DJ.STUDIO DJ.Studio Pro + Stems レビュー:YouTubeやBeatportなどの素材から自動でDJミックスが作れるソフト

DJ.STUDIO DJ.Studio Pro + Stems レビュー:YouTubeやBeatportなどの素材から自動でDJミックスが作れるソフト

 今年でデビュー20周年。DJを始めて23年。その間、私がDJで使用するメディアはレコード、CD、USB、DJソフトと変化し、現在ではUSBに戻っている。そういった変化に伴い、DJミックスの音源制作ツールも進化している。DAWでの制作がメインになっている中で今回紹介するDJ.STUDIO DJ.Studioは、結論から言うと画期的。誰でも簡単に、好きな曲でDJミックスが作れてしまうソフトだ。

1001Tracklistsのチャート内の楽曲やSpotifyのプレイリストからもDJミックスを制作可能

 まずは概要から。DJ.Studioには、DJ.Studio Proと機能制限版のDJ.Studio、DJ.Studio Proにステム分離機能Stems Extensionを追加したDJ.Studio Pro+Stemsという3つのグレードが用意されている。いずれもALAC/FLAC/WAV/AIFF/MP3/AACファイルに加え、Beatportのストリーミング音源やYouTubeの動画でDJミックスができる。

 ここではDJ.Studio Pro+Stemsを使ってみる。起動すると得意なジャンルなどを登録するページが表示され、一通りチェックしたらホーム画面に遷移する。ホーム画面はとても見やすく、画面左のサイド・メニューに各ページへのリンクが並ぶ構成。“Beatport”“Beatsource”“YouTube”からは、それぞれのプラットフォームの素材を使ったDJミックス制作ページに進むことができ、作ったミックスを公開できる“Community”のページも用意されている。

Home画面のサイド・メニュー。“Beatport”“YouTube”などのメニューをクリックすると、各プラットフォームの素材を使ったDJミックスの制作を行うことができ、作ったミックスは“Community”からユーザー同士で共有して楽しむことができる

Home画面のサイド・メニュー。“Beatport”“YouTube”などのメニューをクリックすると、各プラットフォームの素材を使ったDJミックスの制作を行うことができ、作ったミックスは“Community”からユーザー同士で共有して楽しむことができる

 サイド・メニューの“1001Tracklists”のページでは、ライブやDJイベントのセットリストを共有するSNSの1001Tracklistsが提供するチャートが掲載され、流行をチェックするのに使えるうえに、チャート内の曲でDJミックスを作ることもできる。“Spotify”のページは画期的で、Spotifyで制作したプレイリストのURLを検索窓に入力すれば、そのままプレイリストの楽曲をミックスできるようになる。ただし1001TracklistsとSpotifyのページでセレクトした楽曲のミックス時のソースは、Beatportの音源かYouTubeの動画が使用される。そのほか、各種設定を行う“Setting”では、日本語表示の設定もできる。

繊細なミックスがすぐに自動生成されるAutomix。オプションのステム分離機能でより個性的なミックスも

 さあ、DJミックスを作ってみよう。ホーム画面の“Create new mix”をクリックすると、どのプラットフォームの音源を使用するかを指定するページが立ち上がるので、今回は自分の所有している音楽ファイルを使用する“Local Files”を選択。するとミックスで使うファイルをインポートする画面に移り、ここでファイルをドラッグ&ドロップすればインポートされる。なお筆者は普段Apple Musicで音源を管理しているので、そのプレイリストをインポートした。このとき曲ごとにBPMとキーが自動解析されて表示されるのには、DJ.Studioに統合されているキー解析ソフトMIXED IN KEY Mixed In Keyの技術が生かされている。

