2022年にリリースされた初音ミク NTのVer.2。新開発の歌声合成エンジンとボイス・ライブラリーを搭載しており、直感的な編集機能やボイス・エフェクターで簡単に、そして自在な歌唱を生み出すことが可能だ。専用エディターはPiapro Studio NT2で、メロディと歌詞を打ち込むだけで自動的に自然な歌唱になるよう設定するAutomatic Control機能が加わった。Mac/Windowsに対応しており、Piapro Studio NT2はスタンドアローンのほか、VSTとAUで動作する。
明確な進化を感じる歌声表現
初音ミク NT(Ver.2)を触ってまず驚いたのが、最初に“ちょうど良いミク”とでも言うべき表情で歌ってくれたことです。初代NTのときは“初音ミクのバージョン違い”くらいの感覚だったのですが、Ver.2では歌声表現に明確な進化を感じます。V4Xの歌声の感触を残しつつ、それでいて昨今のAI歌唱合成ソフトほどやりすぎない、本当に絶妙なかわいらしいミクの歌声が響いてきました。
“一体これはどういうことだ?”とGUIを見てたどり着いたのが、トラック・アイコンの下にあるキラキラした部分をクリックすることで出てくるAutomatic Controlです。この画面でスタイルを設定するだけで、初音ミクの歌声にさまざまな表情を付けられます。そのどれもがちょうど良い使いやすさなのが良いですね。
V4Xのミクは“素のミクの声をゼロからいじっていく”という楽しさがありますが、NT(Ver.2)では“まず基本的なキャラクターを簡単に決める”→“気になる部分をエディットしていく”という流れになったことで、ボーカル・エディットに要する時間も手間も一気に減らすことができそうです。トラックを分ければ、セクションごとに表情を切り替えるということもできます。
シンプルなワークフローが魅力
細かい声のエディット機能も、V4Xのころと比べて格段の利便性が向上しています。まず、ドラッグ&ドロップで発音のタメの長さを変えられるようになりました。具体的には、ノート下部に表示された波形の縦線をドラッグすることで、“ミーク”とスムーズにつながった発音を“ミック”と歯切れよくハネさせることができます。同様にビブラートもドラッグで長さを変えることができ、ピッチ曲線をピアノロール上で直接書けるように。また、発音にニュアンスを付与したいときに使うE.V.E.C機能も、“自動調整”という項目が増え、ある程度までPiapro Editor NT2が自動でニュアンスを付けてくれます。
ところで、初音ミク NT(Ver.2)のボイス・ライブラリーにはOriginal/Dark/Whisperの3種類しか収録されておらず、“Powerはないの?”と思うかもしれませんが、その役割はVoice VoltageというパラメーターとVoice Drive機能が担っています。ささやくような歌声からかすれたパワー・ボイスまで、歌声の強弱もしっかり表現可能です。
このように、NT(Ver.2)では主に自動調整機能が増えました。それにより、今まではすべてがマニュアル操作だった歌声エディットが、
①歌声選択+Automatic Controlで基本の歌声を決める
②発音の長さ/タメ/ビブラートをドラッグ&ドロップで調整
③そのほかの細かい部分を微調整
といった、非常にシンプルなワークフローに整理されています。一段と使いやすくなった初音ミク、ぜひ試してみてください!
かごめP
レコーディング・スタジオで働くかたわら、2009年にボカロPとして活動を開始。現在、ボカロPとしての活動以外にも、さまざまなアーティストのミックス/エンジニアリングを手掛けている。
CRYPTON FUTURE MEDIA 初音ミク NT(Ver.2)
19,800円

REQUIREMENTS
⚫OS:Mac/Windows
⚫共通:8GB以上の空きストレージ、INTEL Core i5以上(第8世代以上を推奨)、4GB以上のRAM(8GB以上を推奨)