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ALPHATHETA Euphonia レビュー:多くのDJからのフィードバックを開発に生かした4chロータリー・ミキサー

ALPHATHETA Euphonia レビュー:多くのDJからのフィードバックを開発に生かした4chロータリー・ミキサー

 ALPHATHETA(旧PIONEER DJ)初のDJ用ロータリー・ミキサーEuphonia。同社が2020年に発売したDJミキサーDJM-V10は、筆者も開発協力させていただいたので、EuphoniaがDJM-V10と音質面などでどのような違いがあるのか気になっていました。また、今年8月にジャカルタのクラブZODIACで初めて使って好印象だったため、今回デモ機を借りて都内のクラブでのDJ時に使わせてもらいました。

レコードとデータの音質差をほぼ感じない

 Euphoniaは4chのDJ用ロータリー・ミキサーで、入力信号を32ビットAD/DAで扱うデジタル仕様です。各チャンネルには独自開発のロータリー・フェーダーのほか、ライン・インL/Rやフォノ・インL/R、デジタル・インなどを1組ずつ装備。マスターにはRUPERT NEVE DESIGNSと共同開発したトランスフォーマーを備えています。

背面左側には電源スイッチや電源端子、グランド端子のほか、マスターに外部エフェクターをインサートするためのセンドL/RとリターンL/R、各チャンネルとアイソレーターで外部エフェクターを使うためのセンドL/RおよびリターンL/R(以上フォーン)といった端子を配置。中央上段は各チャンネルのフォノ・インL/Rとライン・インL/R、下段はレック・アウトL/R(以上RCAピン)、マスター・アウトL/R(XLR)、ブース・アウトL/R(TRSフォーン)を備える。右側にはマイク・イン(XLR/TRSフォーン・コンボ)、各チャンネルのデジタル・イン(コアキシャル)、グランド端子、Mac/Windowsコンピューターと音声の送受信を行うためのUSB端子がスタンバイ

背面左側には電源スイッチや電源端子、グランド端子のほか、マスターに外部エフェクターをインサートするためのセンドL/RとリターンL/R、各チャンネルとアイソレーターで外部エフェクターを使うためのセンドL/RおよびリターンL/R(以上フォーン)といった端子を配置。中央上段は各チャンネルのフォノ・インL/Rとライン・インL/R、下段はレック・アウトL/R(以上RCAピン)、マスター・アウトL/R(XLR)、ブース・アウトL/R(TRSフォーン)を備える。右側にはマイク・イン(XLR/TRSフォーン・コンボ)、各チャンネルのデジタル・イン(コアキシャル)、グランド端子、Mac/Windowsコンピューターと音声の送受信を行うためのUSB端子がスタンバイ

 出音に関しては、DJM-V10のような豊かな低域と高い原音再現性が基本。DJM-V10は従来のDJMシリーズと同じく、TRIMを上げてもクリップしない限りは音のキャラクターがほとんど変わらない印象ですが、Euphoniaはマスター・レベルを上げると豊かな倍音を帯びてひずんでいく印象です。先述のトランスが生きているようで、音量が大きく上がったときにソースによってはハイハットがシルキーにひずみすぎるようなこともありましたが、基本的には音量を上げていくとRUPERT NEVE DESIGNSのレコーディング用マイクプリのように中低域〜中域に元気が出て、“踊れる音”が出てくると感じます。そしてデジタル・ミキサーなので、アナログのロータリー・ミキサーよりも断然S/N比が良いです。

 特筆すべきは、レコードとPIONEER DJ CDJとの出音の違いが、ほとんど感じられなかったこと。これは筆者のようにレコードとデジタルの両方をプレイするDJや、CDJのみでプレイするDJとレコードのみのDJとのB2Bにとても有用でしょう。この音のまとまり方は、今までに使ったことのあるロータリー・ミキサーの中では群を抜いている印象です。

EQに頼らなくても音がうまく混ざる

 そして、ミックスの混ざり具合も素晴らしい。デジタル・ミキサーはEQを細かく調整しないと基本的には音がうまく混ざらないようなイメージですが、Euphoniaはアナログ・ロータリー・ミキサーと同じく、EQをほとんどいじらなくてもうまく音がブレンドされます。ロータリー・フェーダーの動きも硬すぎず柔らかすぎず、とても使いやすい。チャンネルには3バンドEQもあって、場面によっては使用しましたが、ほとんどが楽曲の足りない帯域を足すような使い方で、ミックスの際にはローを多少触るくらいでした。このEQも品位があって、音のキャラクターが変わらず、とても気に入りました。

