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Ableton Moveの魅力と使い方|音楽プロデューサーA.G.Oが語る新デバイスの活用法

ABLETON Move レビュー:ABLETON Liveとスムーズに連携可能なスタンドアローン制作用デバイス

 東京を拠点にプロデューサー、ビート・メイカーとして活動するA.G.Oです。日頃からABLETON LiveやPushを活用し楽曲制作を行っております。ABLETONから発表された新たなデバイス“Move”は、多くの方が期待されていると思います。ここでは、Moveを実際に使用した中で、注目すべき点や魅力をお伝えします。参考になれば幸いです。

4時間駆動可能なバッテリーを内蔵 最大4trのシンプルな構成

 Moveは、独立したハードウェアとして機能する音楽制作ツールです。ポリフォニック・アフタータッチ対応の32個のパッドを使った演奏ができるほか、本体下部にある16ステップのシーケンサー・ボタンを使ってドラムなどのMIDI打ち込みをステップ入力することもできます。本体左上にはディスプレイが搭載されていて、各種設定に関する情報が表示されます。

各種設定情報やループの再生状況などはすべて本体左上のディスプレイに表示される。音色プリセットの切り替えやモード選択、文字入力なども、画面とその下のノブを組み合わせて操作できる

各種設定情報やループの再生状況などはすべて本体左上のディスプレイに表示される。音色プリセットの切り替えやモード選択、文字入力なども、画面とその下のノブを組み合わせて操作できる

 本体上にはパラメーターを操作する9個のノブ、右にはキャプチャーやループ、アンドゥ、ミュートなどの操作を行う8個のボタンが並びます。

 まず言及すべきは、Pushなどこれまでの同社デバイスになかったコンパクトさです。身近なもので例えるなら、ちょうどスマホを4つ並べたようなサイズ感というと伝わりやすいかと思います。0.97kgとある程度の重量はあるものの、カバンに入れて気軽に持ち運べることから、“Move”の名を関するにふさわしいこだわりのデザインだと感じます。

 また、十分な明るさのLEDやスピーカー、マイクを搭載しながら、最長4時間駆動するバッテリーを内蔵しているので、作業場所の制約がなくなることもポイントです。私は普段ノートPCを据え置きで使用していて、音楽制作はデスクに座ってモニターとにらめっこしながら行うのが常ですが、Moveはリビングやベッドでごろごろしながらでも、移動中でもアイディアを作れる点が新しい体験を生んでくれます。

 Moveは最大トラック数が4(!)と非常にコンパクトな構成になっています。

Moveは、4trの制作ツールとなっていて、セットを立ち上げるとランダムに音色がロードされる。トラックの切り替えは、パッド左の4つのボタンで行う

Moveは、4trの制作ツールとなっていて、セットを立ち上げるとランダムに音色がロードされる。トラックの切り替えは、パッド左の4つのボタンで行う

 トラック数が無制限なLiveやスタンドアローンのPushと比べると少し驚きますが、この制約によってワークフローが最大限にシンプル化され、とにかくすぐにアイディアを練りはじめられることに気付かされました。

 通常私のワークフローでは、Liveを立ち上げてからアイディアを形にする前に、曲の構成を想像しながらトラックを作って音源やサンプルを選んで……という時間が生まれます。一方Moveは、制作の基本単位となる“セット”を立ち上げると、4trそれぞれに、ドラム・キット、ベース、コード楽器、リードの音源が1trずつ自動的に読み込まれます。各トラックに読み込む音源の内容は毎回ランダムで、これにより“あまり考えずにまずは音を重ねていく”というスタートになるため、とても直感的で素早いアイディア・スケッチが可能になります。もちろん、任意の音源を選択することもできます。さらに、トラックのモードを切り替えてサンプラーとしての使用も可能です。内蔵マイクまたはオーディオ・インから入力した音声をサンプリングすることができます。

