アナログとデジタルを合わせた最大374もの入力を48chへルーティングできるデジタル・ミキシング・コンソール。マルチタッチに対応した10.1インチ・スクリーンで、視覚的に信号のルーティングやミキシングが可能だ。USBオーディオI/O機能やデュアルSDカード・スロット、ネットワーク・コントロール用イーサーネット・ポート×2も装備。SDカード・スロット部はモジュールになっており、DanteやMADI、WAVES SoundGridなどのカードと入れ替えることもできる。
直感的な操作と豊富なFX
今回は同じホールで別案件の催しが3日間あり、じっくり本機に触れる機会があったので、いきなり現場に投入してみました。10.1インチの大型タッチ・スクリーンを、“突然伺った現場で直感的に触る”とイメージして、あえて説明書を見ずトライしていきたいと思います。
会場のスピーカーは、常設のフライング、仮設のグラウンド・スタック、インフィルに加えて、アナウンスなどを流す運営系と多岐にわたりました。しかし、本機は8系統のマトリクス・バス・アウトとは別にメインのステレオ・バス・アウトが4系統もあり、出力には困りませんね。
まずルーティング(パッチ)は、同じBEHRINGERのX32より、MIDAS Proシリーズの操作感に近いイメージです。モノラル・インプットならばそのままパッチするだけで問題なく、ステレオならば、INPUT画面の右上にあるフェーダー・スタイル“ST”を選択し、ソースとなるインプットを2つ選択するだけで自動的に1つのフェーダーになります。
次にエフェクターを組んでいきます。エフェクト・ラックは計16系統(往年の名機をエミュレートしたプレミアムFX×8、スタンダードFX×8)を組むことができます。本機に実装されたエフェクト数はなんと80種類以上! 筆者が使い慣れているTC ELECTRONIC System 6000やLEXICON 480Lを模したリバーブなどもあります。各チャンネルには2系統までインサートも可能です。
重心のあるすっきりしたサウンド
デジタル卓にありがちな中低域のもっさりした感じはなく、高域は伸びやかで整ったサウンド。全体的にすっきりとした印象ながら、重心は低く、しっかりとした安定感もあるイメージです。音の豊かさも感じられ、スパッと目の前に飛び込んでくるようなスピード感も好印象です。Midas Pro出力が実装されているというのも納得です。
本機は各チャンネルにステレオ・イメージャーも搭載し、細かくパンニングの調整も可能。今はやりの“イマーシブ・サウンド”を簡易的に実現できるのも高評価ではないでしょうか?
さて、3日間のオペレーションを終えて、当然慣れなどもありますが、おおよそいつも通りにできました。Wing-BKは設定や調整可能なパラメーターが豊富なので、ちょっとした時間にパンニングやエフェクト、各アウトの調整など、いつも妥協している部分を詰めることができる、まさに自分のイメージに近づける相棒だと思いました。あわよくば老眼な自分に優しい大きな文字だともっと助かるかなぁ(笑)。
玖島博喜(TEAM URI-Bo)
ヒビノやリバティ、ヴァーゴを経て、2000年にTEAM URI-Boを設立。フリーランスとして活動し、オペレートだけでなくシステム・プランナーやアドバイザーとして施工にも携わっている。
BEHRINGER Wing-BK
548,000円

SPECIFICATIONS
⚫ミキシング・チャンネル:ステレオ48ch ⚫バス:28系統(メイン×4、マトリクス×8、補助ステレオ×16) ⚫ディスプレイ:10.1インチTFT液晶マルチタッチ・スクリーン ⚫フェーダー:24 ⚫電源:100~240VAC(50/60Hz) ⚫消費電力:130W ⚫外形寸法:870(W)×201(H)×575(D)mm ⚫重量:24kg