしましょう。ダイナミック・マイクやコンデンサー・マイクをつないで、声やギターをAVID Pro Toolsに録ってチェック。ライン・ソースに関しては、Pro Toolsからドラムやベース、歌、管弦楽器などを送ってチェックしました。
JENSEN製トランスを採用したマイクプリの恩恵もあり、サウンドのキャラクターはパンチのある印象。ワイド・レンジで、ローエンドやオープンなミッドレンジはなかなかの好感触です。ライン入力も同様のサウンド・キャラクターだと感じました。パネル中央のEQセクションは、可変ノブでの細かな調整が可能です。
フィルターについては、劇的にサウンドが変化したので少々驚きました。生のドラムもループのリズムも、一様にキャラクターが変わります。また、両手でLP/HPフィルターを同時にコントロールできるのは、実機ならではの使い方で、かなり楽しめましたね。EQの効き方がスムーズで、幅広く音楽的なカーブを描きます。またLOWとHIGHは、EQタイプをシェルフ/ベルの2つから選べます。4つのEQを使ったサウンド・メイクは、想像以上に自在なコントロールが可能で、アナログ機器ならではの、直感的で自由な音作りができます。
ステレオ・ミックス・バス機能を搭載
モノラル・チャンネルとして十分、もしくはそれ以上のパフォーマンスである上に、本機にはステレオ・マルチチャンネルとしてコントロールできる、ミックス・バス機能も備わっています。サミング・コネクターとジャンパー・ケーブルを介してカスケード接続すると、複数台のユニットの出力をまとめたミックス・バスとしてコントロールできます。このミックス・バスは、それぞれの信号のパンニング・レベル・コントロールというユニークな機能も搭載。ピアノやストリングス、ドラムなどの多チャンネルのソースにおいて、録音の段階からステレオ出力できることは可能性を大きく広げます。
本機はインサート端子を含む、すべての入出力がバランス仕様で、設計コンセプトの徹底ぶりがうかがえます。現代では、トランスレスで繊細かつクリアなサウンドや、コンパクトでシンプルなI/Oが主流ですが、そこから一歩踏み出して、トランス特有のサウンドや個性的なEQ/フィルターによる、新しい世界を味わってほしいですね。あのマイケル・ジャクソンの「スリラー」をミックスした、HARRISON AUDIOコンソールのDNAを受け継ぐ32 Classic MS Mix Stripは、ワンランク上の広がりを持つシステムだと感じます。
鎌田岳彦
フリーで活躍するエンジニア。三宅純やおおたか静流といったアーティストの作品を手掛けてきたほか、映画のサントラやCM音楽のミックスなども数多くこなす。
HARRISON AUDIO 32 Classic MS Mix Strip
オープン・プライス
(市場予想価格:357,500円前後)

SPECIFICATIONS
⚫消費電力:最大70VA ⚫最大ゲイン:70dB(-0.5/+1.75dB) ⚫周波数特性:20Hz〜20kHz(±0.25dB) ⚫外形寸法:482(W)×44(H)×260(D)mm ⚫重量:3.67kg