Move Managerでブラウザーと速やかに連携 Wi-Fi接続でスムーズなデータ共有

 個人的に使っていて最も楽しいのは、セットを立ち上げたときの音源の内容が毎回違うことで、コンピューターでの制作と全く違うアプローチができる点です。Liveに限らず、DAWでの制作に慣れてくると、どうしても好みの音源やサンプル、ワークフローに少しずつ固定されてしまうことが一つの課題と感じていたのですが、Moveは問答無用でランダムに音源が読み込まれるので、その中でアイディアをまず練ってみると、やったことのないアプローチやかっこいいと思える音の組み合わせなど、さまざまな発見がありました。

 Moveは一台で楽曲を完成させるというよりは、アイディアの土台を作り、Live上でそれを発展させるという使い方が想定されているようで、Liveとの連携が非常によくできています。NoteやLiveとクラウドでデータ共有ができるAbleton Cloudへの対応に加え、ブラウザー・ベースのアプリケーションであるMove Managerを使用して、Moveで作ったセットや、オーディオ・データ、プリセットなどをコンピューターへ簡単に素早く転送できます。

 ここで驚いたのは、MoveはWi-Fi経由でコンピューターと接続できるところです。私も含めデスクがケーブルであふれかえっている方々にとってこれは非常にありがたく、いちいちケーブルをつなぐことなく、同じWi-Fiネットワークに接続してURLにアクセスするだけでデータ転送ができるのです(ケーブル接続でも同様の操作が可能です)。接続の手間がないので、外で思いついたアイディアをガンガンMoveでスケッチして、いつものコンピューター作業の環境に戻ったらLiveにサクサク転送するといった使い方が自然にできます。

 またMoveはUSB-Cケーブルでコンピューターと接続することで、Liveのコントローラーとしても使えます。接続するとMoveのノブにパラメーターが自動でアサインされるので、付属エフェクトやデバイスをノブでグリグリ変化させるというPushユーザーにおなじみの操作が可能です。

リア・パネル。左からヘッドホン・アウト(ステレオ・ミニ)、オーディオ・イン(ステレオ・ミニ)、外部デバイス接続用のMIDI端子(USB-A、クラス・コンプライアントUSB MIDIデバイスにのみ対応)、コンピューター接続用のUSB端子(USB-C)

リア・パネル。左からヘッドホン・アウト(ステレオ・ミニ)、オーディオ・イン(ステレオ・ミニ)、外部デバイス接続用のMIDI端子(USB-A、クラス・コンプライアントUSB MIDIデバイスにのみ対応)、コンピューター接続用のUSB端子(USB-C)

 短いですが、ここまでMoveの特に注目してほしい点を書かせていただきました。私個人としては、Moveは音楽制作をする“場所”と“アイディア”を拡張してくれるデバイスとして既にポジションを確立しつつあります。1台完結もできますが、Liveでの制作をより楽しくするデバイスとしても、初心者の方から玄人までお薦めできる一台になると思います。

A.G.O
【Profile】 ビート・メイカー/プロデューサー。ヒップホップ・クルーCIRRRCLEの全楽曲のほか、SIRUP、BE:FIRST、FuruiRiho、佐藤千亜妃、Ayumu Imazuなどの作品を手掛ける。

 

 

 

ABLETON Move

69,800円

ABLETON Move

SPECIFICATIONS
▪入出力端子:ヘッドホン・アウト(ステレオ・ミニ)、オーディオ・イン(ステレオ・ミニ)、USB-A(MIDIデバイス接続用)、USB-C(コンピューター接続用)、内蔵マイク、内蔵スピーカー ▪パッド:32個、ベロシティ・センシティブ、バックライト付きシリコン・パッド ▪ステップ・シーケンサー:最大16小節 ▪ストレージ:64GB(内蔵SDカード) ▪ディスプレイ:1.3インチ、ホワイトOLED ▪外形寸法:313.5(W)×34(H)×146.3(D)mm ▪重量:0.97kg

製品情報

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