メーターが充実し音量のばらつきが出にくい

 従来のロータリー・ミキサーでのDJミックスはロータリー・フェーダーや音量メーターの視認性が低く、どうしても音量にばらつきが出るものでしたが、Euphoniaは各チャンネルの音量が分かるVUメーターを備えていて、その横にあるマスター・レベルのメーターではTRIMノブ、ロータリー・フェーダー、マスター・レベル・ノブのすべての音量を合わせた総合的な音量が表示されます。これは結構、すごい装備です。例えば、現場で前の出番のDJがロータリー・フェーダーを10まで上げていたとして、それを交代の際に6まで下げたいとします。そのとき、ロータリー・フェーダーを下げる分、どのくらいTRIMやマスターを上げれば同じ出力音量になるかを、メーターの数値を見て判断できるわけです。さらには周波数アナライザー(!)までついていて、過去のロータリー・ミキサーにはなかった視認性の高さです。

アイソのブースト具合を調整できる機能

 マスター段のアイソレーターは、DJM-V10のそれと同じく音楽的に破たんしない高品位な質感でありながら、BOOST LEVELというスイッチを装備していて、0/+6/+12dBの3段階でブーストの加減を調節できます。これもとても気の利いた機能で、アイソレーターをブーストしすぎて音がうるさくなりがちなプレイには控えめな+6dB、アイソレーター自体でミックスにメリハリを付けるDJには+12dB、ブーストしたくないDJには0dB(カットはできる)と、プレイ・スタイルによって選ぶことができます。0dBは、これまでのミキサーでは見たことのない機能で、個人的にはアイソレーターの位置でいつのまにか原音が変わっていってしまうのに悩まされることが多かったので、素晴らしい機能だと思いました。

 内蔵エフェクトも、ロータリー・ミキサーを使うDJの特性をうまくつかんでいます。チャンネルのSENDノブに加え、アイソレーターの各帯域へ個別にエフェクトをかけられるSENDボタンがあり、ボタンをオンにしてアイソレーターをブーストするとエフェクトがかかる仕様。これがまた、とても良いあんばいです。ロータリー・ミキサーを使うDJにはトリッキーなエフェクトを好まない人が多いと思いますが、本機のエフェクトはそんなDJでも実に直感的に、かつ音楽的に破たんせず扱えるでしょう。種類はHPF、DELAY、TAPE ECHO、ECHO REVERB、REVERB、SHIMMERとDJMよりシンプルで、質感に品があり、多用してもうるさくなりすぎない雰囲気です。

 Euphoniaには、メーカーの熱心さとDJ/オーディオ・カルチャーへの愛情が精緻に反映されている印象。機能性や視認性も高いロータリー・ミキサーなので、ハウスやディスコのDJだけでなくテクノDJにも使ってみてほしい逸品です。

 

Gonno
【Profile】世界的に活躍するDJ/ハウス&テクノ・プロデューサー。International FeelやOstgut Tonから作品を発表し、ローラン・ガルニエら著名DJがプレイ。近作は禁 JINからの12インチ『JIN08』。

 

 

 

ALPHATHETA Euphonia

572,000円

ALPHATHETA Euphonia

SPECIFICATIONS
▪チャンネル数:4(すべてフォノ・インとライン・インを装備) ▪AD/DA:32ビット(チャンネル入力、マスター、ブース、マスター・インサート) ▪周波数特性:20Hz〜40kHz(ライン) ▪S/N比:88dB(フォノ)、105dB(ライン) ▪チャンネルEQ:ハイ@20kHz、ミッド@1kHz、ロー@20Hz、いずれも−26〜+6dB ▪マスター・アイソレーター:クロスオーバー@250Hz/3.5kHz、18dB/oct、カット/ブーストOFF〜XdB(X=0/+6/+12) ▪外形寸法:429.2(W)×119.9(H)×331(D)mm ▪重量:9.5kg

製品情報

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