インポートした曲のキーやBPMが解析されたところ。キーの解析はMixed In Keyの技術によるもの

インポートした曲のキーやBPMが解析されたところ。キーの解析はMixed In Keyの技術によるもの

 使用する曲のファイルをインポートした後は、自動でミックスする“Automix”を実行するかどうかを指定する。初めてなので選んでみた。するとすぐにミックス画面が立ち上がり、プレイリストの曲順通りに1本のDJミックスができあがっている。正直、これには衝撃を受けた。音圧がバラバラの複数の音源が奇麗に再生され、つなぎも繊細に表現されている。DAWでDJミックスを作る際は、タイム・ストレッチをかけてテンポを合わせ、曲のつなぎ目を決め、ボリュームなどのオートメーションを設定し、EQでローカットして……と工程が多いのだが、Automixでは前の曲のBPMに自然に追従し、ボリュームのオートメーションも自動で生成されている。

 ミックス画面は“Carousel”“Playlist”“Library”“Studio”の4つのメニューで構成され、制作は主にDAW風のGUIのStudio画面で行う。この画面は、上に2デッキ/2サンプル・レーンの波形が配置され、下には“Transition”“Effects”などの設定画面が表示できる。Effectsメニューには“Volume”“Level(Low/Mid/High)”“Filter”“Echo”“Reverb”“Flanger”“Noise”“Pitch”とDJミックスに必要な基本エフェクトが用意され、それぞれ細かく調整もできるしオートメーションの設定も可能なので、Automixを使わない場合、さらに追い込んだDJミックスを作ることもできる。Transitionメニューには曲のつなぎの方法のプリセットが幾つか用意されているので、悩んだときにはヒントになるだろう。

Transitionメニューには、“Crossfade”“Echo out”など、“つなぎの方法”のプリセットが幾つか用意されている。マニュアルで設定していくことも可能

Transitionメニューには、“Crossfade”“Echo out”など、“つなぎの方法”のプリセットが幾つか用意されている。マニュアルで設定していくことも可能

 また、注目なのが、ステム分離機能。楽曲からドラム、ベース、メロディ、ボーカルを分離させることができ、パートごとにオートメーションも設定できるので、例えばボーカルだけを抜き出し次の曲にかぶせながらミックスを続けるなど、より個性的なDJミックスの制作が可能になる。

波形内の任意の場所を選択して右クリックすると表示される編集メニュー。サンプル・レーンへのサンプリングや、ドラム、ベース、ボーカルなどを抜き出したStemsデータの生成などが行える

波形内の任意の場所を選択して右クリックすると表示される編集メニュー。サンプル・レーンへのサンプリングや、ドラム、ベース、ボーカルなどを抜き出したStemsデータの生成などが行える

 ほかにもさまざまな機能があるが、文字数的に追い切れないので割愛。紹介できなかった機能は購入して楽しんでもらえたらと思う。このソフトは、DJをやったことがないけれど好きな曲でミックスを作りたいという初心者はもちろん、追い込んだミックスを作ることもできるので、上級者の仕事のサポートも十分にこなしてくれると感じた。放送用などで、急いでたくさんの曲のDJミックスをしなければならないような職種の方にもマッチするだろう。お薦めです!

 

Kentaro Takizawa
【Profile】DJ、プロデューサー。20年近くダンス・ミュージックを軸に音楽家として活動。エイベックスなどから作品をリリースした後、2017年に自主レーベルHaus It Feelin' Recordsを立ち上げる。

 

 

 

DJ.STUDIO DJ.Studio Pro + Stems

39,600円/DJ.Studio:19,800円、DJ.Studio Pro:29,700円

DJ.STUDIO DJ.Studio Pro + Stems

REQUIREMENTS
▪Mac:macOS11以降、INTEL Core i7
▪Windows:Windows 10以降、INTEL Coreプロセッサーもしくは2017年以降のAMDのCPU
▪共通項目:最新のOS推奨、8GB以上のRAM(ビデオ・ステム機能使用時は16GB以上を推奨)、4GB以上のディスク空き容量
▪対応オーディオ・フォーマット:ALAC、 FLAC、WAV、AIFF、MP3、AAC

製品情報

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